6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題4解説

目次

令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題4解説

問1 トップダウン処理

 大きいものや抽象的なものから処理をはじめ、小さいものや具体的なものに向かっていくような処理をトップダウン処理と言います。その逆はボトムアップ処理です。
 例えば学習者が目標言語の小説なんかを読むとき、一つひとつの単語や文法の意味を調べ、1文1文しっかり理解していくような読み方はボトムアップ処理になります。細かいところはいったん放っておいて、まず大意を理解してから細かいところに入っていくのはトップダウン処理です。

 1 定型表現は細かいもの(ボトムアップ処理)
 2 細かい部分に着目せずにいきなりどのコースが良いか選ぶのは大枠から処理することになるのでトップダウン処理
 3 漢字は細かいもの(ボトムアップ処理)
 4 語は細かいもの(ボトムアップ処理)

 答えは2です。

問2 多読


 多読について上記の本を参考にしました。
 22-26ページには”楽しく読み続けるため”の「多読三原則」と題して次の3つが挙げられています。

 第一原則 辞書は引かない
 第二原則 わからないところはとばす
 第三原則 つまらなければやめる

 1 これが正しい答え。辞書を引かなくても楽しく読めそうなやつからはじめます。
 2 やさしいレベルのものから始めたほうがいいとされています。そうでなければ続かないので。
 3 楽しく読むのが最優先で、その結果語彙の知識を増やします。
 4 教師が読む本を決めるのではなく、学習者が自身が決めます。

 答えは1です。

問3 再話

 読解活動の後に自分が理解したことを自分の言葉で話すこと再話と言います。教師が学生に再話させることで、活動の中で出てきた語彙や文法を使わせ、それらを定着させることを目的とします。

 1 再生できる内容は当然人によって違うので他の人を混乱させるかもしれませんが、グループ活動ではお互いの理解を確認できます。再話の目的は再話による語彙や文法の定着なので、個人に対してもグループ活動としても機能します。
 2 話す力の育成を目的とするわけではありません。語彙や文法の定着が目的です。
 3 自分の理解を話す活動なので、理解が不十分だった場合はそもそも再生できません。
 4 再話によって自分の理解を自分の言葉で表現し再現しようとするので、再話する過程では理解が深まります。

 答えは4です。

問4 読解テスト

選択肢1

 読解テストなので、長文を読ませて設問に答えさせるようなことをします。なのに長文とは全く関係のない知識勝負、記憶力勝負の問題などが含まれていると読解力を測る試験としては不適切になります。扱った文章から出題するようにしなければならないのはその通り。そういった設問内容は工夫が必要です。この選択肢は正しい。

選択肢2

 前の問題が解けないと次の問題も解けない、という問題の作り方はひどい。できれば1問1問独立して解くような問題が望ましいです。この選択肢は正しい。

選択肢3

 読解テストなので書く技能まで測る必要はありません。妥当性が低くなります。この選択肢は間違い。

選択肢4

 その通りです。

 答えは3です。

問5 クローズテスト

 クローズテスト(cloze procedure)とは、長めの文章の単語を消去して(   )に置き換え、(   )内に入る単語を再生させる問題形式のことです。
 ちょうど選択肢4の内容がそれ。

 答えは4です。

 




コメント

コメント一覧 (5件)

  • 問2は、私も選択肢1と2で迷いましたが、アルクの問題集(どの問題集だったかは忘れてしまいました)に同じような問題があり、正解は選択肢2のように「興味優先」だったように思うので、選択肢2を選びましたが、自信はありません(+_+)

  • 高橋先生、度々申し訳ございません。

    例の多読の問題ですが、アルクの問題集を見返してみたところ、次のような解説がありました。
    (著作権のこともあるかと思いますので、当コメント非公開にしてくださっても大丈夫ですm(_ _)m

    ・2019年 日本教育能力検定試験 合格するための本(アルク2019)

    (区分4の問題の解説を抜粋) …エクステンシブ・リーディングは多読と呼ばれる方法である。易しい物・自分の好みにあったものを、自分のペースで楽しくたくさん読む活動…

    ・新刊 日本教育能力検定試験 合格するための問題集(アルク2019)

    (区分4の問題の解説を抜粋)…多読では、多くの本を読むことで読解能力を伸ばすことを目的とし、「易しい本から読む」「辞書を使わないで読む」「わからない所をとばして読む」「読んだ後の問いはなし」などの方法が提示されている…

    どちらの解説も正とすると、選択肢1と2どちらも消せませんね・・・

  • 問2についてです。
    私は選択肢1を選びました。
    選択肢2に関しては
    ”レベルに合うかどうかよりも興味を優先”
    が多読のルールに引っかかるのではと考えました。
    「多読は、まず極端に簡単なもの、例えば児童向けの絵本、から始める」とどこかで聞きました。
    ソースが思い出せずすいません。

    • 三郎さん、こんにちは。

      今日になって持っている対策本を見直したところ、問題集Aの解説には「易しい本から読む」「辞書を使わないで読む」とあり、問題集Bの解説には「易しいもの・自分の好みに合ったものを、自分のペースでたのしくたくさん読む」とありました。どうやら、後者の解説の「自分の好み」の方が印象に残っていたようで、選択肢2を選んでしまいましたが、今は正解は選択肢1だろうと思います(涙)。

      • タルロさん
        まだわかりませんよ、問題作成者がタルロさんの読まれた問題集Bの解説を支持している可能性もあります。
        この検定の勉強、定義に惑わされてばかりでした。
        教師、参考書、問題集、ネットの情報、どれもバラバラ、あやふやなんです。
        自身の中で何を根拠とするか精査するだけで大変な負担でした。
        せめて主催のJEESが用語に対する定義を公表すべきと感じています。

コメントする

目次