6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題9解説

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令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題9解説

問1 認知スタイル

 認知スタイルとは、情報の処理に対して一貫して示す方法のことです。簡単に言うと、実際のコミュニケーションが好きなのか、本で勉強するのが好きなのか、ストレスに耐えながら勉強できるのかできないのか、のような人による違いのことだと思ってください。

 思考型と内向型は初めて聞きました… 認知スタイルについて詳しく書かれている文献が見つかっていないのでこの2つはよく分かってません。思考型と内向型というのがそもそも無いかも? 錯乱肢かも。もしあったらコメント欄で教えてください。

選択肢1

 これは「あいまいさへの寛容」という認知スタイルの記述。読解や聴解で分からない単語や表現が出てきても、文脈から推測したりして何とかなるタイプのことです。理解できないという状態に対して耐性が強い傾向があります。
 逆に一語一語しっかり訳して理解したいタイプの人は分からない言葉が1つでも出てくるとその状態に耐えられず、先生に聞いてしまったり投げ出したりします。

選択肢2

 分かりません!

選択肢3

 場依存型とは、文脈に依存し、コミュニケーションを好むようなタイプのことです。コンテクストの支えがあまりない座学なんかを嫌います。言語形式を一つずつ見るよりも、コンテクストに頼って全体をぱっと捉えるタイプ。
 この選択肢は正しいです。

選択肢4

 場独立型とは、文脈に依存せず、分析や論理的思考が好きなタイプのことです。会話よりも暗記のほうが得意な傾向があります。場依存型とは逆で、コミュニケーションより言語形式に注目するタイプ。
 この記述は間違い。

 答えは3です。

問2 学習ストラテジー

 学習ストラテジーとは、学習者が自分で自発的に学習を進めていくために必要な方略(ストラテジー)のことです。その細かい分類として次の6つが提唱されていて、これらを行うことでコミュニケーション能力が高められるとされています。

直接 記憶 知識を結び付けたり、イメージしたり、復習したり、身体動作を使って覚えたりする記憶術全般。
認知 覚えた表現を使ったり、情報を分析、推論したり、理解を深めるためにノートにまとめたりするなどの知識を操作、変換するストラテジー。
補償 目標言語を理解したり発話したりする時に、足りない知識を補うために行う(コミュニケーション・ストラテジーなどの)ストラテジー。
間接 メタ認知 自分の学習過程を調整したり、自分自身をモニターするなどの学習者が自らの学習を管理するために用いるストラテジー。
情意 自分を励ましたり、音楽を聴いてリラックスしたりするなどの学習者が自身の情意面をコントロールするためのストラテジー。
社会的 質問したりして学習に他者を関わらせて学習を促進させるストラテジー。

 1 「計画を立てる」のはメタ認知ストラテジー
 2 「自分を褒める」のは情意ストラテジー
 3 「友達を作る」のは社会的ストラテジー
 4 「推測」という言葉が来たら補償ストラテジー

 答えは4です。
 この学習ストラテジーは毎年出ているくらいの常連さん。

問3 キーワード法

 キーワード法とは、目標言語の覚えたい語と音韻的に類似した母語の言葉のイメージと結びつけ、その関連性によって語とその意味を記憶する記憶術のことです。

 昔私もこの方法で中国語覚えたことがあります。
 中国語に「王八蛋」という「バカ」みたいな意味の言葉があるんですが、この言葉の発音は日本語の「ワンパターン」とめっちゃ似てます。その音韻的な類似性を利用して、同じような事を繰り返すワンパターンな人を頭で想像し、その人は「バカ」だという具合に結びつけて覚えました。こうすると「王八蛋(ワンパターン)」と「バカ」が音声情報として結び付けられます。今でも覚えてる。

 1 キーワード法
 2 自己関連付け効果
 3 ???
 4 これはキーワード法ではない何か別のもの。キーワード法は意味が全然違うやつと結び付ける。

 答えは1です。

問4 音韻処理能力

 第二言語習得に影響する要因として、言語適性というものがあります。言語センスと言われたりするものですが… センスって何を指すのか結構曖昧です。一応MLAT(Modern Language Aptitude Test)というCarroll(1962)が開発した言語適性を測定する試験がありまして、言語適性は「音韻符号化能力」「文法的感受性」「帰納的言語学習能力」「記憶力」の4つからなると言われています。

 一方、問題文に出てきているスキーハン(P.Skehan 1998)は、文法的感受性と帰納的言語学習能力は同じ能力だとして言語分析能力に統合し、言語適性は「音韻処理能力」「言語分析能力」「記憶力」の3つからなると言いました。

 この音韻符号化能力とは、「未知の音声を識別し記憶する能力」のことです。
 これとほぼ同じ記述が選択肢3にあります。

 よって答えは3です。

問5 統合的動機づけ

 第二言語習得における、外国語学習の動機づけはガードナー(Gardner)が次の2つに分類しています。

統合的動機づけ その言語の文化が好き、その言語を話す人が好き、その文化に溶け込みたいという気持ちからくる学習のこと。
道具的動機づけ 何か他の目的を達成するために外国語を利用するような学習のこと。お金のため、進学や就職のためなど…

選択肢1

 内側から湧いてくる興味によるもの(内発的動機づけ

選択肢2

 外部報酬を得るための原動力となるもの(外発的動機づけ
 外国語を道具として利用する(道具的動機づけ)

選択肢3

 内側から湧いてくる興味によるもの(内発的動機づけ)

選択肢4

 内側から湧いてくる興味によるもの(内発的動機づけ)
 その文化に溶け込みたいという感情からくるもの(統合的動機づけ)

 選択肢4には統合的動機づけが見られます。
 答えは4です。




コメント

コメント一覧 (1件)

  • 問1の正答は、選択肢3だと思います。専門書ではないので、ちゃんとしたソースにはならないかもしれませんが、どの対策本の問題でも、

    ・「場依存型」=細部よりも全体を見る、物事を周りのものと関連させて捉えようとする傾向の認知スタイル。社会的スキルに優れている。→一人で取り組むような課題よりもコグループ活動、ミュニカティブな活動を好む。外国語学習において、コミュニケーション場面で力を発揮する傾向。
    ・「場独立型」=全体よりも細部を見る傾向の認知スタイル。分析的思考に優れている。→文法の学習、ドリル学習で力を発揮する傾向。一人で学習することを好む。

    という説明になっていたと思います。

    持っている第二言語習得関係の本を見た所、他の学習/認知スタイルとしては、先生が既に解説されている曖昧さに対する寛容性の他に、音声・視覚型(音声による学習を好むVS文字といった視覚による学習を好む)、熟慮・衝動型(じっくり考え判断するか否か)など他にも研究されているけれど、実際に言語学習にどれだけ影響があるかはまだ実証できていないとありました。

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