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令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題12解説

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令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題12解説

問1 公用語

 各国の公用語を調べてみると…

 1 カナダ(英語、フランス語)
 2 タイ(タイ語)
 3 ドイツ(ドイツ語)
 4 ブラジル(ポルトガル語)

 カナダだけ2つ公用語があります。
 答えは1でした。

問2 スティグマ

 スティグマとは、周囲の人からの信頼を失ったり、侮辱されたり、差別されたりする原因となる個人の属性のことです。
 たとえば、ある人が身体部位に欠損が見られたり、性格が歪んでいたり、髪型や色が奇抜すぎたりすると、それがスティグマとなって周囲から非博愛的な反応をされることがあります。

 1 帰属意識
 2 ???
 3 これが答え
 4 ステレオタイプ

 選択肢3は社会的に差別される要因となります。ある人がその社会の多数派とは違って外見、言語、肌の色、国籍などが異なっていた場合、その人およびその人のアイデンティティは否定的な評価を受け、差別につながる可能性があります。
 答えは3です。

問3 少数派の言語権

 社会的に少数派の人々が使う言語はその国・地域において劣勢。多数派の言語を使うように強制されたり、多数派言語の教育を受けさせられたりということもあります。そうすると少数派の人たちが少数派言語を使う権利を侵害することになります。人には好きな言語を使う権利(言語権)があるとする考え方においては、このような状況は改善しなければいけません。

選択肢1

 多数派言語の方言使用を制限しても少数派言語を守るのには繋がりません。

選択肢2

 標準語にはどうせ多数派言語が採用されるので、少数派言語を守ることに繋がらないでしょう。

選択肢3

 正しいです。少数派言語を習得する機会を与えることは少数派言語を守ることに直接つながります。

選択肢4

 平等を重視するのであれば、多言語に対応すべきだと思います。

 したがって答えは3です。

問4 「外来語の表記」

 この問題は「文化庁 | 国語施策・日本語教育 | 国語施策情報 | 内閣告示・内閣訓令 | 外来語の表記」からの出題です。

選択肢1

複合した語であることを示すための,つなぎの符号の用い方については,それぞれの分野の慣用に従うものとし,ここでは取決めを行わない。
〔例〕 ケースバイケース ケース・バイ・ケース ケース―バイ―ケース

 「・」や「―」を用いてもいいし、無くてもいいです。

選択肢2

外来語や外国の地名・人名は,語形やその書き表し方の慣用が一つに定まらず、ゆれのあるものが多い。この用例集においても,ここに示した語形やその書き表し方は,一例であって,これ以外の書き方を否定するものではない。なお,本文の留意事項その2に両様の書き方が例示してある語のうち主なものについては,バイオリン/ヴァイオリンのような形で併せ掲げた。

 原音に近い表記を用いるのではなく、バイオリンもヴァイオリンも正しく、またそれ以外の書き方についても否定していません。

選択肢3

 「ハンカチ」と「ハンケチ」,「グローブ」と「グラブ」のように,語形にゆれのあるものについて,その語形をどちらかに決めようとはしていない。

 使用頻度に関係なく、ハンカチもハンケチも正しいです。

選択肢4

「ギリシャ」「ペルシャ」について「ギリシア」「ペルシア」と書く慣用もある。

 正しいです。

 したがって答えは4です。

問5 やさしい日本語

 『<増補版>「やさしい日本語」作成のためのガイドライン』のⅢ-1⃣から「『やさしい日本語』の作成ルール」があり、こちらから出題されています。

選択肢1

 6ページには「1文を短くして、文の構造を簡単にしてください」とあります。この選択肢は正しいです。

選択肢2

 6ページ「1文を短くして、文の構造を簡単にしてください」に反します。

選択肢3

 5ページに「難しいことばを避け、簡単な語彙を使ってください」とあります。具体的にはJLPT N3、N4(最も初級)の語を使うとされていて、「危ない」はこのレベルに該当します。「危険」よりは簡単。この選択肢は正しいです。

選択肢4

 「やや」はどのくらいややなのか曖昧。7ページ「あいまいな表現は、避けてください」に反すると思います。だから避けたほうがいい。この選択肢は正しいです。

 答えは2です。

 予備リンク:<増補版>「やさしい日本語」作成のためのガイドライン




コメント

コメント一覧 (2件)

  • いつもお世話になっております。

    問2の「スティグマ」について、疑問があります。
    「スティグマとは、社会的に差別されることになる要因のことです。」とありますが、問題の選択肢では「偏見により社会的に否定的な評価を与えられたアイデンティティ」となっています。

    アイデンティティと聞くと「自己をどうとらえるか」というイメージがあり、差別の「要因」とは少し異なるように感じます。差別の行為者や社会全体の風潮や観念のことを指すのか、対象者(被害者)の精神状態や心理を指すのか、あるいは両方のことか、考え方によっては2や4も正しいと思いました。

    スティグマの語源は「烙印」と知りましたが、烙印にしろ肌の色、言語、外見にしろ、自身に対するイメージである「アイデンティティ」というよりは、他者からどうみなされるかに関わる「パーソナリティ」だとか「キャラクター」が適切だと思います。

    詳しく調べもせず疑問だけぶつけてしまいすみません。

    • >すてぃ熊さん
      例えば、肌の色が何色だからという理由で偏見・差別を受けたりすると、自分のアイデンティティが傷つくことがあります。それが「偏見により社会的に否定的な評価を与えられたアイデンティティ」です。
      傷ついて自分に自信が持てなくなってしまったりした場合、その様子がスティグマとなり、また差別を受けたりするかもしれません。

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