平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題5解説
問1 プロジェクトワークにおけるタスクの意味
学習者が主体となって計画をし、資料や情報を集めたりして、グループごとに一つの作品にまとめたりする活動をプロジェクトワークと言います。例えば報告書、新聞、発表、映像などを作るなどなど。ここではオープンキャンパスで配布するための「大学情報マップ」を作るという活動を行います。
選択肢1
オープンキャンパスで配る「大学情報マップ」はその大学に入学したいと思っている日本語母語話者が見るものなので、配布物にふさわしい日本語を用いて作ることが求められます。未習の言語形式を増やすとか、既習のものだけ使うとかそういう物差しではなく、日本語母語話者に配るものとして適当なものを作る必要があります。この選択肢は間違い。
選択肢2
オープンキャンパスで配布するために「大学情報マップ」を作るというプロジェクトの目的は途中で変更してはいけません。みんな困る。この選択肢は間違い。
選択肢3
このプロジェクトワークでは、学習者同士で話し合ったり、大学職員などにインタビューしたり、その結果を踏まえてマップを作ったりします。その過程では「話す」「聞く」「書く」「読む」のいずれも使われます。特定の技能が苦手な学習者にその技能を使う部分だけ担当させるのは非現実的。この選択肢は間違い。
選択肢4
この選択肢が答え。現実的な活動を通して言語を習得しようとするのがプロジェクトワークですので、現実の生活で現れるものや興味が持てるようなものをタスクにするのが望ましいです。
答えは4です。
問2 学習者同士話合わせる目的
プロジェクトワークでは学習者が主体となって行います。だからタスク(「大学情報マップ」を作ること)を達成するためにどのような情報が必要かから学習者同士で話し合って決めます。
答えは2です。
問3 インタビュー時の聞き手の行動
留学生は大学職員や食堂の人へインタビューを行います。留学生はインタビュワーになるので聞き手で、大学職員や食堂の人は話し手ということです。話し手の話を聞くときに、聞き手はどのような行動をすればいいかを考えます。
選択肢1
相手の言ったことを「~ということですね」と言い換えて、理解していることを伝えるとインタビューは円滑に進みそう。この選択肢は適当です。
選択肢2
分からないときは「分かりません」ではなく、具体的に聞くべき。この選択肢は間違い。
選択肢3
日本語において相手の話し中に相槌を打つことは、聞いていることを示すためにも必要です。この選択肢は間違い。
選択肢4
「はい」などと言ってうなずくほうがいいです。この選択肢は間違い。
答えは1です。
問4 教室外活動を行う効果
作成した「大学情報マップ」を実際にオープンキャンパスで配る活動をして、フィードバックを得るのが【授業外活動】となっています。このフィードバックとは何を指すのか、選択肢を見てみましょう。
選択肢1
この選択肢は適当です。留学生が実際に日本人を目の前にして配布することで、受け取ったときに「ありがとうございます」と言うだとか、要らない場合は手をかざして頭を下げながら「結構です」と言うとか、そうした社会言語行動を見ることになります。これらは教科書は教室では実際に目にすることができないものなので良い学びになります。
選択肢2
「大学情報マップ」を配る相手は大学に進学したいと考えている日本語母語話者です。彼らは必ずしも規範的な日本語を使うとは限りません。若者言葉や流行語を使うかもしれないし、日本語の教科書には載っていないような規範から逸脱した表現を用いるかもしれません。「規範的な日本語に触れることができる」という記述が間違い。
選択肢3
もしかしたら大学職員や食堂の人、オープンキャンパスで知り合った人などと仲良くなって交流が始まるかもしれないし、今回のタスクで不十分だったところが分かり、さらに勉強をしようという気持ちになるかもしれないし、確かにこのコースが終了したあとも日本語の勉強を継続する動機を得られる可能性はあります。この選択肢は適当。
選択肢4
大学職員や食堂の人、オープンキャンパスに来る人など実際の日本語母語話者とのふれあいがあります。だから実生活で必要なコミュニケーション能力の養成に向いているプロジェクトワークだと思います。この選択肢は適当。
答えは2です。
問5 マップを配布する目的
選択肢4について、訂正作業は配布前、および配布後のフィードバックで行うものです。オープンキャンパスの来訪者にしてもらうことじゃない。
だから答えは4です。
コメント
コメント一覧 (2件)
問3の4の選択肢ですが、うんと言ってうなずくほうが良いなら、4も正解になるのでは?
>かんさん
聞き手に「聞くときは一切無言で、絶対頷かないようにしてください」と指導するのは間違いです。「うん」「はい」などと相槌を取りながら頷いたりしたほうがいいでしょう。
「無言で」と「うなづかないようにする」を切り離して考えてください。