平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題16解説

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平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題16解説

問1 多言語情報提供

選択肢1

 外国人が利用する個人経営のお店とかなんかでも多言語表示を見るようになりました。表示の翻訳を母語話者にお願いできない場合は、機械翻訳することもあります。精度は完璧ではありませんし正しく自然な表現でないものもありますが、伝わればいいというスタンスで表示しているかもしれません。この選択肢は間違い。

選択肢2

 正しいです。最もメジャーな英語と、観光客の中で割合の多い外国人の言語で表示されていることがほとんどです。

選択肢3

 国勢調査のデータに基づいてではなく、その地域に住んでいる外国人の層を見て提供する言語を決めているはず。この選択肢は間違い。

選択肢4

 馬場・福田(2008: 119)によると、2008年6月時点の調査では47都道府県の全てのWebサイトで英語にも対応しているようです。つまり100%。この選択肢は間違い。

 答えは2です。

 《参考文献》
 馬場眞知子・福田豊(2008)「地方自治体のWebサイトに見る外国人支援-多文化共生とICT-」『日本社会情報学会 第23回全国大会』pp.118-121

問2 グローバルコミュニケーション計画

 「グローバルコミュニケーション計画」については、『グローバルコミュニケーション計画~多言語音声翻訳システムの社会実装~』(魚拓)について書かれています。

(1) グローバルで自由な交流の実現
様々な会話を高精度に翻訳できる多言語音声翻訳システムにより世界の「言葉の壁」をなくし、世界中の誰もが国境を越えて自由に交流する社会を我が国の技術によって実現する。1ページの「ビジョン(Vision)」には次の3項目があり、その中に選択肢と一致するものが見られます。

(2)日本のプレゼンス向上
医療機関での会話の支援や多言語での災害情報の配信など、多言語音声翻訳システムを世界に先駆けて社会実装することにより、外国人が暮らしやすい国を実現し、日本の価値と魅力を高める。
 
(3)東京オリンピック・パラリンピックでの「おもてなし」
2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおいて、多言語音声翻訳システムにより世界から集う選手、観客等を「言葉の壁」を感じさせることなく「おもてなし」する。

 1 「多言語音声翻訳システム」という言葉は(1)にそのまま載ってます
 2 「医療機関での会話の支援」という記述があり、これと合致します。
 3 地上波テレビの多言語はビジョンの中に含まれてません。
 4 「観光案内」という言葉はないんですが(3)にこれと似ている内容が書かれてます

 答えは3です。

問3 やさしい日本語

選択肢1

 全ての外国人に対して母語で情報を伝えることが一番理想的ですが現実的には不可能。だから「やさしい日本語」が導入されるようになりました。

選択肢2

 専門家資格はありません。やさしい日本語に直すルールがあるので、そのルールに沿ってそれぞれ翻訳すればいいだけです。

選択肢3

 導入効果は認められています。「測定」が間違い。

選択肢4

 「やさしい日本語」の必要性が論じられ始めたのは、1995年1月の阪神・淡路大震災以降です。

 答えは1です。

問4 ウェブ媒体を用いた「やさしい日本語」による情報提供

 1 NEWS WEB EASY
 2 MATCHA
 3 Hiragana Times
 4 nippon.com

 1、2、3は「やさしい日本語」が使われ、ルビがふられています。
 答えは4です。

問5 フォリナー・トーク

 フォリナートークとは、母語話者が非母語話者に対してする話し方のことで、簡単な語彙や文法を扱って分かりやすいように話すのが特徴です。スピードも遅くなったり、繰り返したりします。

選択肢1

 フォリナートークは相手が分かりやすいよう、相手に伝わりやすいように調整された話し方です。つまりその相手と距離を縮めようとしています。心理的距離を縮めようとする話し方です。

選択肢2

 その通りです。外国人との接触経験が豊富だと、どのような言い方が伝わりやすいのか等について詳しくなります。経験が増えれば触れるほどフォリナートークの用い方も変わってきます。

選択肢3

 初級や中級の場合はまだまだある程度フォリナートークが必要で、相手もフォリナートークで話してくれないと理解できないという場面もあります。ただ上級になると「もっと母語話者のように自然な日本語を話したい」という考えから、フォリナートークで話されることを嫌う人もいます。流暢で自然な表現を学びたいと思っている学習者はフォリナートークに好意的でない可能性があります。

選択肢4

 フォリナートークとティーチャートークは別物です。
 フォリナートークは母語話者の非母語話者に対する話し方で、ティーチャートークは教師の学習者に対する話し方です。
 教師は学習者に対して砕けた表現(非文法的な表現)はあまり使いませんが、フォリナートークではそういう話し方がされることもあります。なぜならフォリナートークの話者は教師とは限らないからです。

 したがって答えは2です。




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