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分裂自動詞性とは?(活格・不活格型)

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分裂自動詞性(split intransitivity)

 を同じように標示する対格型体系とSとを同じように標示する能格型体系ははっきり分かれているものではなく、同一言語で二つの体系を使い分けることがあります。

 (1) ɑgɑmi-ngɑ   ɑnbidungu-Φ  dɑndɑsjɑn.  <他動詞構文>
     子ども-格標識 おもちゃ-格標示 壊した
    (子どもがおもちゃを壊した。)

 与那国方言では、例(1)のように、Aは常に -ngɑ で標示し、Pはゼロ格で表されます(下地 2015: 109)。一方、Sは -ngɑ をとる場合、とってもとらなくてもいい場合、-ngɑ をとらずゼロ格で表される場合がみられるそうです。このうち、Sが -ngɑ をとる場合はSとAが同じように標示されるため対格型となり、Sが -ngɑ をとらずゼロ格で表される場合はSとPが同じように標示されるため能格型です。与那国方言で対格型をとるときの自動詞と能格型をとるときの自動詞を比較すると、前者は意図的な動作を表す動詞で、後者は意図しない動作を表す動詞であることが分かっています(下地 2015: 110-111)。

対格型をとる自動詞
(意図的な動作)
歩く、動く、帰る、逃げる…
能格型をとる自動詞
(意図しない動作)
出る、折れる、落ちる、曲がる、割れる…

 このように、自動詞が持つ単一の項Sが対格型体系にしたがってAと同じように標示したり、能格型体系にしたがってPと同じように標示したりする現象分裂自動詞性(split intransitivity)、もしくは分裂自動性と言います。SがAと同じように標示される場合の自動詞は意図的な動作を表し、SがPと同じように標示される場合の自動詞は意図しない動作や状態などを表す傾向が見られます。
 自動詞が表す動きが意図的か否かによって対格型と能格型体系を使い分ける言語では、自動詞が2種類存在すると言うことができます。すなわち、SがAと同じように扱われる自動詞とSがPと同じように扱われる自動詞です。これらはそれぞれSの標示の仕方が異なり分裂しているように見えるので「分裂」と呼ばれています。

活格・不活格型

 分裂自動詞性をもつ言語は、上述の通り、SがAと同じように扱われる自動詞とSがPと同じように扱われる自動詞の2種類に分けられます。この二つの自動詞の主語は統語的に同じSとしてまとめることができないので、Aと同じように扱われるSをS、Pと同じように扱われるSをSと区別して書き表すことが多いです。この体系は対格型でも能格型でもなく、活格・不活格型(active-stative)と呼ばれます。

参考文献

 斎藤純男・田口善久・西村義樹編(2015)『明解言語学辞典』8頁.三省堂
 下地理則(2015)「琉球諸方言における有標主格と分裂自動詞性」『方言の研究1 特集 方言研究の新しい展開』103-131頁.ひつじ書房
 リンゼイ J.ウェイリー(著)・大堀壽夫(訳)・古賀裕章(訳)・山泉実(訳)(2006)『言語類型論入門-言語の普遍性と多様性』78-80,155-160頁.岩波書店




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