オーラル・メソッド(Oral Method)
オーラル・メソッド(Oral Method)とは、イギリスのパーマー(H.E.Palmer)によって開発された教授法を指すことが多いです。条件付きで母語を使用することは認めているものの、基本は母語を媒介させることなく、教育初期段階の数週間は特に口頭練習を重視する直接法系の教授法です。

パーマーはスイスの言語学者ソシュールに影響を受け、言語には二つの側面があると考えました。一つは社会において習慣的に体系化された規範の側面。言語の音声や文法規則のように、その言語を使う人々全てに共通して適応される規範を指します。もう一つは個々人が規範の上に立って実際の場面で言語を使うという言語運用の側面です。パーマーはこの両面の学習が外国語の習得に繋がるという言語観を持っていますが、うち、特に言語教育で教えるべきものは後者の言語運用の側面であるとしています。また、言語は音声による運用が第一であり、文字による運用は第二であるとし、言語運用に用いられる技術を第一次技能(「話す」「聞く」)と第二次技能(「読む」「書く」)に分けました。この言語観は第一次技能の習得を重視しているため、パーマーの教授法は学習の初期段階ではほとんど口頭によって行われます。このことからオーラル・メソッドと名付けられています。(レベルが上がるにつれて第二次技能の教育も行います。)
パーマーは1922年に来日し、日本での英語教育に14年間従事しました。その協力者であった長沼直兄(1895-1973)がパーマーの教授法を改良して日本語教育に取り入れたことで、日本語教育に大きな影響を与えています。その間に『標準日本語読本』全8巻の作成もしています。
参考文献
石田敏子(1988)『日本語教授法 改訂新版』27-29頁.大修館書店
木村宗男・阪田雪子・窪田富男・川本喬(1989)『日本語教授法』50-52頁.おうふう
国際交流基金日本語国際センター(1988)『教師用日本語教育ハンドブック⑦ 教授法入門』126-130頁.凡人社
小林ミナ(2019)『日本語教育 よくわかる教授法』161-162頁.アルク

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