6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

自由形式と拘束形式について

自由形式と拘束形式

 形態は、独立して現れることができる形態の自由形式(free form)と、他の形態素と結びついたときに現れる形態の拘束形式(bound form)に分けられます。例えば、形態素{しろ}には「しろ」「じろ」「しら」といった異形態がありますが、このうち、異形態「しろ」は「白」を単独で用いるときに現れる異形態で自由形式です。それ以外の異形態「じろ」「しら」は「色」が前接する環境や「樺」が後接する環境でしか現れないので拘束形式です。拘束形態素は常に拘束形式ですが、自由形態素はそれが現れる環境に応じて自由形式として現れる場合もあれば、拘束形式として現れる場合もあります。

 形態素{はら}においても、他の形態素と結びつかずに「原」を単独で用いる場合は「はら」という形態が現れますから、「はら」は形態素{はら}の自由形式です。それ以外の、「藤」や「海」が前接した「藤原」「海原」のような他の形態素と結びついて現れる環境においては「わら」「ばら」という拘束形式を用います。

参考文献

 漆原朗子(2016)『朝倉日英対照言語学シリーズ4 形態論』2,9,30,59,141頁.朝倉書店
 窪薗晴夫(1999)『日本語の音声』108-111頁.岩波書店
 斎藤純男(2010)『言語学入門』52-55頁.三省堂
 斎藤純男,田口善久,西村義樹編(2015)『明解言語学辞典』57頁.三省堂
 仁田義雄ら(2000)『文の骨格』19-20頁.岩波書店
 森山卓郎,渋谷勝己(2020)『明解日本語学辞典』51頁.三省堂
 リンゼイ J.ウェイリー,大堀壽夫ら訳(2006)『言語類型論入門-言語の普遍性と多様性』114-117頁.岩波書店




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