令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題4解説
問1 述語の否定形の作り方
各選択肢には辞書形が並んでいるので、それをナイ形にしてみて形を比較しましょう。同じようにナイ形を作っているかどうか見ます。
選択肢1
知る(sir-u) → 知らない(sir-anai)
作る(tukur-u) → 作らない(tukur-anai)
ある(ar-u) → ない(na-i) ※例外
「知る」「作る」「ある」は全て五段動詞です。五段動詞の否定形の作り方は「動詞語幹+anai」ですが、「ある」は「あらない(ar-anai)」とはならず、「ない」と例外的な活用をします。
選択肢2
明るい(akaru-i) → 明るくない(akaru-kunai)
悪い(waru-i) → 悪くない(waru-kunai)
良い(i-i) → 良くない(yo-kunai) ※例外
「明るい」「悪い」「良い」は全てイ形容詞です。イ形容詞の否定形の作り方は「イ形容詞語幹+くない」ですが、「良い(いい)」は「いくない」ではなく「よくない」となり例外です。
選択肢3
楽しい(tanosi-i) → 楽しくない(tanosi-kunai)
難しい(muzukasi-i) → 難しくない(muzukasi-kunai)
きれい(kirei) → きれいでない(kirei-denai)
「楽しい」「難しい」はイ形容詞で、「きれい」はナ形容詞です。イ形容詞の否定形の作り方は「イ形容詞語幹+くない」、ナ形容詞の否定形の作り方は「ナ形容詞語幹+で(は)ない」です。それぞれ活用が違います。
選択肢4
見る(mi-ru) → 見ない(mi-nai)
出掛ける(dekake-ru) → 出掛けない(dekake-nai)
できる(deki-ru) → できない(deki-nai)
「見る」「出掛ける」「できる」は全て一段動詞です。一段動詞の否定形の作り方は動詞末尾の「る」を「ない」に変えるだけ。「見ない」「出掛けない」「できない」と全て同じ活用をします。
したがって答えは4です。
問2 応答表現「いいえ」の用法
「いいえ」の使い方についての問題です。
選択肢1
「あなたは学生ですか?」のような真偽疑問文には「いいえ」と答えることができますが、「どこに行きますか?」のような疑問詞が含まれる疑問詞疑問文に「いいえ」と応答することはできません。この選択肢は間違い。
選択肢2
相手の質問「あなたは学生ですか?」に対しては「いいえ、社会人です」のように後件が肯定形でも、「いいえ、学生ではありません」のように肯定形であっても大丈夫。この選択肢は正しいです。
選択肢3
相手の質問「あなたは学生ですか?」に対しては「いいえ、学生ではありません」と否定的応答にも用いることはできますが、話題転換に「いいえ」を使えるということはないです。
話題転換は「ところで」「そういえば」などがあり、「ところでこの間の話どうなった?」などと使います。この文脈で「いいえ」は使えません。この選択肢は間違い。
選択肢4
相手の質問「あなたは学生ですか?」に対して「いいえ」を用いることはできますが、相槌に「いいえ」は使えません。通常相槌は「はい」「うん」「そうですね」などです。この選択肢は間違い。
答えは2です。
問3 否定の焦点
1 「じゃありません」の否定の焦点は「一人で生きている」
2 「じゃありません」の否定の焦点は「電車で」
3 「じゃありません」の否定の焦点は「わざと」
4 「じゃありません」の否定の焦点は「お金が欲しくて」
選択肢1だけが下線部を否定していません。
答えは1です。
問4 二重否定の構文が持つ意味やニュアンス
文章中にある「楽しくなくはない」や「面白くないわけじゃない」などが二重否定の構文です。
「楽しくなくはない」は「楽しい」を2回否定しているので素直に意味を取ると「楽しい」ですが、決して100%楽しいと言っているわけではありません。
選択肢1
否定文「楽しくない」は明らかな否定、二重否定文「楽しくなくはない」は2度否定しているので否定×否定で主たる意味は肯定です。否定文よりも否定のニュアンスが強いということはありません。この選択肢は間違い。
選択肢2
肯定文「楽しい」は明らかな高低、二重否定分「楽しくなくはない」は2度否定しているので主たる意味は肯定とはいっても、肯定文「楽しい」ほど肯定の度合いは強く感じられません。肯定文のほうが肯定のニュアンスが強いのでこの選択肢は間違い。
選択肢3
「楽しくなくはない」は2度の否定で主たる意味は肯定「楽しい」ですが、少し楽しくないほうに傾いているようなときに使います。消極的な肯定と言ってもいいかな。つまり完全な肯定ではなく、否定のニュアンスを含むのが二重否定構文の特徴です。
否定文「楽しくない」よりも肯定の意味に近いのは事実。この選択肢が答え。
選択肢4
解説後回し…
したがって答えは3です。
問5 語用論的に適切ではない応答
下線部Eにある「語用論的に適当、不適当」とは、状況に応じて自然な表現を使えているかどうかのことです。次の例を見てください。
(1) 水を飲みますか? - いえ、大丈夫です。ありがとうございます。
(2) 水を飲みますか? - 私は飲みません。ありがとうございます。
例えば「水を飲みますか?」と聞かれて否定的応答をする場合、母語話者は「いえ、大丈夫です」のような表現を用います。意味的には「私は飲みません」「結構です」に相当する表現なんですが、かといって(2)のように「私は飲みません」と直接言ってしまうと不自然です。文法的には正しくても、状況に応じて自然な表現を用いることができていないので語用論的に不適当になります。
選択肢からこのような例を探しましょう。
選択肢1
許可「~てもいいです」の否定として導入されるのは禁止「~てはいけません」です。
「このペンを使ってもいいですか」への否定的応答には「すみません」「ごめんなさい」「私も使うんです」などと答えるのが語用論的に適切ですが、「このペンを使ってはいけません」というと語用論的に不適切になります。文法的には正しいけど、その状況ではあまり使わない。これが答え。
選択肢2
「~です」の否定形は「~ではありません」です。
「大学生ですか?」に「大学生ではありません」と答えるのは自然です。
選択肢3
「~たことがありますか」の否定形は「~たことがありません」です。
「見たことがありますか?」に「見たことがありません」と答えるのは自然です。
選択肢4
「~ることができますか」の否定形は「~ることができません」です。
「運転することができますか?」に「運転することができません」と答えるのは自然です。
したがって答えは1です。
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