令和4年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題9解説
問1 ステレオタイプ
特定の社会集団やカテゴリーに対する固定的な観念をステレオタイプといいます。選択肢2の記述がまさにそれ。「中国人」って聞いたら辛いものが好きそう、卓球強そうとかみなさんいろんなイメージがあるかもしれません。これが自動的活性化。
答えは2です。
問2 脱カテゴリー化
ステレオタイプには最も類似した過去の記憶に基づき、対象の属性や性質を推測して分類するカテゴリー化という認知作用が関係しています。詳しく知らないものを既有知識でなんとか捉えようとした結果、過去の記憶からおおまかに予測して「この人もこうだろう」というカテゴライズをします。こうしたカテゴリー化は知らないものを瞬時に判断するのに役立っていますが、ここに否定的な感情が加わると偏見となり、行き過ぎると危なかったりします。
選択肢1
こうして作られたカテゴリーをほどくにはこのように外国人住民との共通点を見つけるようなことをするのがいいです。相手のことを知れば相手がそのカテゴリーに必ずしも属しているわけじゃないんだと気づけます。これが脱カテゴリー化。
選択肢2
短所を指摘し合うと偏見とか差別につながりそう。脱カテゴリー化も難しい。
選択肢3
相手のことを知るような活動ができればいいんですけど、地域の課題だったら微妙かなあ。
選択肢4
自国の代表として文化を説明するとカテゴリーがより鮮明になりそうなものです。カテゴリー化された内集団と外集団の境界線をぼやかすのが脱カテゴリー化ですから、代表して話すよりも多様性をアピールしたほうがいいんじゃないかと思います。
したがって答えは1です。
問3 積極的傾聴
「ワークショップ 人間関係の心理学」には積極的傾聴法の基本的心構えとして次の4つを挙げていました。
1.相手の立場に立ち、相手の枠組みに沿ってありのままに聴く。
2.相手の話や気持ち、考えをそのまま受け入れる。批判したり、自分の意見は一切言わず、虚心坦懐に聴く。
3.話の内容や言葉だけでなく、相手の言おうとする意図や、気持ち、感情などを全体として聴く。
4.自分自身の気持ちや心の動きをよく把握する。自分の内心に相手への不安や敵意や疑問などがあるとすれば、それにきちんと気づいている必要がある。
1 「賛同」というのが違うっぽい
2 これが一つ目の条件に合ってます
3 解決方法のような自分の意見は一切言いません
4 支援者の価値判断を示したりは自分の意見を示すことになるのでダメ
したがって答えは2です。
問4 エンパワーメント
文化庁の「「生活者としての外国人」のための日本語教育ハンドブック」の28ページにはこのような記述があります。
獲得された意思疎通の手段により,人とつながること,言葉の壁によって発揮できていなかった自分らしさや力を取り戻したり,発揮できたりするようになること,そして社会の一員として自立し,社会生活のあらゆる領域に参画すること,つまり「エンパワーメント」を実現することによって初めて目標に到達したと言うことができます。
発揮できていなかった力を発揮できるようになることと選択肢3の「自己決定能力などを獲得する過程」が同じ記述です
したがって答えは3です。
問5 共生社会の充実
令和3(2021)年11月、外国人との共生社会の実現のための有識者会議の「意見書~共生社会の在り方及び中長期的な課題について~」が参考になるかも。このほかに良い資料が絶対あるだろうけど見つけられませんでした。
選択肢1
言語教育が、その言語を公用語とする国の文化、歴史、習慣等の学習を通じた異文化理解や、当該言語を話す児童生徒の自信を深めることにも資することを踏まえ、地域の実情に応じ、母語に触れる機会の提供を検討する。
異文化理解の記述はありました。
選択肢2
日本語教育の質的な向上と教育機会の拡充が必要である。
30ページにはこのような記述がありますのでこれは正しい。
選択肢3
外国人の親子が、地域住民との交流を通じて日本語を学び、地域との関係性を深める機会を提供することができるよう、地域に居住する外国人との交流イベントの実施等に必要な費用に係る財政的な支援を検討する。
17ページにはこの記述。だから正しいです。
選択肢4
この記述はなかったです。
答えは4です。
コメント
コメント一覧 (1件)
私は、問1は、3を選びました。
問題文のその後に、
「トラブルに発展する可能性がある」
とあり、2ではトラブルに発展しないケースや
トラブルの原因として特定されないケースまで
含まれます。
「ステレオタイプの自動的活性化」の典型的な例は2ですが、
問題文に対し「例として最も適当なもの」は、
3と考えました。