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令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題6解説

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令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題6解説

問1 内容重視の指導法(CBI:Content-based Instruction)

 平井(2015)によると、内容重視の指導法(CBI)は第二言語を使用して教科内容(数学とか化学とか)を学習し、第二言語と教科の知識を同時に習得させることを目的とした指導法です。今回私初めて知りましたこの用語。書く・話す・読む・聞くの四技能を統合した学習をして、学習者主体で協働学習を行うような授業体系を取るようです。これを踏まえて選択肢を見てみると…

選択肢1

 第二言語を使用しながら教科内容を学ぶわけなので、わざわざ第二言語の文法規則を教えたりしないです。この授業はCBIじゃない。

選択肢2

 これはなんかコミュニティ・ランゲージ・ラーニング(Community Language Learning:CLL)みたい。精神的なストレスを感じないように媒介語を使ってもいいし、分からなかったら先生が助けるしーで。CBIとは違う。

選択肢3

 これが正しいです。例えば「足す」「引く」などの語彙を実際の数学の授業を受けながら学んでいくことで、その語彙が実際の文脈と結びついて記憶に定着するはずです。第二言語の学習と教科学習を同時にやるわけなので特定の文脈の中でことばを学んでいきます。

選択肢4

 「沈黙」って言葉だけを見ればサイレント・ウェイを思い出します。どうもサイレント・ウェイっぽい。この選択肢は間違い。

 答えは3です。

 参考文献:平井清子(2015)「学生の「思考」に働きかける「内容重視型(CBI)」授業の提案―米国Content-based ESLの授業から-」『北里大学一般教育紀要20』81-103頁

問2 イマージョン教育

 イマージョン教育(イマージョン・プログラム)とは、第二言語を用いて学校の教科学習を受けさせるバイリンガル教育のこと。自国にいても第二言語に浸れる環境にいれば習得できるんじゃないかという考え方に基づくものです。

 1 入り込み授業の記述
 2 サブマージョン教育の記述。第二言語の環境に沈めるやり方。
 3 取り出し授業の記述
 4 これがイマージョン。「教科」というのがヒントになります。

 答えは4です。

問3 CLIC

 内容言語統合型学習(CLIL)のお話。クリルと読みます。これは学習者の目標言語で教科を学ぶ教育法で、Content(科目内容)、Communication(言語力)、Cognition(思考力)、Community(協同学習)、あるいはCulture(異文化理解) の4つの要素(4C)によって授業を組み立てて、これらを全部バランスよく育てることを目的としてます。

 答えは2です。
 

問4 スキャフォールディング

 何かができないときに、誰かにアドバイスを受けたり直接サポートしてもらったりするとできるようになります。このときのアドバイスやサポートをスキャフォールディング(足場掛け)と言います。スキャフォールディングは自分以外の誰かが自分に関与して助けるということが必要なので、誰か別の人の存在がある選択肢を探すのが手っ取り早い。

 この問題はCLILにおけるスキャフォールディング(足場かけ)をどうするかという問題です。CLILは簡単にいうと、教科学習を通して目標言語を使わせる指導法のことです。CLILの授業の特徴として4Cがありますが、そのうちの一つ、Community(協学)はスキャフォールディングと関係があります。ペアやグループにして、学習者間で助け合わせるようなことをします。

 例えば、「貧困について知る」というトピックでCLILをやるなら、貧困について理解をして、原因を考え、自分の意見を発表して… みたいなことをしますが、それについて詳しく知らない人は詳しく知ってる人とグループになることで助けてもらえます。この過程がCLILのスキャフォールディングではないかと思われます。

 1 これが答え。トピックについて詳しい人の知識、技能、経験を生かして、詳しくない人を助ける。これでスキャフォールディングが実現できます。
 2 スキャフォールディングは人が人を助けることなので、メディアの時点で間違い。
 3 人が人を助けてますが、CLILは学習者間の協学を重視するので目標言語を使う人は普通出てこない。
 4 評価の話をしてるから論外。

 答えは1です。

問5 タスク中心の教授法

 タスク中心の教授法とは、「面接」「返品の電話をする」「友人にアドバイスする」など実生活に必要なタスクの中で実際に使われる言葉を使うことによって自然なコミュニケーション能力を身につけさせようとする授業のことです。実生活で現れる問題を扱うからより現実的な活動になり、教室の外に出てもすぐ役立つような知識が学べるのが特徴。

選択肢1

 プロセスも重視するしタスク達成も重視します。

選択肢2

 タスク中心の教授法はFonFで、コミュニケーション上の問題が生じたら言語形式にも意味・機能にも焦点を当てて指導します。これは間違い。

選択肢3

 タスクの難しさはタスク内で使う語彙や文型の難しさじゃなくて、タスクの内容で決まります。
 例えば「友人にお願いをする」だったら相手も友人で敬語使う必要ないからあまり難しくないけど、「面接で受け答えする」みたいなタスクだったら相当難しいです。使う語彙や文型が難しいのも当然あるけど、でもそっちじゃなくてタスク自体が難しいから使う語彙や文型も難しいのが出てくるイメージ。これは間違い。

選択肢4

 タスク中心の教授法で扱うのは学習者の生活上の必要性に基づくものでもいいし、教師側がこれは重要だと思ったタスクを扱っても大丈夫。これが答え。

 答えは4です。




コメント

コメント一覧 (2件)

  • こんにちは。6−4の自分以外の誰かが自分に関与して助けるということが必要なので、誰か別の人の存在がある選択肢を探すのが手っ取り早い。 だから1の学習者の持っている知識を活かす』ことが指導法の記述として適当なのかが、全くわかりません。
    3の「標言語を使う人と交流する機会』があった方が「誰か別の人の存在」があり、正しいのではないかと思ったのですが、、、。どのように1が正解だと解釈したらいいですか?
    よろしくお願いします、(><)

    • >あおいさん
      コメントありがとうございます! こちらの問題、ながらく後回しにしていたのに気づきました。

      ここではCLILにおけるスキャフォールディングの話をしています。
      CLILは、教科学習を通して目標言語を使って学ぶ指導法のことです。例えば、ケーキを作る授業をしながら、日本語のレシピを読んだりして日本語を学んで… みたいな感じでやります。CLILの一つの特徴として、学習者間の協学(Community)を重視している点があります。個人作業だけでなく、ペアやグループにしてお互いに助け合ったりして、現実的なコミュニケーション場面を増やそうみたいな考え方です。

      おそらく選択肢1は、CLILの授業において、作業ができない人をできる人が助けるみたいなことを言ってると思います。だからグループになって、作業ができる人の知識、技能、経験を生かして作業ができない人に教えて協学を実現する… みたいな。

      選択肢2のようにメディアの素材を使ったり、選択肢3のように目標言語を話せる人を読んだり、選択肢4のように自分で評価するようなことはしません。
      あらためて考えてみたのですが、このような考え方なのではないかと思いました。
      (和泉伸一(2016)『フォーカス・オン・フォームとCLILの英語授業』pp.63,アルク)

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