6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

目標言語調査とは?

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目標言語調査

 目標言語調査とは、コースデザインで行われる調査・分析の一つで、学習者のニーズ領域で実際に使われている母語話者の日本語を把握するために行われる調査のことです。

 例えばその学習者が今後医療関係の仕事をしたいと考えていれば、その学習者の目標言語は病院などで使われている日本語ということになります。医療現場ではどのような語彙がよく使われているか、どういった文型が現れるかなどを知らなければ、シラバスデザインで学習項目を設定したり、カリキュラムデザインで何の教科書を使うのかなどを決めることができません。調査は(現実的にできるかは別問題ですが、)実際の現場のコミュニケーションを録音したり、観察したり、実際に働いている人に聞いたりする方法が考えられます。

目標言語使用調査

 目標言語調査は学習者のニーズ領域で母語話者がどのような日本語を使っているかを調べますが、学習者のニーズ領域で非母語話者がどのような日本語を使っているかを調べることも必要です。この調査は目標言語使用調査と言います。

 学習者の理想の到達目標はニーズ領域において母語話者と同じように目標言語を扱えるようになることですが、実際に学習者が母語話者と同じようなレベルに達することは通常考えられません。それでも学習者はニーズ領域において目標言語を使って活動することを望んでいますから、ニーズ領域においてすでに活動している非母語話者(先輩)がどのような日本語を使っているかを把握することも重要です。彼らの目標言語の使用状況はすなわち学習者の現実的な到達目標です。この調査により、学習者のニーズ領域で活動する非母語話者(先輩)がどのような日本語を勉強しておけばよかったか、どのように勉強すればいいか、どの程度の日本語が分かっていれば活動できるかなどの情報を得られれば、その情報はシラバスデザインの学習項目の設定で役立ちます。

参考文献

 佐々木泰子(2007)『ベーシック日本語教育』119-120頁.ひつじ書房
 日本語教育学会(1991)『日本語教育機関におけるコース・デザイン』10-12頁.凡人社
 田中望(1988)『日本語教育の方法―コース・デザインの実際』11-13,52-67頁.大修館書店




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