令和7年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題7解説
問1 JSP(Japanese for Specific Purposes)
ここで知っておきたい用語は2つ。JGP(Japanese for General Purposes)とJSP(Japanese for Specific Purposes)です。
JGP(Japanese for General Purposes)とは、学習者のニーズをほぼ無視して組まれる、JLPTの合格などに向けた一般的な目的のための日本語を学ぶ日本語教育のことです。一方、JSP(Japanese for Specific Purposes)は、将来通訳になりたいという学習者のニーズに合わせて組まれる、特別な目的のための日本語を学ぶ日本語教育のことです。文章中にもあるように、学習者が多様化していますから、そのニーズも様々。だからニーズに合わせた教育、すなわちJSP(目的別日本語教育)の需要が高まっているわけですね。
1 介護関係の特別な日本語を学ぶ感じなのでJSP。これが答え。
2 特定の分野の日本語ではなさそうなので、JGP。
3 単位取得のための日本語は一般的な目的の日本語だから、JGP。
4 これも一般的な目的のための日本語だから、JGP。
答えは1です。
問2 ニーズ調査
文章中にもありますが、JSPではニーズ調査はめっちゃ重要! 例えば、将来日本で看護師になりたいという学習者がいたとします。しかし教師はそのニーズを知らない場合、「じゃあとりあえずN1取ろっか」みたいに試験対策ばかりやるような授業になってしまうかもしれません。もし「看護師になりたい」というニーズを調査によって得られていれば、看護師に関係した用語を扱ったり、そういう方面のロールプレイを行ったりと、授業がより目的に向かうものになりやすいです。ニーズを満たしてあげることは学習者の動機づけにも関係してきますので、本当に重要なものです!
選択肢1
アンケートでもインタビューでも、方法は何でもいいです。この選択肢は間違い。
選択肢2
その通り。ニーズは学習者によって違うからニーズ調査でちゃんと把握してあげないと。
選択肢3
理想的には、本人からも聞き取り、あとは親などからも聞き取るといいですね。例えば、日本に移り住んできた夫婦が、子どもに日本語を話せるようになってもらいたいというニーズがあって日本語を学ばせていたとします。すると、子どもはそんなに明確な目的をもって日本語を学ぶわけではなく、むしろ親がニーズを持っている場合があるわけです。だから理想的には本人だけでなく、その周辺の人、特に親などに聞いたほうが良い場合があります。この選択肢は間違い。
選択肢4
学習者のニーズは変化するものなので、コース開始前に聞くのはもちろん、コース開始途中にでもニーズに変化があるかどうか調査しておくと、その後の授業の内容にも役立ったりします。この選択肢は間違い。
答えは2です。
問3 学習目標の設定
日本語学校ではないんですけど、私が勤めている中国の大学を例に考えてみますね。
まず、私は4年生論文の授業を担当することになりました。主任からは「授業で論文のテーマを決めて、それから概要と先行研究、研究背景をまとめてください」と言われました。これはコース全体の目標にあたります。
この目標を達成するためには、まずテーマを決めてから、概要と先行研究、研究背景をまとめないといけません。大きく「テーマを決める過程」と「概要と先行研究、研究背景をまとめる過程」の2つに分けましょう。これは学習のひとまとまりである”単元“と呼んでいいものです。つまり、各単元の目標が2番目に来ます。
次に、授業は1学期で15回あります。その15回を駆使して主任から与えられた目標を達成しなければいけません。
第1回目 興味がある分野を決める
第2回目 興味がある分野から、抽象的なテーマを決める
第3回目 抽象的なテーマに対して、いろんな疑問を考える
第4回目 その疑問に対して、いろんな仮説を考える
第5回目 疑問と仮説に関する先行研究を読む
第6回目 先行研究を批判して、自分のテーマになりそうなものを探す
第7回目 テーマを決める
第8回目 先行研究を読み、簡単に概要をまとめる
第9回目 テーマに関する研究背景を理解する
…
上のように、全15回で最終目標を達成しなければいけませんので、たとえば「テーマを決める過程」で第1回目から第7回目まで使い、その後の第8回目から第15回目までを「概要と先行研究、研究背景をまとめる過程」に費やすなど、授業を割り当てないといけません。そして、単元の目標を達成するために各授業の目標を設定します。だからこのようになります。
コース全体の目標 → 各単元の目標 → 各授業の目標
答えは4です。
問4 後行シラバス
普通はコースが始まる前、各授業でだいたいどんな内容を扱うのか決まっていることが多いです。このように事前に決まっているシラバスは先行シラバスと言います。一方、事前に何をやるか決まっておらず、学習者のニーズなどを反映させながら授業を進めていき、コースが終わると同時にシラバスの全体像が完成するタイプのものを後行シラバスと言います。では、後行シラバスの利点とは?
選択肢1
コース前に学習する内容と順番を学習者に示すためには、すでにシラバスが決まっている必要があります。それはすなわち先行シラバスです。この記述は先行シラバスの利点だから間違い。
選択肢2
次何を扱うか決まっている先行シラバスであれば、教師間で授業の引継ぎがしやすいです。この記述は先行シラバスの利点。一方、後行シラバスは次何やるか決まっていないので引継ぎが困難…。
選択肢3
先行シラバスだったら順番に学習項目が並んでいて体系的に順序だてて教えることができます。これは先行シラバスの利点に関する記述ですね。後行シラバスの場合は、何教えるか決まっていないから全体を通して体系的に教えるのは難しい。
選択肢4
これが答え。後行シラバスは何を教えるか決まっていないんですが、これは利点にもなりえます。つまりその都度学習者のニーズを取り入れて、毎回の授業でニーズを満たすような授業が可能になります。この点はすごくいい。(ただし、先生の授業の準備が大変になるという恐ろしい欠点もありますが)
答えは4です。
問5 ポートフォリオ評価
ポートフォリオとは、学習者の作文やレポート、発表資料、作品などの成果物のことです。これらを用いて学習者を評価する場合、それはポートフォリオ評価と呼びます。ある一時点のテスト結果だけでは見えてこない、成長の過程とかが見えてくるのがポートフォリオ評価の良いところ。
選択肢1
評価基準はあります。例えば作文だったら、以前は可能形の使い方を間違えていたけど、この作文では正しく使えるようになっている! とか、文法的な面の評価基準を設けて成長を評価することもできます。この選択肢は間違い。
選択肢2
ポートフォリオ評価は、評価の重点は過程。この選択肢は間違い。
選択肢3
どの成果物を評価するかは確かに自由。たくさんあるならどれか選ぶことになります。全部は無理なので。そういう場面では学習者の自律心が高められるかもしれません。
選択肢4
教師も評価に参加します。この選択肢は間違い。
答えは3です。

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