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直接法(ダイレクト・メソッド:Direct Method)
直接法(ダイレクト・メソッド:Direct Method)とは、翻訳を介することなく、言語形式と意味を直接結びつけて外国語を理解することを最終目標とする教授法の総称です。翻訳を介さずに理解させるため、教師は実物や絵、写真、身体動作を用いたり、たくさんの例文を提示して帰納的に理解させたり、そのことばが使われる場面や状況を提示したりします。ナチュラル・メソッドやフォネティック・メソッド、オーラル・メソッドなどが直接法に分類されます。これらは翻訳や媒介語を完全に排除するわけではありません。基本スタンスは媒介語を使わないことですが、控え目に使われることもあります。実際、グアン式教授法やフォネティック・メソッドでは媒介語を用いた説明や指示が行われます。
日本語教育における直接法
日本語教育の現場における「直接法」は上述の定義とは異なり、一般に”媒介語を使用しないで日本語だけで教えること“という意味を持っている場合が多いです。正真正銘の直接法であれば、教師は一切媒介語を使用せず、使用する教材にも一切媒介語を登場させないことになりますが、このような教え方は次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット | ・媒介語を使用しないので、目標言語に慣れやすい。・学習者の母語の影響を低減させられる。・教師は学習者の母語を知らなくても教えられる。・異なる母語を持つ学習者たちに同時に教えられる。 |
デメリット | ・教師にとって教えるのが難しい。・媒介語を使わないことで学習者は理解が難しくなり、不安を抱きやすい。・媒介語で教えればすぐ終わるのに、媒介語を使用しないばかりにまわりくどい説明をしなければいけないときがある。 |
これらデメリットをできるだけ減らすため、実際の日本語教育の現場では部分的に媒介語を使用するようなことがあります。例えば、教師は基本的に媒介語を使いませんが、それでも学習者に配る資料や教科書には対訳が書かれているようなケースです。これは折衷法と呼ばれています。
参考文献
石田敏子(1988)『日本語教授法 改訂新版』24-25頁.大修館書店
小林ミナ(2019)『日本語教育 よくわかる教授法』162頁.アルク
高見澤孟(2016)『増補改訂版 新・はじめての日本語教育2 日本語教授法入門』153-154頁.アスク
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