包摂関係
人が作り出す知識の構造として上位概念の大分類から下位概念の細分類へと広がる階層性があり、こうした上下の繋がりで表される階層関係は包摂関係(hyponymy)とも呼ばれます。包摂関係は上位概念が指し示すものの領域内に下位概念が指し示すものが含まれるような語と語の関係で、例えば次のような「電気タイプ」と「ピカチュウ」などが挙げられます。包摂関係にある語のうち上位概念にあたるほうを上位語、下位概念にあたるほうを下位語と呼びます。下位概念に並ぶ同じレベルの語同士は同位語です。
一般に和語と漢語の間には、意味上和語が漢語を広く包摂する関係が見い出せます。
┌ 欠席する (授業を休む)
├ 欠勤する (会社を休む)
休む ┼ 着席する (椅子に座って休む)
├ 休憩する (ひと時休む)
└ 中断する (いったんやめる)
「欠席する」は主に授業や会議などを休む場面で使われ、「欠勤する」はもっぱら会社を休む場面で使われます。このように漢語が指す意味領域は一般に狭く、特定の場面でのみ適切に使えるものが多い傾向が見られます。しかし和語「休む」は授業や会議を欠席する場面でも会社を欠勤する場面でも用いることができ、指し示す意味は広め。和語の意味領域には意味的に類似した漢語の多くを含むことが分かります。
参考文献
大堀壽夫(2002)『認知言語学』53-63頁.東京大学出版会
村木新次郎(2018)「意味の体系」『朝倉日本語講座4 語彙・意味』61-62頁,朝倉書店
国立国語研究所(1965)「類義語の研究」『国立国語研究所報告 28』秀英出版
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