外の関係
(1a)のような名詞修飾構造は、被修飾名詞(底の名詞)はそれに何らかの格助詞(「が」「を」「に」など)を付けて名詞修飾節の述語と統語的に結びつけることができません。「音が」「音を」「音に」などとしても、名詞修飾節の述語「入れる」の補語にはなりえないということです。名詞修飾節と被修飾名詞(底の名詞)との統語的な結びつきに関して、被修飾名詞が名詞修飾節の述語に対する補語と考えることができるような関係を内の関係と呼ぶのに対し、以下のように被修飾名詞が名詞修飾節の述語に対する補語と考えられない関係を外の関係と呼びます(寺村 1993: 196)。
(1)a 郵便物を入れる音
b *音が郵便物を入れる
c *音を郵便物を入れる
d *音に郵便物を入れる
e *音へ郵便物を入れる
f *音で郵便物を入れる
これらの名詞修飾構造に見られる名詞修飾節と被修飾名詞はもともと一つの文の構成要素であったわけではありません。すなわち被修飾名詞は名詞修飾節の外のどこからか取り出されて被修飾名詞の位置に座ったものと考えられます。
(2) 人がいる気配
(3) 電車に乗り遅れるシーン
(4) 定時で帰れる喜び
(5) 私には無理という思い込み
(6) 女性が家事をするという考え
(7) 鉄が磁石につく(という)性質
(8) 彼女が座った後ろ
(9) 友達を驚かそうとした結果
参考文献
鈴木孝明(2015)『日本語文法ファイル―日本語学と言語学からのアプローチ―』159-164頁.くろしお出版
寺村秀夫(1993)『寺村秀夫論文集Ⅰ -日本語文法編-』192-296頁.くろしお出版
日本語記述文法研究会(2008)『現代日本語文法6 第11部 複文』43-51頁.くろしお出版

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