比喩
比喩とは、「ある言葉(=語・句・文)を本来の意味とは異なる意味に用いること」(籾山2010: 35)です。
(1) 彼は太陽のようだ。 (直喩)
(2) 彼は太陽だ。 (隠喩)
(3) パトカーに捕まった。 (換喩)
(4) 花見に行こう。 (提喩)
※比喩とは何かを言語学的な視点からまとめたいと思っているので、認知言語学の参考文献を中心に調べてみたんですが参考文献によって様々でした。まずそのことを、これを読んでくれている皆さんに一旦お断りしておきます!
辻(2003: 139-140)は文字通りの意味(literal meaning)が意図された意味(intended meaning)に変わることを転義と呼び、転義がかかったものを(狭義の)比喩と定義しました。ただし、「男はオオカミのようだ」などの直喩は一般に比喩の典型例として扱われていることを認めつつも、「オオカミ」は文字通り四足動物の狼を指していて転義してないとし、(狭義の)比喩には含まないとしています。というわけで認知言語学が扱う比喩の種類は隠喩、換喩、提喩の3つがあると述べています。籾山(2010: 35)は比喩を「ある言葉(=語・句・文)を本来の意味とは異なる意味に用いること」と定義していて、この定義を辻の転義と捉えるなら、籾山が定義する比喩にも直喩が含まれないことになります。森(2018: 91)は比喩の定義を明らかにしていませんが、比喩の下位分類としてシミリー(直喩)、メタファー(隠喩)、メトニミー(換喩)、シネクドキー(提喩)を挙げています。
おおむね認知言語学での比喩は隠喩、換喩、提喩を指し、直喩は含まない。修辞学(rhetoric)での比喩は直喩、隠喩、換喩、提喩、擬人法… などなどを指すみたいなイメージなんだろうと思いました。前者は狭義、後者は広義と言っていいと思われます。
参考文献
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辻幸夫(2003)『認知言語学への招待(シリーズ認知言語学入門(第1巻))』138-140頁.大修館書店
籾山洋介(2010)『認知言語学入門』35頁.研究社
森雄一(2018)「第5章 レトリックはなぜ認知言語学の問題になるのだろうか?」『認知言語学とは何か-あの先生に聞いてみよう』89-109頁.くろしお出版
吉村公宏(2004)『はじめての認知言語学』103-106頁.研究社
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