令和7年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題10解説
問1 インプット仮説
クラッシェンのインプット仮説(The Input Hypothesis)では、その時点の言語レベルよりも少しだけ高いレベルの理解可能なインプット(i+1)が理解されることで第二言語が習得されると考えます。そのようなi+1のインプットは、文脈から意味を推測できるため、難しすぎず、易しすぎないインプットになっています。
クラッシェンが言っているのは選択肢4。
分からない語があったとしても、文脈から意味を理解できるため、理解可能なインプット(i+1)になりうるということです。
答えは4です。
問2 気づき仮説
気づき仮説(noticing hypothesis)は第二言語習得の仮説で、言語習得を促進するには学習者自身が言語形式に気づくことが重要であると考えます。この仮説によると、ただのインプットではなく、そのインプットに対して何らかの気づき(noticing)があったときにインプットはインテイクになります。インテイクは中間言語を再構築するために取り入れられたインプットのことで、インテイクによって中間言語が再構築されるわけですね。
つまり、 インプット → インテイク が重要。
答えは1です。
問3 自動化
ここでいう自動化とは、宣言的記憶が手続き的記憶に移行し、覚えた語彙や文法、発音などが無意識に使えるようになる言語習得の一過程のことです。言語習得に限らず、同じ動作を繰り返し練習すると、無意識にその動作ができるようになったりします。それも自動化です。
選択肢1
自動化すると反応時間が早くなります。誤用率が低下するかどうかは、正用が自動化するか、誤用が自動化するかによるので、自動化そのものと関係なし。この記述は間違い。
選択肢2
もし自動化していれば、個々の文法や語、表現は聞いたそばから理解できるようになるので、それぞれ検討して全体の意味につなげるようなことはあまりしなくなります。この選択肢は自動化する前の記述。
選択肢3
自動化した後は、聞き慣れた語を吟味するようなことはあまりしない。この選択肢は自動化する前の記述。
選択肢4
これが答え。単語を思い出し、その単語を順番に並べて、正しい接続を意識しながら… というプロセスはまだ目標言語に慣れていない学習者の言語処理です。もし自動化すれば単語をいちいち考えたり、接続を考えたりすることなくすらすら話せるようになります。インタビューテストなどではよどみなく受け答えができるようになるのは自動化の結果。
答えは4です。
問4 言語適性
言語適性は言語習得にかかわる学習センスみたいなものなんですが、問題文にあるように Caroll & Sapon(1959)は、そのセンスは以下の4つの能力から構成されると述べています(大関 2010: 138)。そしてこの4つの能力を図るテストがMLAT(Modern Language Aptitude Test)です。
①新しく聞いた音を識別し記憶する能力(音韻符号化能力)
②文法的機能を認識する能力(文法的感受性)
③文法的規則を帰納的に推論できる能力(帰納的言語学習能力)
④音と意味の結びつきを暗記できる能力(記憶力)
上述の③が、選択肢3と一致します。参考文献の本から出題しているみたいですね。
答えは3です。
参考文献:大関浩美(2010)『日本語を教えるための第二言語習得論入門』137-141頁.くろしお出版
問5 統合的動機づけ
外国語学習にかかわる動機づけはガードナー(Gardner)が次の2つに分類しています。
| 統合的動機づけ | その言語の文化が好き、その言語を話す人が好き、その文化に溶け込みたいという気持ちからくる学習のこと。 |
|---|---|
| 道具的動機づけ | 何か他の目的を達成するために外国語を利用するような学習のこと。お金のため、進学や就職のためなど… |
1 資格を得るための道具として日本語を学ぶ、道具的動機づけ
2 その文化に溶け込むために日本語を学ぶ、統合的動機づけ
3 入試で得点するための道具として日本語を学ぶ、道具的動機づけ
4 収入を得るための道具として日本語を学ぶ、道具的動機づけ
答えは2です。

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