令和7年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題12解説
問1 若者語
選択肢1
程度副詞「とても」に相当する「超、めっちゃ、マジで、ガチで、バリ、くそ、鬼…」の表現は若者中心に生まれます。中には寿命が短いものもありますが、「超」「めっちゃ」などの寿命が長いものは次世代の若者にも広がっていると考えられます。この選択肢が答え。
選択肢2
違います。若者語は若者の間で作られ、広まります。
選択肢3
若者言葉は集団語の一種です。集団語とは、基本的にはその集団内だけで伝わるようなことばが用いられます。例が挙げられませんけど、今の女子高生が使う新しいことばとかはたぶん全く分からないと思いますので… 一般的な語が多いという点は疑問です。この選択肢は間違い。
選択肢4
会社で高年層が部下である若者に対して親密さをアピールするために、若者が使う言葉を真似して使って話しかけるようなことはありえますが、それがきっかけで若者語が使われるようになったわけではありませんから、この選択肢は間違いです。
答えは1です。
問2 専門用語
専門用語と一般用語の違いは、指し示す意味の範囲に注目するといいです。
例えば、「切る」というと紙にも木にも人間関係にも広く使えますが、「レーザーカット」だとレーザー光で材料を切断する加工方法のみを指します。専門用語はその語形でたった1つの概念だけを指しますが、一般用語は意味の範囲が広いです。
1 「先生」は一般用語。教師、弁護士、医師、政治家などに使えるから。
「教諭」は専門用語。学校の教員の職位の一つを指します。
2 「血」は一般用語。血管内の血液も指すし、「血を引く」で血縁も表すから多義的。
「血液」は専門用語。血管の中を流れる体液を指します。
3 「虫垂炎」は病名で専門用語。
「盲腸」は虫垂炎の俗称でもあり、大腸の始まりの部分も指すので意味が複数ある一般用語。
4 「留年」は同じ学年を繰り返すこと。意味が限られているから専門用語。
「落第」は試験に合格しないこと。意味が限られているから専門用語。
答えは3です。
問3 共話と対話
共同発話とは、相手の話の途中に入り込んで、複数人で一つの話を完成させるような会話のしかたのことです。共話とも言います。例えばこんなの。
【共話の例】
A:毛さんはね
B:考えすぎだよね
A:疲れると思う
B:もっと気楽でいいのにね
共話は相手の言いたいことが十分に理解できていないとできません。
選択肢1
相槌の「うんうん」は相手に会話に入り込んで続きを促すもので共話的な発話です。これは間違い。
選択肢2
Xさんが言った「パンをいろいろ買って帰ったらさ」はまだ未完成の文ですが、そこにYさんが入りこんで「カレーパンばっかり食べたの?」とXさんが言いたかったであろうことを補完しています。会話を共同的に作り上げている共話の例です。
選択肢3
Yさんの「それ見てどう思ったの?」は一方的な疑問から来る質問で、Xさんと共有されている発話ではないから共話的な発話ではありません。これが答え。
選択肢4
Xさんの「そりゃもう」は未完成の文ですが、Yさんが「心配になっちゃうわよね」と言ってXさんの言いたいことを補っています。これは共話の例。
答えは3です。
問4 会話的コード・スイッチング
コード・スイッチングとは、同一会話内で使用される言語が切り替わる現象のことです。コード・スイッチングは、どのような要因で言語が切り替わるかによって下位分類があります。この問題で出題されている会話的コード・スイッチングとは、情報を補完する目的で同一会話に複数の言語が現れるタイプのコード・スイッチングです。
(1) 中国語の”嫩草“は比喩的に若い女性を指すことがあります。
例えば(1)の文では、「中国語の」と日本語で始まりましたが、「嫩草」と中国語にスイッチし、「は比較的に~」でまた日本語にスイッチしています。中国語の語彙を言うためには中国語にスイッチしなければいけません。これが情報を補完するようなコード・スイッチング、会話的コード・スイッチングです。
選択肢1
これが会話的コード・スイッチングの例。言いたいことを表すためにスイッチするのは、上述の例文(1)に見られるような場面で現れます。これが答え。
選択肢2
親密さを表すためにスイッチするのは隠喩的コード・スイッチング。
選択肢3
聞き手の言語能力という外部要因によってコード・スイッチングが実現する場合、それは状況的コード・スイッチングです。
選択肢4
語りかける相手によってコード・スイッチングする場合、それは外部環境の要因によってスイッチしていますから状況的コード・スイッチングです。
