平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題5解説
問1 熟達度評価
熟達度評価というのはあんまり聞かない言い方なんですけど…
熟達度は学習者が言語を使ってどのくらいできるかのことで、それを測るテストとしてJLPTなどがあります。そのテストを評価した結果、ある学習者はN3相当の熟達度で別のある学習者はN1相当の熟達度だったとすれば、彼らを同じクラスに配属したり、同じ授業を受けさせたりするのは避けなければいけません。熟達度評価によってこのようなことが分かります。
選択肢1
受験者の外国語学習に対する適性を測るためのテストであって、言語を使ってどのくらいできるかを測るテストではありません。熟達度評価とは関係なし。
選択肢2
クラス分けに用いられる学習者の言語能力を測定するためのテストをプレースメント・テストといいます。
プレースメントは各学習者の熟達度別に行います。だいたい同じレベルの学習者を同じクラスに配属しなければ授業が難しくなるからです。この選択肢が答え。
選択肢3
コースの定期テストはそのコースで到達すべき水準に達しているかどうかを測定するテスト。コースの定期テストには必ず到達目標があり、その到達目標と比較してどれだけ習得できたかを評価する際の評価材料として役立ちます。これは到達度評価であって、熟達度評価ではありません。熟達度評価は特定の到達目標などは想定されません。
選択肢4
単元テストはその単元で到達すべき水準に達しているかどうかを測定するテスト。選択肢3と同じくこれも到達度評価。
したがって答えは2です。
問2 訂正法(correction)
訂正法は間違った部分を正しいものに直させる問題形式のことです。例えばこういうやつ。
次の下線部を正しい言葉に言い換えなさい。
問1 昨日買い物に行きますか? → 昨日買い物に _____ ?
1 3つ以上の選択肢から適当なものを選ばせる選択法
2 与えられた指示通りに答えを書かせたり、書き換えさせたりする変換法
3 誤りのある文を正しい文に訂正させる訂正法
4 順不同の語を正しい順番に並び変える配列法
答えは3です。
問3 妥当性
テストの妥当性とは、そのテストが測定しようとしている事柄を的確に測定しているか否かの度合いのことです。例えば、中級のテストに上級の問題が混じっていたりすると妥当性は低め。中級のテストには中級の単語や文型を使ったほうが妥当性は高くなります。
選択肢1
???
選択肢2
聴解テストなのに読めない漢字が書かれているので聴解以外の能力が求められています。聴解問題なら聴解だけ問うような構成にすべきで、これは妥当性が損なわれています。
選択肢3
まぐれ当たりが多くなるので安定したテスト結果が得られなくなります。これは
テストの信頼性を損なっています。
選択肢4
???
答えは2です。
問4 標準偏差
選択肢1
標準偏差(standard deviation)は平均値からの隔たりを示す値で、データの分布の広がり(散らばり)を表現する統計測度です。これが答え。
選択肢2
あるテスト項目が、能力が高い受験者と低い受験者を識別(弁別)することができたかどうかを示す値は項目弁別力指数(item discrimination power index: DISC)と言います。
選択肢3
得点を高い順に並べたときに真ん中に来る値を中央値(median)と言います。ある受験者がとても高い点数をとったり、あるいはとても低い点数を取ったりすると平均値(mean)は偏った値を取るので、そう言う場合は中央値のほうがより真の平均値に近い値を取ります。
例えば世界中の人の年収を平均したときに、トップの人たちの年収があまりにも高すぎることで平均は高いほうに偏ってしまいます。そういうときは中央値のほうがいいかもみたいな話。
選択肢4
あるテスト項目がどれくらい難しかったかを表すものは項目困難度(item difficulty: DIFF)、あるいは正答率と言います。
答えは1です。
問5 Can-do statements
Can-do Statementsとは、日本語学習者が現実のある場面において「できる」か「できない」かを回答させる質問票みたいなもののことです。日本語能力試験などで受験者に実施されたりしています。
参考:日本語能力試験Can-do自己評価リスト(JLPT Can-do) | 日本語能力試験 JLPT
選択肢1
自分で自分は何ができるか回答するだけなので学習者間の相対的な比較はできません。各項目ができるかどうかの自己評価として使うことで、定められた目安や級と客観的に比較できます。
選択肢2
Can-do statementsには具体的な項目が書かれており、それができるかどうかによって自己評価を行います。
たとえば「電話で遅刻や欠席の連絡ができる」という具体的な項目に対して「できる」か「できない」で答えます。
選択肢3
正しいです。自己評価なので、学習がうまくいってれば高評価になるし、そうでなければ低評価になりそう。
選択肢4
Can-do statementsに自己評価で回答した場合、個人の意見や特性がちゃんと反映されます。
これは間違い。
答えは3です。
コメント
コメント一覧 (8件)
日本語先生すみません。プレースメントテストは診断的評価でもあり熟達度評価でもあるんですか。
そのあたりが混乱しています。
プロフィシエンシーテスト(熟達度テスト)は熟達度評価ではないのですか。
>ひなばーさん
お答えします。
プレースメントテストはクラス分けに用いるテストで、基本的には診断的評価として行われます。学習者のレベルの診断を目的としますので、点数が高ければ良いとか低ければ悪いとかということはありません。純粋に”レベルを確認する”だけです。
一方、ある技能がどれだけできるかを測る熟達度評価には、プロフィシエンシーテストなどがあります。これはテストの点数が高ければ高いほど良いと判断されます。
そして、プレースメントテストは学習者のレベルを見るということから熟達度評価の側面も併せ持っていると言えます。
ご丁寧にありがとうございました。
いつどこに書いたのかわからなくなり、お礼コメント遅くなってすみませんでした。
30年度の試験Iの問題5について、問3の選択肢3もわからないです!選択肢が少ないので、生徒たちは適当に選んでも相当数の正解になります!試験をしても、生徒たちのレベルに合えないと思いますが!試験をしても、生徒たちはこの問題文が分かりますかどうかはわからないです!これも妥当性を損なうと思いますが
愚問ですがもし解答していただければ、ありがたいです
>匿名さん
問3 選択肢3については、テストの信頼性が損なわれている例だと思われます。
信頼性とは、何度同じ試験をしても同じような点数や順位になるかという度合いです。
適当に選んでも正解になる可能性が高いということは、点数が安定しなくなります。
返信遅れてすみません ありがとうございます
こんにちは。30年度の試験Iの問題5について、問3の選択肢1は、妥当性ではないとしたら何なのか分からなくなってしまいました。よろしくお願いします!
>なかちゃんさん
これは… 私も分かんないんです。逆に教えてください!