平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題7解説
問1 自律学習における教師の行動
自律学習(autonomous learning)とは、自分の学習に責任を持つような方法で行われる学習のことです。自分で学習目標を決めて、それに向かって何を学ぶか、どう学ぶかなどを学習者自身が決め、学習者自身によって自律的に学習を進めていきます。
選択肢1
教師が与える自習課題に取り組ませるのは自律学習ではありません。自律学習では今自分が何を勉強すべきか、どうやって勉強すべきかなど自ら決めて、それにしたがって学びます。
選択肢2
教師はファシリテーター、カウンセラーとして適切な助言を与えたり支援を行うことはありますが、自律学習では分からない言葉を聞かれもしないで直接教えるようなことはしません。
選択肢3
学習者がつけた学習日記を確認することは、計画が順調に進んでいるのかどうか、あるいは今後計画を変更する場合にも役に立ちます。これはファシリテーターの役割を担う教師が欲しい情報です。
選択肢4
アチーブメント・テストは到達度テストとも言います。学習者が特定のカリキュラム内で学習したことがどれだけ定着・習得できているかを測定するテストのことで、具体的にはそれまで学んだことの定着を見る中間テスト、期末テストなどを指しています。自律学習では学習者によって個別の学習計画があるので、それに基づいて教師が一つずつテストを作るのは現実的ではありません。そもそもテストを受けさせて定着の具合を見るのも自律学習とは言えない。学習の評価も学習者自身がします。
よって答えは3です。
問2 自律学習における教師の役割
自律学習では、教師は学習者に積極的に何かを教えるようなことはしません。その代わり、学習者の自律学習をサポートするファシリテーター、もしくはカウンセラーといった立場でそれを見守ります。具体的には、学習者が一人でできるような足場掛けをしてあげて、できるようになったら足場掛けをやめて、そうして学習者オートノミーを育てます。
1 これが答え (ファシリテーターでもいい)
2 スポーツ指導、技術的な指導をする人のこと
3 商品などを実際に使って見せる、宣伝する人のこと
4 集団の意思決定に大きな影響を与える人のこと
なので答えは1です。
問3 自律学習を支援するシステムの構築の際に教師が行うこと
選択肢1
他の学習者のカリキュラム実例集の蓄積があれば、教師がそれを参照することで他の学習者の計画を支援するのにも利用できます。
これはあって損はなさそう。
選択肢2
自律学習において、何を学ぶかをまとめた学習シラバスは教師が設定するものではなく学習者が決めるものです。教師はシラバスの設定に積極的に関わるのは避けましょう。
選択肢3
自律学習では困ったら誰かに聞いたりして問題解決することが求められます。そのためにも友人やクラスメートとのネットワークは構築しておいたほうがいいです。これは正しい。
選択肢4
オフィスアワーとは、教員と学生がコミュニケーションをとるために設けられた時間のことです。この時間、教員は研究室とかに居て、相談に来る学生を待ってます。学生は勉強の問題とか、生活の問題とか、別に私的な話題とか、通常はなんでも話すことができるようになっています。教師はカウンセラーの立場として、学習者とコミュニケーションをとるために開設しておくと役立ちそう。
ダメなのは2。答えは2です。
問4 リソース
自律学習では、困ったときに周囲のリソース(資源)に自らアクセスして勉強を進めていくのが求められます。そしてその学習者が利用するリソースは、問題文いわく、人的リソース、物的リソース、社会的リソースがあるようです。
人的リソースは教師、友人、クラスメイト、地域住民などの個人を指します。
物的リソースはWebサイト、動画、教科書、辞書、新聞、図書館など。
社会的リソースはSNS、地域社会、コミュニティ、アルバイト、職場、サークル活動などの、人の集まりを指します。
1 人的 - 物的 - 人的
2 社会的 - 物的 - 社会的
3 社会的 - 物的 - 物的
4 人的 - 物的 - 社会的
よって答えは4です。
問5 様々な自律学習
1 学習者を支援するために、学習の進捗状況を知ることは教師(ファシリテーター)にとって必要です。これは正しい。
2 コースの内容は学習者が主体となって、教師はサポートしつつ、話し合いながら決める。これも正しい。
3 SNSを利用すると目標言語に触れる機会が増えるので、おすすめです。これも正しい。
4 自律学習において、教師が主体的に授業を行うことはありません。これが間違い。
よって答えは4です。
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