令和4年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3A解説
(1)助詞の種類知ってる?
問題文で助詞は格助詞、接続助詞… と色々挙げてます。助詞と言ってもいろんな種類あります。
格助詞:「グラウンドで走ります」の「で」など
接続助詞:「風邪を引いたので休みます」の「ので」など
終助詞:「寒いですね」の「ね」など
とりたて助詞:「水さえ飲めない」の「さえ」など
これら以外にもまだいくつかあります。選択肢を見てみると…
対比助詞、転換助詞、補足助詞っていう助詞はないです。 ア に入るのは「並列助詞」。これは「太陽と地球」の「と」、「チョコやケーキ」の「や」などのことです。
名前知っていれば1秒で解ける問題でした。
答えは3です。
(2)格助詞じゃないものはどれだ!
格助詞じゃないものを探す問題です。
さて… そもそも格って何か知ってますか? 格助詞ってなんだか知ってますか?
私が 道で 彼を 鈍器で 殴りました。
これ適当に作った例文。まず述語に「殴りました」があります。「殴りました」と言うだけだと情報が欠けててよく分からないので、「殴る」という動作について誰が殴ったのか、誰を殴ったのか、どこで殴ったのかとかいろんな情報が必要になることが多いです。そこで述語の前に「私が」を置いて述語「殴りました」という動作の主体が「私」であることを表したり、「道で」を置いて述語「殴りました」という動作の場所が「道」であることを表したり、「彼を」を置いて述語「殴りました」という動作の対象が「彼」、「鈍器で」を置いて述語「殴りました」という動作に使う道具が「鈍器」ってことを表せます。日本語の文ってこうやって作ってます。そしてこの名詞たちと述語の間にある主体、対象、場所、道具などの意味関係を表す手段を格と言い、この意味関係を表す助詞がまさに格助詞です。
これで格助詞かどうか判断できます。
選択肢1
この文の述語は「行く」で、その前に「迎えに」がついてます。
これは述語「行く」という動作の目的が「迎え」ってことを表していて、「に」は格助詞です。
選択肢2
この文は複文になってます。「昔と同じ」が従属節(名詞修飾節)で、「製法で作っている」が主節です。
従属節の部分「昔と同じ」だけに注目すればOK。
述語「同じ」と「昔」の意味関係は何だろう? って考えてみると、答えは<基準としての相手>です。例えば「私は父と似ていない」の「と」は基準を表します。この「と」はこれと同じ。つまりこの「と」も格助詞です。
選択肢3
「風も強くなってきた」とありますが、この「も」は取り立て助詞と呼ばれるもの。
「風」を取り立てて「風」以外の要素も累加しようとしています。つまり「も」は「風」以外にも強くなってきたものがあるという意味を暗示する機能があるわけです。このように文中にない情報を暗示する機能を持ったものを取り立て助詞と呼んでいます。この選択肢は不適当。
選択肢4
述語「好きだ」の対象が「紙の辞書」であり、その対象の比較対象として「電子辞書」が文中に明示されています。
この「より」は比較構文において、その比較対象を表す格助詞です。「野菜より肉が好きだ」では「肉が好きだ」と言ってますが、その比較対象として「野菜」をヨリ格で表しています。選択肢4も同じです。
選択肢3だけ取り立て助詞でした。
答えは3です。
(3)逆接の例文を作ってみよう
選択肢には接続助詞が並んでいるので、これを使って逆接の例文を作りましょう。
まずは逆接について簡単におさらい。
簡単にいうと「しかし」が逆接です。「雨が降った。しかし行く」のように、前件の事態からは通常想定されない、予想外の事態を後件で述べるようなとき、その文は逆接条件文などと言います。雨が降ったら普通の人は行かないけど、予想に反して「行く」と判断したわけだからこの文は逆接です。
選択肢1
(1) 雨が降ったから行く。
(2) 雨が降ったから行かない。
これは逆接とは言いません。(1)はまるで雨が降ったら行くと決めていたような言い方で、(2)も降ったから行かないと決めていたような言い方。前件と後件に想定外のつながり見えないので順接とみなされます。「~から」で逆接を作るのは無理。この選択肢が答えです。
選択肢2
(3) 雨が降ったが行きます。
(3)は「雨が降った」に対して想定外の行為である「行きます」が後件に来ているから逆接です。「が」は「しかし」の意味があるから逆接作るのは簡単です。
選択肢3
(4) 眠いながらもかろうじて起きてます。
この「ながら」は逆接です。「眠い、しかし…」って言い換えられるのがその証拠。
選択肢4
(5) 天気はよくないものの、行かなければならない。
これも「天気はよくない。しかし…」って言えるので逆接。
選択肢1は逆接じゃなくて順接にしか使えなさそうです。
したがって答えは1。
(4)終助詞で例文を作る
めんどくさがらず例文を作ります。
選択肢1
意向形は「行こう」、これに「さ」をつけると「行こうさ」?
