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平成28年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題1(8)解説

平成28年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題1(8)解説

(8)形式名詞

 形式名詞とは、それだけでは実質的な意味がないか、あるいは元々の意味が薄くなっている名詞のことです。例えば「朝は早く起きることだ」の「こと」がそうです。

 形式名詞かどうか見極めるため、3つのポイントがあります。

 ①節を修飾して名詞化する機能を持つ
 ②それだけで主語にはならない
 ③意味が全く無いか、あるいはアスペクトやモダリティを表す

 形式名詞、たとえば上記の「こと」は「起きる」という動詞を名詞化するために働いています。「こと」は意味が薄くなっているので、それだけで主語にすることが普通できません。「ことは~」とか言えないですよね。また、「こと」はこの場合アドバイスなどのモダリティ表現として働いています。こういうものが形式名詞です。

選択肢1

 ①〇「わけ」は動詞「遅刻した」を名詞化するために働いてます
 ②✕「わけが分からない」のように主語になれます
 ③✕「わけ」はアスペクトもモダリティも表さず、「理由」「原因」などの実質的な意味を表しています。
 以上のことから「わけ」は形式名詞ではなく、実質名詞です。

選択肢2

 ①〇「はず」は動詞「分かる」を名詞化するために働いてます
 ②〇「はずはない」みたいに単独で主語になれません。せめて「~はずはない」と言わないと。
 ③〇この「はず」は主観の断定を表すのでモダリティ表現です。
 だから「はず」は形式名詞です。

選択肢3

 ①〇「ため」は動詞「集中した」を名詞化するために働いています。
 ②〇「ためは~」みたいに単独で主語になれないです。
 ③〇話し手の目的を表すのでモダリティ表現です。
 だから「ため」は形式名詞です。

選択肢4

 ①〇「こと」は動詞「失敗した」を名詞化するために働いています。
 ②〇「ことは~」などと言うことはできません。
 ③〇この「こと」は意味が全くありません
 だからこの「こと」は形式名詞です。

選択肢5

 ①〇「うち」は「気づかない」を名詞化するために働いています。
 ②〇「うちは~」のように言えません。
 ③〇「気づかない」という動作の特定の動作局面を表しているのでアスペクト表現です。
 だから「うち」は形式名詞。

 選択肢1だけ実質名詞だから答えは1です。

 形式名詞かどうかを判断するときに絶対にお勧めしないことは、何か別の言葉に言い換えられるかどうか試してみることです。このやり方は言い換えられそうな言葉を無理やり探し出そうとしてしまうので、その過程で形式名詞を実質名詞に言い換えてしまう危険性があります。

 1 遅刻したわけだ → 遅刻した理由だ (実質名詞?)
 2 
 3 
 4 
 5 気づかないうちは → 気づかない間は (実質名詞?)

 そうすると選択肢5も「間」なんかに言い換えてしまって、ああ実質名詞だなんてことも起きるかも。こんな主観的な方法は定義とは言わないです。




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