令和7年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題1解説
問1 擬音語
オノマトペは、広義には擬音語と擬態語に分けるという見方があります。
(1) ドアをドンドンと叩く <擬音語>
(2) 舌がピリピリする <擬態語>
ドアを叩くときの「ドンドン」のように音があるものが<擬音語>、舌のピリピリのように音がないものが<擬態語>です。
1 「ザアザア」は音があるから<擬音語>
2 「ジロジロ」は音がないから<擬態語>
3 「ツギツギ」は音がないから<擬態語>
4 「バイバイ」は音を繰り返しているけどただの挨拶。品詞でいうと<感嘆詞>
答えは1です。
問2 濁音と清音
日本語のオノマトペでよく言われることとして、 濁音 があると強く・重く、 清音 があると弱く・軽く感じるというものです。
(1)a ドンドンと叩く <強く・重く>
b トントンと叩く <弱く・軽く>
(2)a ゴロゴロと転がる <強く・重く>
b コロコロと転がる <弱く・軽く>
この知識があるとこの問題は余裕ですね。
ちなみに、問題文によると、 濁音 を使うと鈍い物、汚い物も意味するらしい。「ドロドロ」と「トロトロ」とか? 確かに。
答えは2です。
問3 ブーバ/キキ効果
これは有名なブーバ/キキ効果。

被験者にこの2つの図を見せて、どちらがブーバでどちらがキキかと聞くと、多くの人が左の尖っている図をキキ、右の丸みを帯びた図をブーバだと答えます。この実験からは、音声とイメージの間につながりがあることが分かります。
(1) ブーバ [bɯːbɑ]
(2) キキ [kiki]
「ブーバ」には両唇音である子音[b]が含まれています。「プルプルの唇」とか「ぶるんぶるん」とか、ちょっと恣意的に選んでいますけど、オノマトペの中には両唇音が使われることで丸みを帯びたイメージがつくものが見られます。一方、「キキ」には破裂音である子音[k]が含まれています。同じく破裂音である [t] とか [g] を使って、「カキーンと打つ」「ガリガリと爪とぎする」みたいに言うと、こちらは丸みではなく尖ったイメージが感じられるはずです。ちなみに摩擦音 /s/ なども素早く・尖ったイメージが生まれやすくて、「ささっとやる」とか、「さっと茹でる」とか、「スッと指を切る」とかですね。
このように、どのような音(どのような調音)がどのようなイメージとつながっているか、ということは音声学では音象徴(sound symbolism)と呼ばれています。実際、さっきの濁音と清音で強さ・弱さに結びつくというのも音象徴です。
さて、ここでは「トハシ」と「ロナミ」という語が出てきています。
下線部Bによると、「トハシ」は角ばった形のイメージが生まれやすいとのことですが、子音を見てみましょう。
(3) トハシ [tohɑɕi]
(4) ロナミ [ɾonɑmi]
「トハシ」には破裂音[t] と摩擦音[h][ɕ] が含まれています。破裂音と摩擦音は上述の通り、尖っている/素早い、みたいなイメージに結び付きやすいものだから、私たちはこの音形に対して角ばったイメージを持つわけですね! 一方「ロナミ」には破裂音も摩擦音も含まれていません。それでちょっと丸まった、柔らかい感じを受けます。
つまり答えは4です。
問4 /i/ と幼いイメージ
幼いイメージと言えば硬口蓋化。
(1)a おさかな [osɑkɑnɑ]
b おしゃかな [osʲɑkɑnɑ] あるいは [oɕɑkɑnɑ]
(2)a うさぎさん [ɯsɑgisɑɴ]
b うさぎしゃん [ɯsɑgisʲɑɴ] あるいは [ɯsɑgiɕɑɴ]
たとえば、「おさかな」を「おしゃかな」、「うさぎさん」を「うさぎしゃん」とか言うときは赤ちゃん言葉という感じがすると思います。「さ」が「しゃ」になるのには、少なからず硬口蓋化という現象が関係しています。硬口蓋化とは、子音の調音に際して前舌面が硬口蓋面に向かって盛り上がる現象のことで、もうちょっと簡単に言うと、母音の前に /i/ が入り、聴覚的に「イ」の音になる印象を与える現象です。
「さ」[sɑ] の母音の前に /i/ を入れると、「しあ」[siɑ] という発音になりますね。これを早く発音すると「しゃ」に近づきます。他にも、「か」[kɑ] に /i/ を入れると「きあ」[kiɑ] から「きゃ」になったり、「ら」[ɾɑ] に /i/ を入れると「りあ」[ɾiɑ] から「りゃ」になったり。五十音図でいうと、/i/ を入れると拗音になるという感じです。赤ちゃん言葉には、このように /i/ が入る硬口蓋化が起きて拗音が増えるという語がちらほら見られます。
1 促音は関係なし
2 これが答え。拗音が入ると赤ちゃん言葉になることがある。
3 長音も関係なし
4 撥音も関係なし
答えは2です。
問5 オノマトペを習得することで得られるメリット
選択肢1
確かにそれはある。例えば食レポで「パリパリしている」とか「とろっとしている」とか、「つるっとのどごしが」とか。表現は豊かになりそう。この選択肢は適当。
選択肢2
「わくわくしました」「るんるんと歩いていきました」とか、感情の描写が豊富になりそうだからこの選択肢は適当。
選択肢3
オノマトペは音そのものや、感情、動きの様態などを表すことばなので、文と文の因果関係を把握する材料にはならないと思います。この選択肢は不適当。
選択肢4
「シュッ」とか「サッ」とか「パリーン」とか、漫画の絵の周辺に書かれる効果音なんかもオノマトペを知っていればその感覚を知ることができるのでこの選択肢は適当。
それでいうと、以前妻に中国の病院に連れていってもらったときに、私がついついオノマトペで今の体の具合を妻に伝えたところ、妻がオノマトペの翻訳に困るという事態が起きました。私のうっかりではあるんですけど、感覚を伝えるときにはオノマトペってどうしても出てきてしまいます。あとオノマトペはかなり難しい表現ではあるので、学ぶほうも大変です。この問題を見てこれを思い出しました。
答えは3です。

コメント
コメント一覧 (6件)
先生の解説からすると、問5は③が答えではありませんか?
>いろさん
ありがとうございます! 入力ミスです。修正いたしました!
速報お疲れさまです。ありがとうございます。
「答えは2です」→「答えは3です」ですね?
先生の解説とても勉強になります。ありがとうございます。
聴解の解説は市販の過去問出版後とのことですが、先生がどの選択肢を選んだか教えていただけないでしょうか?
>みかんさん
すみません! 私今回試験には参加していなくて、聴解問題は解いていないんです。
問題冊子のみいただいて現在解説を更新しております。申し訳ありません…
お忙しいなかご返信ありがとうございます。
そうだったんですね!
今年のリスニングは比較的簡単だったと感じました。
先生の解説のおかげで勉強がはかどります。今後も楽しみにしております。