こんな言い方ない。
選択肢2
命令形は「行け」、これに「ぜ」をつけると「行けぜ」?
こんな言い方もない。
選択肢3
否定形は「行けない」、これに「ぞ」をつけると「行けないぞ」!
これは作れました~
選択肢4
疑問詞疑問文とは、疑問詞「どれ」「なに」「なぜ」「いつ」などを使い、疑問詞が表す不明な指示対象について明らかにしようとする文のことです。例えば「どれが欲しいですか?」「何が要りますか?」「なぜ来ましたか?」「いつ行きますか?」など。
これらに「よね」をつけると「どれが欲しいですかよね?」ってなってもうおかしくなっちゃってます。ちなみに「です」を無くして「どれが欲しい?」にしても「どれが欲しいよね?」って言えないし、「か」を無くして「いつ行きます?」に「よね」をつけて「いつ行きますよね?」としてもダメ。結局何してもダメです。
例文を作れたのは3。
答えは3です。
(5)複合助詞(複合格助詞)
選択肢1
「私にとって簡単だ」「私にとって難しい」の「にとって」は評価を行う人や立場を表します。表せないって書いてるけど表せてます。
動作や感情の向けられる対象って、たぶん「に対して」の説明じゃないかなと思います。「隣国に対して軍事的にプレッシャーを与える」が動作が向けられる対象、「彼に対して不満がある」が感情が向けられる対象だもん。
この選択肢は間違い。
選択肢2
10時間にわたって拷問を受けた。 (時間)
国道沿い2kmにわたって桜並木が続いている。 (空間)
「~にわたって」は時間的な範囲も空間的な範囲も表せます! この選択肢は間違い。
選択肢3
まず、「センサーによって糖度を測定する」の「によって」は手段です。「センサーを用いて」と言い換えられるから。物事の変化に合わせてそれにふさわしく対応するって意味じゃないのでこの時点で間違い。物事の変化に合わせてそれにふさわしく対応するっていうのはたぶん「~に伴って」を指していると思います。例えば「大学卒業に伴って引っ越しすることになった」がその例。
この選択肢は間違いです。
選択肢4
これが正しい記述。「~につれて」は私は比例変化って呼んでますけど正しいかな。「春に向かえば向かうほど暖かくなる」という意味で、春に向かうという事態が進展すれば、それと同時に暖かくなるという事態も進展します。この記述に矛盾はありません。
したがって答えは4です。
コメント
コメント一覧 (6件)
早々の解説ありがとうございます。
(5)は解説内容と最後の答えが違うと思うのですが。
早速ありがとうございます! 間違えていました。答えは4ですね。
遅いですけど更新していってます。何か間違ってるところ、疑問なところがあったらぜひお願いします。また公式の答えも発表されていない段階ですので、いろんな意見をお聞きしたいです。
ありがとうございます。(4)選択肢4 疑問詞疑問文について質問致します。「どれが」だとおかしいですが、「どれか欲しいよね?」だったら成立すると思うのですがいかがでしょう?たくさんあるモノの中から少なくとも1つは欲しいというイメージです。
横からすいません。
それだと、疑問詞の内容を聞いているのではなくて、欲しいかどうかを聞いている、もしくは確認しているとなるので、疑問詞疑問文とは言えないのではないでしょうか?
疑問詞がなくても成り立つと思って。
疑問詞が入っていれば疑問詞疑問文というわけではないような気がします。
根拠となる説明が見つけられませんでした。
Akirinさん、「よね」は、調べると①聞き手に受け入れられると見込まれる話し手の認識を示すもの →学生時代は楽しかったよね。②聞き手に直接かかわることや聴き手の方が確かな情報をもていると見込まれる事柄に対して確認を求めるもの
→中学の時の先生、覚えてるよね? あと、②と同じかもしれないですが、話し手に何らかの判断が成立していることを前提とした確認要求の疑問文をとる →誰か来るよね?
「どれかほしいよね?」は、話し手に何らかの判断が成立している ということで、確認要求にあたるのでは?、完全に疑問にしていないということで、疑問詞(疑問語)には接続しないと、有名な文法の本に書いてありました。「どれか」は疑問詞にあたりそうですが、確認要求の内容が濃いので、完全な疑問ではなさそうです、、。わたしも間違えてしまいました。
ねぼすけ母さん様 確認要求ですか…疑問文の範疇では無いのですね?ほぉっ〜…(驚)、ありがとうございます。勉強になります。
匿名様もご意見ありがとうございました。