令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3C解説
(11)強い格と弱い格
「名詞X+の+名詞Y」という形のときに、「の」の前に入ることができる格助詞はどれかっていう問題です。
例文を作れば解決ですね。
1 ✕私がのやったこと
2 〇取引先との関係
3 ✕学校にの行く道
4 ✕カニをの食べる方法
「と」だけが入れられました。
答えは2です!
(12)名詞以外に入るもの
「名詞X+の+名詞Y」で、名詞Xが名詞ではないものが入るときがあるそうです。
これも各選択肢を入れ込んでみます。
1 〇たくさんの花 (副詞+の+名詞)
2 ✕おかしな+の+話 (連体詞+の+名詞)
3 ✕飲む+の+物 (動詞連体形+の+名詞)
4 ✕美しい+の+人 (イ形容詞終止形+の+人)
連体形は直接体言に接続するので、名詞に接続するときはその間に連体助詞「の」は必要ありません。(おかしな話)
動詞連体形も「飲むもの」のように直接名詞に接続できますから「の」は要りません。(飲むもの)
イ形容詞も直接名詞に接続できます。(美しい人)
選択肢の中では副詞だけはいけます。
よって答えは1です。
(13)「の」と交替できる形式
(1) 風が吹く方向 → 風の吹く方向
名詞修飾節内の「が」は「の」に言い換えることができるという文法があります。
例えば(1)は、「風が吹く」という名詞修飾節が被修飾名詞「方向」を修飾している構造をもつ文です。このうち名詞修飾節「風が吹く」の中の「が」は「の」に置き換えることができます。「風の吹く方向」のように。
そしてこの「が」は主体を表しています。「拭く」という動作を行う主体を「が」で表してるから。
したがって答えは1です。
(14)「地震があったのは~」の「の」
「いつ地震がありましたか」のような言い方のうち、「いつ」を強調するためにそれ以外の部分「地震がありました」を「は」によって主題化し、「地震があったのはいつですか」という言い方をすることがあります。こうしてできた文は分裂文と呼ばれています。
(1) いつ地震がありましたか。
(2) 地震がありましたのは、いつですか。
→(地震があったのは、いつですか。)
分裂文にするときは、強調したい部分以外の部分を主題にする必要があります。(1)であれば「いつ」を強調したいので、それ以外の部分「地震がありました」を主題にしたいんです。でもこのままの形だと「地震がありましたはいつですか」となって非文になってしまいます。主題に来るものは名詞あるいは名詞句でなければいけませんから、ここでは「の」をつけて「地震がありました」を名詞句化します。すると(2)のように主題にすることができます。
順番としては①「地震がありました」を名詞化するためには「の」をつけ、②その節を主題化するためにさらに「は」をつけた、という感じ。「地震があった」が「地震があったの」になるのは名詞化するためだから、答えは2です。
間違えるなら1です。いいひっかけ問題に見えます。
(15)「の」の機能(形式名詞と実質名詞)
「の」がどんな機能を持っているか見ていきます。
選択肢1
「スイカを冷やすのを見た」は、「スイカを冷やすところを見た」と言い換えられます。
この「ところ」「の」は節を名詞化する働きを持っているので、「母がこっそり冷蔵庫でスイカを冷やすの」が名詞と同じく扱えるようになっています。なぜならその後に格助詞「を」がありますね。格助詞の前は必ず名詞だと決まっています。
この「の」は節を名詞句化する機能を持っています。(形式名詞)
選択肢2
「冷やしたのが失敗の始まりだった」は、「冷やしたことが失敗の始まりだった」と言い換えられます。
この「こと」「の」は節を名詞化する働きを持っているので、「冷蔵庫でスイカを冷やしたの」が名詞と同く扱えるようになっています。
この「の」は節を名詞句化する機能を持っています。(形式名詞)
選択肢3
「冷蔵庫でスイカを冷やすのは」は、「冷蔵庫でスイカを冷やすことは」に言い換えられます。
この「こと」「の」は選択肢2と同じ。
この「の」は節を名詞句化する機能を持っています。(形式名詞)
選択肢4
「よく冷やしたのを食べて以降」は、「よく冷やしたものを食べて以降」と言い換えられます。この「もの(物)」は具体的な事物を指す実質名詞で、話し言葉ではよく「の」に交替します。「冷蔵庫でよく冷やした」に「の(もの)」を付けることによってが名詞句化しているように見えますが、この「の」は形式名詞ではありませんので節を名詞句化している見方はせずに、名詞修飾節「冷蔵庫でよく冷やした」が被修飾名詞「もの」を修飾していると考えます。それによって結果的に名詞句化しているだけ。
この「の」は実質的な意味を持つ「もの」と同義で、修飾されている語です。(実質名詞)
したがって答えは4。
4だけなんとなーく違うと分かるかもしれませんが、あらためて文法的な話をすると難しいですね。
コメント
コメント一覧 (1件)
私は問題(14)、見事にひっかかり、迷ってクエスチョンマークをつけながらも、1の主題化を選んでしまい、主題者の方の罠に引っかかってしまったようです。
そして問題(15)も、選択肢3まで見て選択肢4をよく見ず、1を選んでしまいました(涙)。