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平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題13解説

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平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題13解説

問1 発音に問題が認められる例

 1 「つきぎめ」を「げっきょく」と言うのは読み間違えただけで発音に問題があるわけではありません。
 2 「いちがん」を「いちまる」と言うのは単に読み間違えただけで発音に問題があるわけではありません。
 3 「ふうせん」の長音が脱落して「ふせん」になっています。発音に問題があります。
 4 「げか」を「がいか」と言うのは単に読み間違えただけで発音に問題があるわけではありません。

 答えは3です。

問2 言語形式に問題がなくても、運用面で適切性に欠ける例

 文法的(言語形式)に誤りはないけど、運用面で適切性に欠ける(語用論的に誤り)なものとは… 例えば

 (1) 「ばいばい」 (目上の人との別れ際に)

 (1)は文法的に何にも問題のない表現ですが、目上の人に対して言う表現としては不適切です。もしかしたら相手からその失礼さを怒られるかもしれません。こういう場面では「失礼します」「お疲れさまでした」「ではまた」のような、「ばいばい」と意味を同じくする別の表現が望ましいです。逆にいうと、相手が目上の人でなければ「ばいばい」は適切になります。文法的な正しさはどんな場面でも重要ですが、語用論的な正しさは場面によります。

選択肢1

 時計が家族から私に移動しています。「私」に視点をおいて「家族が私にくれた」と言うべき。
 「あげる」は内から外への物の移動を表すので、外「家族」から内「私」への物の移動に対しては「あげる」を用いることができません。これは言語形式(文法的)に問題があります。

選択肢2

 ここでは「もらう」の可能形「もらえる」を用いて「もらえませんか」と言うべきですが、この学習者は辞書形「もらいませんか」と言っています。言語形式(文法的)に問題があります。

選択肢3

 「お~ください」は尊敬語なので先生の<行為>である「直す」に使って「お直しください」と言うのは文法的には正しいんですが… この場面で先生に「私のレポートをお直しください」というのは語用論的に問題があります。この場面では「直していだたけませんか?」などと依頼の形式を使っていうのが適切です。
 この選択肢は言語形式に問題はありませんが、運用面での適切性に欠けます。これが答え。

選択肢4

 「貸す」と「借りる」の意味を混同しているようです。
 「借りてもいいですか?」などと言うべき。言語形式に問題があります。

 したがって答えは3です。

問3 学習者の非言語行動が日本語母語話者に戸惑わせる例

 1 日本語母語話者には相手を抱きしめる習慣がないので戸惑います!
 2 日本語母語話者も下を向いて反省を示します。
 3 日本語母語話者も話すとき顔を見ます。
 4 日本語母語話者もうなずきます。

 答えは1です。

問4 意味交渉

 ロングが言語習得を促進させるには理解可能なインプット(i+1)だけでなく、インタラクション(やりとり)の中で相互に修正されるインプットが重要だと言いました。さらにこの類のインプットはコミュニケーション上の問題が生じたときに起こる意味交渉(negotiation for meaning)の中で現れると言ってます。意味交渉は次の3つ。

confirmation checks
(確認チェック)
学習者が<相手の前の発話>の意味を確認すること。
「それはXのことですか?」など。
clarification request
(明確化要求)
学習者が誤解を解消するために追加情報を求めること。
「どういう意味ですか?」など。
comprehension checks
(理解チェック)
話し手が、相手が意図したメッセージを理解したかどうかを確認して誤解を回避しようとすること。
「私の言ってることが分かりますか?」など。

選択肢1

 この場面はコミュニケーション上の問題が生じていません。だから意味交渉も生じていません。

選択肢2

 この場面はコミュニケーション上の問題が生じていません。だから意味交渉も生じていません。

選択肢3

 自分の理解が正しいか確認するのは確認チェックなんですが、この選択肢の「提示質問」が誤りです。
 提示質問質問者が答えを知りながら尋ねる質問形式です。正しいかどうか確認するということは答えを知らない状態で尋ねているはずなので、自分が答えを知らない状態で尋ねる指示質問でなければいけません。もし指示質問だったら確認チェックにあたります。
 この選択肢は間違い。

