6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

ヒューマンコミュニケーションとは?

目次

ヒューマンコミュニケーション(human communication)

 ヒューマンコミュニケーション(human communication)とは、「ある人が言語(verval)・非言語(nonverbal)メッセージによって他者(や人々)の心に意味を生じさせるプロセス」(V.P.リッチモンド・J.C. マクロスキー 2006: 1)のことです。対人コミュニケーション(interpersonal communication)とも言い、言語メッセージによるものの言語コミュニケーション(verbal communication)と非言語メッセージによるものの非言語コミュニケーション(nonverbal communication)に分けられます。

音声的 言語メッセージ 言語コミュニケーション
(verbal communication)
※言語メッセージによる
音声行動(vocal behavior) 非言語コミュニケーション
(nonverbal communication)
※非言語メッセージによる
非音声的 外見的特徴(physical appearance)
ジェスチャーと動作(gesture and movement)
表情と視線行動(facial and eye behavior)
空間(space)
接触(touch)

 ※藤本・東(2004: 46)の表をもとにし、非言語コミュニケーションの分類をV.P.リッチモンド・J.C. マクロスキー(2006)の内容に書き換えて並び替えました。

 言語コミュニケーション(verbal communication)は言語メッセージを使ったコミュニケーションです。言語メッセージはランゲージ(language)に依存して明示的な意図や意味を表し、主として聞き手にその内容を供給する役割を担っています。ランゲージは意味を符号化した任意体系なので、同じランゲージを共有している人でなければ言語コミュニケーションは成り立ちません。

非言語コミュニケーション(nonverbal communication)

 非言語コミュニケーション(nonverbal communication)は非言語メッセージを使ったコミュニケーションです。ここでいう非言語メッセージは様々な分類がなされていますが、V.P.リッチモンド・J.C. マクロスキー(2006: 12-13)は外見的特徴(physical appearance)、ジェスチャーと動作(gesture and movement)、表情と視線行動(facial and eye behavior)、音声行動(vocal behavior)、空間(space)、接触(touch)の6つに分類しています。非言語メッセージは主として聞き手に話し手の感情を供給する役割を担いますが、そのメッセージは暗黙的ではっきり伝えられるとは限りません。

外見的特徴(physical appearance)

 身体形状(体格)、身長、体重、肌の色、髪の色、髪の長さ、顔の毛、髪の操作、外見、衣服、装飾品などの外見的特徴は私たちが出会った人から最初に受け取る非言語メッセージで、その良し悪しはその人と話をするかどうか、関係を深めるかどうかなどの判断材料に用いられます。
 一般に私たちは身体的に魅力的な人々を好むため、身体的魅力は出会ったばかりの段階でその人に接近するかどうかに関わります。例えば、教育場面では教師が身体的に魅力的な学生に対して高い評価を与えることが知られていますし、誰かを説得しようとする場面でも面接でも、またデートや結婚においても身体的魅力は重要な影響を及ぼします。衣服についても、それを身にまとう人の特徴や性格についてのメッセージを伝えます。その人の経済力、教育水準、社会的地位、品性などは服装によって判断されます。

ジェスチャーと動作(gesture and movement)

 ジェスチャーや身体動作は動作学(kinesics)で研究されます。動作学のいう動作には頭、視線、表情、姿勢、胴体や手足など身体の全てを含みます。エックマンとフリーセン(Ekman & Friesen)は人間の身体動作をエンブレム(emblem)、例示的動作(illustrator)、調整的動作(regulator)、情動表出(affected display)、適応的動作(adaptor)の5種類に分類しました。

エンブレム(emblem) 言語メッセージの代わりになり、何らかの言語メッセージに翻訳することができる身体動作
例示的動作(illustrator) 発話内容の更なる理解を促すために、その物事の具体的な大きさ、長さ、形、状態、数などを示す身体動作
調整的動作(regulator) 多くは言語情報に随伴して、会話の続行・中断、ターンの維持・譲渡・要求などを促す身体動作
情動表出(affected display) 喜怒哀楽をはじめ、恐怖、驚き、困惑などの感情の向かう先とその程度を伝える表情などの身体動作
適応的動作(adaptor) 生理的欲求を満たすために行われる身体動作

 ※各分類の詳細についてはリンク先に

表情と視線行動(facial and eye behavior)

 表情と視線行動は動作学(kinesics)の研究対象の一部ですが、人間のコミュニケーション過程において目は顔の中で最も重要であることから、視線行動(eye behavior)、アイコンタクト(eye contact)、眼球運動(eye movement)の研究は特に視線学(oculesics)と呼ばれます。さらに目によって送られるメッセージは表情によって送られるメッセージと切り離すことはほぼできないので、一般に表情と視線行動は一緒に扱われます。感情表現や人々との相互作用を調節する際にこれらのメッセージは大きな影響を与えます。

音声行動(vocal behavior)

 高い声は話し手が女性だと判断させるメッセージとなり、弱々しい声は健康状態が悪いのではないかというメッセージになります。声が大きければ自信が感じられ、鼻をすする音が混じれば泣いているのだと判断されることもあります。人間の発声にはその人の感情や健康状態、年齢、性別などの多くの情報が含まれていて、人は誰かの音声を聞くことでそれらの情報を瞬時に判断します。こうした情報を聞き手に提供する非言語メッセージはパラ言語(paralanguage)と呼ばれ、この研究は音調学(vocalics)の分野です。

空間(space)

 関係が良いと近づき、悪いとある程度の距離を取って離れる。一人にしてほしいときは距離を取る。このように人は空間を使用して他人にメッセージを送ることができます。空間(テリトリーとパーソナルスペース)とコミュニケーションに関する研究は近接学(proxemics)の研究分野です。
 ホール(Hall 1966)は2者間の関係性(心理的距離)が、実際に相手に対して取る物理的距離に影響しているとし、対人距離を2者間の関係性の近遠により密接ゾーン(intimate zone)、個体ゾーン(personal casual zone)、社会ゾーン(socio consultive zone)、公衆ゾーン(public zone)の4種類に分けています。

接触(touch)

 接触は私たちのコミュニケーションにおいて最も影響力の強い非言語メッセージであると言われています。身体の中で最も敏感かつ頻繁に他者に接触する器官は手、唇、顔、首、舌、指先、足で、接触によってその人がどのような感情を持っているのかがメッセージとして発信されています。身体接触は触覚学(haptics)の研究分野です。接触には、医者や美容師、整体師などの職務上の接触から、挨拶時の握手などの社会的な接触、友人に対してする抱擁などの接触、頭をなでたりキスをしたりする恋愛的な接触、静的な接触など様々です。

参考文献

 マーク・L.ナップ(1979)『人間関係における非言語情報伝達』東海大学出版会
 V.P.リッチモンド・J.C. マクロスキー(2006)『非言語行動の心理学: 対人関係とコミュニケーション理解のために』北大路書房
 藤本忠明・東正訓(2004)『ワークショップ 人間関係の心理学』45-56頁.ナカニシヤ出版




コメント

コメントする

目次