平成25年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題5解説
問1 文型練習をする際の一般的な留意点
動詞の可能形を勉強する授業で、辞書形から可能形に変形する(食べる→食べられる、歌う→歌える)文型練習を行うときに注意すべきこととして不適切なものは…
選択肢1
正しいです。「歌う→歌える」「書く→書ける」のように、まずは活用の形をしっかりと覚えるために機械的な練習をした後に、「私は宇多田ヒカルを歌います→私は宇多田ヒカルが歌えます」みたいに文レベルの変形を行って意味も意識させられるような練習に移っていったほうがいいです。
選択肢2
正しいです。先生が「歌う」とキューを提示して、それに学習者が「歌える」みたいに答えるような口頭の練習でもいいですけど、絵や文字カード、実物などをキューとして変形させる練習もいいと思います。
選択肢3
正しいです。全体練習した後に、個別に当てていって変形できるかどうか確認することで出来不出来が見られます。
選択肢4
文型練習だから文型単位で言えるようになるのが目的です。この場合の対応としては、教師側があまり長い文を用意しないことだと思います。
答えは4です。
問2 可能形の意味
一般に可能は能力可能と状況可能に分けられます。「練習したから100m泳げる」のような可能文は主体の能力によって「100m泳ぐ」という事態が実現できるので能力可能で、「ここは喫煙所だからタバコが吸える」のような可能文は主体の能力ではなく、状況が「吸う」という事態の実現を可能にするので状況可能です。
各選択肢を可能文にしてみて、能力可能か状況可能か見てみましょう。
1 状況可能:図書館で2週間本を借りられます。
2 状況可能:空港でお土産を買えます。
3 能力可能:鈴木さんは英語を上手に話せます。
4 状況可能:駅前に車を止められます。
答えは3です。
問3 可能形とともに練習しておくとよい表現
選択肢1
「あまり話せません」や「少し話せます」のように組み合わせて使える場合が多いので、一緒の教案に入れられそうです。
選択肢2
「~しか歌えません」や「~だけ歌えます」のように組み合わせて使える場合が多いので、一緒の教案に入れられそうです。
選択肢3
可能形とあまり一緒に使われません。
それから「どころか」「ばかりか」は可能形を学ぶ学習者にとってはレベルが高い学習項目なので、その点から見てもあわないと思う。
選択肢4
「~ので行けます」や「~すぎて食べられません」のように組み合わせて使える場合が多いので、一緒の教案に入れられそうです。
答えは3です。
問4 タスク練習で教師が行う行動
タスクシートを使って、クラスメートや先生に「歌が歌えますか」のような可能文の質問を投げかけ、できるかできないかまとめる活動をタスク練習で行います。この練習のときに教師が行う行動として不適当なものは…
選択肢1
正しいです。「歌が歌えますか」を例にとって、これをみんなに聞いて回って、できるかできないか紙に書いてくださいと説明しておくのは重要。
選択肢2
正しいです。実際に先生が「自転車に乗れますか」のような質問を例として挙げて、〇〇さんにそれを聞いて、答えをシートに書く、という一連の手順を説明しておけば学習者も何をやればいいのか分かります。
選択肢3
正しいです。誰かが考えた質問の中に未習の語が会った場合、それを尋ねたクラスメートは分からない可能性があります。未習の語をあらかじめ先生が確認しておけば、それを先に説明することができます。
選択肢4
クラス全員がお互いにインタビューしあう活動なので、教師は学習者が可能形を間違えたことを全て把握することはできません。またインタビュー中に会話を止めて確認していると活動の邪魔になります。途中で指摘したりしないで、まずはタスクを完成させることを優先したほうがいい。
答えは4です。
問5 教師の質問
学習者がタスクシートに用意した質問をクラスメートに聞いて回ります。タスクが終わったあとにタスクシートを見れば、できるできないの質問に対して誰ができると答えたか、できないと答えたかが書かれています。だから選択肢1の「じゃ、Bさんは何ができますか」のような質問をするのが正しいです。
選択肢2「何をしますか」だと可能形が含まれていないので不適当です。
選択肢3「誰が歌を歌いますか」も可能形が含まれていないからダメです。
選択肢4「歌が歌えるのは誰ですか」は複文になっていて、このレベルの学習者には未習の可能性が高いです。「誰が歌を歌えますか」という聞き方なら単文なのでこのレベルにとっては既習です。
答えは1です。
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