選択肢4

 自分の話が相手に正しく伝わったどうか心配になっていて、コミュニケーション上の問題が発生しています。それを確認するのは理解チェックです。これが答え。

 したがって答えは4です。

問5 フィールドトリップ

 フィールドトリップ(field trip)は、教育機関が教育目的で特定の場所へ訪問することです。日本語を学ぶために教室しか利用しないのはちょっともったいない。教室の外にいけば教室では触れられないリソースがたくさんあります。日本文化にも直接触れられるし、地域住民ともやりとりできます。教育目標にあわせて適切な場所にフィールドトリップすれば教育的な意味があります。
 フィールドトリップは現地で体験したことを持ち帰って教室で話し合いをするまでを含みます。

選択肢1

 社会制度を学ぶのに先生が教室でペラペラ話し続けるよりは、実際にそうした仕事をしている人のもとに行って直接話を聞くのは良いフィールドトリップになります。これは正しい選択肢。

選択肢2

 訪問先で有意義な活動になるよう、質問などは事前に準備したほうがいいです。これは不適当。

選択肢3

 観光地で一通りガイドさんのガイドを受けるのも良い体験になりますね! さらに、そのガイドが外国人目線から見てどうなのかをフィードバックするのも有意義だと思います。この選択肢は正しい。

選択肢4

 教室に戻ってるからフィールドトリップじゃない!と思ったら落とし穴に落ちています。フィールドトリップは現地で活動をしてきた後、教室に戻って話し合いするところまでを含みます。なのでディスカッションをするのもフィールドトリップの一環。この選択肢は正しいです。

 したがって答えは2です。




コメント

コメント一覧 (3件)

  • 先生

    先生のサイトのおかげで、この理解不能な検定試験の苦しい勉強も、多少理解をすることができ、少しは楽しくなりました。
    本当にありがたく思っております。心から、感謝しております。

    さて、上記の問題13の問4の答えなのですが、
    3 確認チェックのように見えますが、「提示質問」が誤りです。提示質問は自分が答えを知っていながら尋ねる質問形式です。正しいかどうか確認するということは答えを知らない状態で尋ねているので、自分が答えを知らない状態で尋ねる指示質問でなければいけません。もし提示質問だったら、確認チェックにあたります。
    とこのように書いてあります。
    「もし提示質問だったら確認チェックにあたります。」私も、そう思います。
    私は、この場合、答えを知っている提示質問をして、その答えが自分の思ったことと合っているなら、自分の理解が正しいと確認できるのだと思います。
    指示質問だと逆に、答えがわからないので、聞いても仕方ないと思うのですが。。
    お忙しいのに、このような質問をしてすみません。

    どうかご自愛ください。

    • >ハギハラ恵美さん
      コメントありがとうございます! お答えします。
      まず、「もし提示質問だったら確認チェックにあたります。」と書いていましたが、正しくは「もし指示質問だったら確認チェックにあたります。」です。記述に誤りがありましたので、この点修正しています。

      もしそのように考えていれば、答えは3と4になりますのでやっぱり間違いです。
      意味交渉とは、例えば一方が知っていて他方が知らない時、その情報差を埋めるために行われるやり取りのことです。情報差があるとお互いの質問や確認、やり取りが増え、インプット、アウトプットがめちゃくちゃ増えます。これによって言語習得が促進されるというのがインターアクション仮説です。

      自分が答えを知っていながら相手に自分の理解が正しいかどうか確認する時、そこに情報差はありません。期待される返答も「そうですね」「合ってます」「正しいです」くらいです。やり取りも増えていないし「意味交渉」ではありません。ですから指示質問は意味交渉であって、提示質問はそうではないということです。

      答えが分からないので聞いても仕方ないのはそうなんですけど、そういう場面で質問すればお互いの認識をすり合わせようとして質問や確認、やり取りがかなり増えます。これが意味交渉です。

  • 先生
    お忙しい中、私のような者に、ご丁寧に答えてくださり、誠にありがとうございます。
    先生の解り易く丁寧な解説のおかげで、なんとか、乗り切れそうです。

    先生の益々のご発展とご健康を陰ながらお祈りしております。

    ありがとうございました!

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