答えは1です。…が、公式の答えは4です。
この問題は何度見ても答えが4には思えません。私は選択肢1を推します。
問5 コンバージェンス
アコモデーション理論はジャイルズ(Giles)によって提唱された、話し方が変わる現象を説明する理論です。簡単に説明すると…
私たちは友達に話すときはくだけた話し方になって、仕事のときは改まった話し方になって、赤ちゃんやペットを相手にするとまた別の話し方をしたりします。このように話し方が変わる現象はどのように起きているかというと、アコモデーション理論では「話し手は相手に受け入れられるため、あるいは相手と距離を取るために話し方を変える」と説明しています。
相手に受け入れられるために自分の話し方を相手に近づけようとする場合もあれば、相手と距離を取るために自分の話し方を相手からできるだけ話そうとする場合もあります。前者はコンバージェンス(言語的収束)、後者はダイバージェンス(言語的分岐)と言います。
| 言語的収束コンバージェンス | 自分の話し方を相手の話し方にできるだけ近付けていくこと。上司が部下に受け入れられるために若者言葉を使ったりするなど。 |
|---|---|
| 言語的分岐ダイバージェンス | 自分の話し方を相手の話し方からできるだけ離していくこと。関西圏でも共通語を使おうとすることなど。 |
選択肢1
この外国人観光客は、店員さんが話す日本語に自分の話し方を近づけるのではなく、外国人アクセントを強調して遠ざけようとしています。これはダイバージェンスの例。
選択肢2
命令表現を用いることで、学芸員は自分の話し方をアルバイトスタッフの話し方から遠ざけているように思います。ダイバージェンスの例。
選択肢3
デパートの店員さんが幼児の話し方に近づいて育児語を使っていますからコンバージェンスの例。この選択肢が答えです。
選択肢4
東京では通常東京方言が用いられています。ホテルのスタッフの東京方言を使うのが一般的ですね。しかしこの関西出身者はホテルのスタッフが使っている東京方言を用いず、関西方言を用いています。相手の話し方から遠ざけていますからダイバージェンスの例です。
答えは3です。

コメント
コメント一覧 (9件)
超、めっちゃ、マジで、ガチでなどまさに次世代に広がっていると思うのですが、1番ではありませんか?
>匿名さん
ご指摘ありがとうございます! 確かにそれもそうですね…
では選択肢4はどうやって否定しましょう… ご協力いただければと思います。
>匿名さん
確かにそうですね! はじめは選択肢4かと思いましたが、こちらを否定することができたので答えは選択肢1だと考えなおしました。ご指摘ありがとうございます!
管理人様
お忙しい中大変有益な情報を更新頂きありがとうございます!
選択肢4ですが「年齢層の高い人が若者に対して若者語を使うことはある」けれど
「若者語は高齢層の方が若者に話しかける際に使われるようになった」は誤りではないでしょうか。
若者言葉はもともとは若者の間で使われるようになったのが発端だと考えるからです。
>まーしゃさん
ご指摘の通りだと思いました。高年層を中心に使われるようになったのではなく、元々若者語としてあったものが高年層も一部使うようになった、みたいなことですね。ご協力ありがとうございました!
問3については、私は答えは3だと思いました。
あいづちも、共話のひとつではないかなと思います。
http://nihongo.hum.tmu.ac.jp/~nishigori/kisozemi/mizutani.pdf
③については、話し手が答えを知らないことを相手に質問しているので、「対話的」と私は感じました。いかがでしょうか・・?
>まーしゃさん
参考文献までいただいてありがとうございます! 確認しましたら、相づちは共話の可能性があるわけですね…
とすると問3は、選択肢3の③が共話ではなさそうっていう感じでしょうか。言われてみると③はただ話を相手に振っているだけのようなので、共同で一つの文を作っていないように感じられますね。
問1について
私も1を選んだのですが…
私は選択肢を
«高年層の人が若者に向かって
「ガチでバイブス上がる焼肉屋見つけたよ」
って話すときに使われるようになった»
って理解したので いや流石にそれは…
て思ったのですが選択肢文の理解が間違ってますか?
>青ちゃんさん
ご指摘ありがとうございます! 若者言葉は若者が作った言葉なので、高年層の人が若者に対して話し掛ける際に使われるようになったわけではなかったです。私の勘違いでした!