関係詞節の制限用法、非制限用法について
英語の関係代名詞(relative pronoun)については、関係詞節(relative clause)の用法の一つとして制限用法(限定用法)と非制限用法(非限定用法)の違いがあります。この区別は関係詞節と主節の先行詞との間の統語的・意味的な関係に基づいたものです。
制限用法・限定用法(Restrictive Use)
制限用法(限定用法)とは、「先行詞内の主要部名詞の指示対象を、同一種内の他の成員・部分と区別して特定するために必要な情報となる関係詞節」(中山 2016: 240)の用法のことで、この用法の関係詞節は制限的関係詞節や制限節と呼ばれます。
(1) This is the boy who broke the window.
(これが窓ガラスを割った少年です)
(2) The book that is lying on the desk in mine.
(机の上にある本は私のです) (安井ら 2022: 355-356)
制限的関係詞節は先行詞の意味を制限(先行詞の指示対象を限定)して同定する機能を持っています。例えば(1)の関係詞節 broke the window は先行詞 the boy が指し示す対象を限定して同定しています。すなわち制限的関係詞節は先行詞が指示する全体集合の中から部分集合を指定し、その制限された指示対象について述べるものです。((1)は<少年>のうち、<窓を割った少年>を指し示す機能を持っているということ)
非制限用法・非限定用法(Non-Restrictive Use)
非制限用法(非限定用法)とは、「すでに特定されている指示対象について、単に付加的な情報となる関係詞節で、省略されても指示対象の特定には支障がない」(中山 2016: 240)関係詞節の用法のことで、非制限的関係詞節や非制限節と呼ばれます。
(3) My brother, who lives in London, is a doctor.
(ロンドンに住んでいる私の兄は医者です。)
(4) The car, which is blue, belongs to my friend.
(青いその車は私の友達のものです。)
非制限的関係詞節は先行詞に対して形容詞的に修飾し、ただ単にその先行詞の指示対象の性質や状態などについて補足的な情報を付加する機能を持ちます。例えば(3)は、先行詞 My brother が指し示す概念に対して “lives in London(ロンドンに住んでいる)” という補足説明をしています。制限的関係詞節とは異なり、先行詞 My brother の意味を制限しているわけではありません。したがって、非制限的関係詞節を省略して “My brother is a doctor.” と言ったとしても単に補足情報を省略しただけであり、(3)と同じ趣旨の文になります。このような統語的な操作は制限的関係詞節にはできません。
制限用法との違いとして…
制限用法は主に話し言葉で用いられるのに対し、非制限用法は主に書き言葉として用いられ、先行詞の後にコンマが置かれます。話し言葉として用いる場合にはコンマの位置でポーズが入り、音調上の切れ目が生じます。また、制限用法の関係代名詞には that が使えますが、非制限用法では原則として「, that」は現れないなどの統語的な違いも見られます(安井ら 2022: 362)。
日本語と英語の名称の話
英語では関係詞を用いて先行詞と関係詞節を結び付けます。ここでいう先行詞(antecedent)とは関係代名詞によって修飾される名詞や代名詞を指し、関係詞節は関係代名詞を介して後置される名詞を修飾する従属節を指します。英語では(1)の who のように関係詞を原則として文中に明示しますが、日本語の例文(2)では英語の関係詞にあたる言語形式は明示されず、そのまま名詞「少年」を修飾する従属節「窓ガラスを割った」が現れます。
(1) This is the boy who broke the window.
(5) これが窓ガラスを割った少年です。
よって、英語の関係詞にあたる形式を持たない日本語では関係詞という用語も使われませんし、それに関連する先行詞や関係詞節という用語も使われません。ではどのように呼ぶのかというと… 関係詞節は名詞修飾節や連体修飾節と呼ばれ、先行詞は被修飾名詞や主名詞、あるいは名詞修飾節の主要部と呼ばれます。結局のところ英語の関係詞節は先行詞の名詞を修飾しているという構造なので、修飾という観点から見た名称で呼ばれます。
英語の例文(1)で言うと、関係詞は who、先行詞は the boy、関係詞節は broke the window です。日本語の例文(2)で言うと、名詞修飾節は「窓ガラスを割った」、被修飾名詞は「少年」です。
| 英語学の名称 | 日本語学の名称 |
|---|---|
| 関係詞(relative, relativizer) | - |
| 関係代名詞(relative pronoun) | - |
| 関係節、関係詞節(relative clause) | 名詞修飾節、連体修飾節 |
| 先行詞(antecedent) | 被修飾名詞、主名詞名詞修飾節の主要部 |
日本語の制限用法と非制限用法(限定的名詞修飾節と非限定的名詞修飾節の用法)

ここでは※1にならい、日本語の名詞修飾節の制限用法は限定的名詞修飾節、非制限用法は非限定的名詞修飾節と呼ぶことにします。
<限定的名詞修飾節>
(6) 地域に住む猫を助けよう。
(7) 人里に下りてきた熊は人の食べ物を知っている。
<非限定名詞修飾節>
(8) 内戦が続くシリアに反体制派が進行した。
(9) いま大きく注目されているYouTube
(6)のような<限定的名詞修飾節>は「猫」が指す集合の中から特定の猫を指す機能を持っています。一方(8)のような<非限定名詞修飾節>は、被修飾名詞である「シリア」が指す集合の中から特定のシリアを指し示す機能を持っているのではなく、「シリア」の性質や状態を詳しく説明する機能を持っています。このようにして意味的に考えることで、日本語でも制限用法と非制限用法が区別できます。
日本語の限定的名詞修飾節と非限定的名詞修飾節の形態統語的な違いについては※1(2008: 85-87)に書かれているのですが… 読んでみるとちょっと疑問が残るのでここにはまとめないことにします。詳しくは同書をご覧ください。
参考文献
安井稔・安井泉(2022)『英文法総覧 大改訂新版』354-379頁.開拓社
中山仁(2016)『ことばの基礎1 名詞と代名詞 〈シリーズ〉英文法を解き明かす―現代英語の文法と語法①』239-253頁.研究社
(※1)日本語記述文法研究会(2008)『現代日本語文法6 第11部 複文』84-92頁.くろしお出版

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