令和7年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題8解説

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令和7年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題8解説

問1 言語メッセージと非言語メッセージ

 言語メッセージはその名の通り、ことばで伝えられるメッセージのこと。
 非言語メッセージはことば以外のメッセージなんですが、その種類はたくさんあります。たとえば髪の色、体格などの外見的特徴ジェスチャー表情や視線、大きい声で話すか小さい声で話すかなどの音声行動、相手との距離感、それから身体的な接触もそうです。こうした非言語メッセージは一説によると言語メッセージよりも多くのことを伝えると言われています。詳しくは「非言語コミュニケーション」をご覧ください。

選択肢1

 非言語メッセージは言語メッセージから独立して機能することがあります。例えば、何も話していない場面、すなわち言語メッセージが無い場面で、人差し指を立てて唇のところに置くと、それはジェスチャーによって「静かにしろ」という意味を伝えることになります。あるいは、屈強な男性が目の前にいる場合、私たちはことばが無くとも恐れてしまうかもしれません。非言語メッセージは独立して機能しますから、この選択肢は間違い。

選択肢2

 これは面白い内容ですね!
 例えば、「ありがとうございました」という言語メッセージを発しながら、表情は怒っている顔をしていたとします。そのとき我々は、言語メッセージを優先して「感謝しているんだ」と感じ取ることはまずないですね。表情という非言語メッセージから「感謝していないんだろう」と感じ取るはずです。したがって、メッセージの内容に言語と非言語で矛盾がある場合は、非言語メッセージのほうを優先するようです。この選択肢が答え。

選択肢3

 対面ですと相手の身体的特徴も見えるし、視線も見えるし、身体動作も見えるし… 非言語情報はかなり多いです。だから言語メッセージの占める割合が多いというのは疑問。

選択肢4

 無意識的な行動や動作、たとえば貧乏ゆすりをしていたら、この人はイライラしてるのかな?とか私たちは感じ取れます。無意識のジェスチャーであっても非言語メッセージとして相手に伝わるから、この選択肢は間違い。

 答えは2です。

問2 コンテクスト

 コンテクストとは、ことばの解釈を支える情報源のことです。例えば窓が開いているという状況において「この部屋寒いね」と発話すると、日本語においては”窓が開いている”という発話現場のコンテクストの支えにより「窓を閉めてほしい」という解釈になることがあります。コンテクストを利用してことばの解釈を定めるような言語をいわゆる高コンテクスト言語といい、そのような文化を高コンテクスト文化と呼ぶわけです。

 しかし、仮に窓が開いていたとしても、「この部屋寒いね」が「窓を閉めてほしい」という解釈にならない言語があります。つまりコンテクストがことばの解釈に影響を与えない(与えにくい)言語です。そうした言語は低コンテクスト言語、低コンテクスト文化と言います。

選択肢1

 これは正しい記述です。「窓を閉めてほしい」と言語化しなくても、窓が開いているという背景情報を手掛かりにすることで「この部屋寒いね」が「窓を閉めてほしい」という意味になり、これを私たちはいわゆる察しとか、空気を読むとか呼んでいるんですね。

選択肢2

 何を言ったか、言語化された情報が重視されるのは低コンテクスト文化です。低コンテクスト文化ではコンテクストよりも言語化されたものがより重要な意味を持ちますから、はっきり言わないと意味が伝わらないなんてことがあります。この選択肢は間違い。

選択肢3

 曖昧な間接的なメッセージ(「この部屋寒いね」で「窓を閉めてほしい」と伝えるような)が交換されることが多いのは高コンテクスト文化の特徴です。アジア、アフリカ、中南米などの地域を指定することについてはよくわかりませんが、一般に高コンテクスト文化の傾向があるのは移民などが少ない国だと言われています。この選択肢は間違い。

選択肢4

 コンテクストを利用したコミュニケーションがなされる高コンテクスト文化では、同一文化メンバー間でことばにはされないような行動規範が背景にあることが多いです。この記述は高コンテクスト文化の記述だから間違い。

 答えは1です。

問3 ジョハリの窓

 ジョハリの窓はこのようなやつ。

自分が知っている 自分が知らない
他人に知られている 開放の窓
オープンな部分
盲目の窓
盲目な部分
他人に知られていない 秘密の窓
隠れた部分
未知の窓
未知の部分

選択肢1

 「開放の窓」と「盲目の窓」は自分が知っている部分ではなく、他人に知られている部分です。自分が知っている部分は「開放の窓」と「秘密の窓」。この選択肢は間違い。

選択肢2

 「盲目の窓」が大きい人は、自分が知らなくて他人に知られている部分が大きいので、自己開示の度合いは高そうですが、積極的かどうかわからん。

選択肢3

 その通り。「未知の窓」は自分も他人も気づいていない部分です。この選択肢が答え。

選択肢4

 「秘密の窓」、自分が知っていて他人が知らない部分が大きい人は隠し事多そう。自己開示が少ないんでしょう。人の意見を聞こうとしないかどうかは分からん。

 
 ジョハリの窓は性格を捉えられるほどのモデルなんでしょうか? 選択肢2と4はそういうことを言っているので疑問があります。もしかしたら原典でそういう記述があるのかもしれませんが。
 答えは3です。

問4 エポケー

 出ましたエポケー。これは「判断保留」のこと。そういうものだと覚えとけばいいです。この用語はもともと現象学から来ているんですが、いろいろあって思考とか、コミュニケーション学的な領域でも使われるようになっています。

 1 ???
 2 ラポールを築く、みたいなことを言ってます
 3 DIE法?
 4 エポケーの記述

 よくわからないことはいったん判断を保留して棚上げするという部分がエポケーです。
 答えは4です。

問5 エンパシー

 エンパシーはおそらく心理学か何かの用語かと思いますが、関係する参考書には当たれていないので、とりあえずは「相手の感じていることを認識し、理解しようと努めること」として問題を見てみます。

 1 共感
 2 共感
 3 共感
 4 共感しつつ、理解しようとしてる?

 選択肢1~3と選択肢4の違いはなんとなく分かりますが、たぶん用語の定義がちゃんとしていないので解説しきれません。ちょっと本にあたって定義を確認する必要があります。

 答えは4です。




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