平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3D解説
(13)複合動詞
複合語のうち、後部要素が動詞のものを「複合動詞」って言います。複合動詞の前部要素は「逃げ回る」「飛び越す」のように動詞のものもあれば、「口ずさむ」「巣立つ」「恋愛する」のように名詞の場合もあるし、「若返る」のように形容詞の場合もあります。
1 代名詞「これ」等が複合動詞の前部要素になる例は… たぶんない
2 「口ずさむ」みたいな複合動詞は前部要素が名詞「口」なので、あります。
3 陳述副詞が前部要素になるのはないはず。
4 連体詞は名詞修飾専用の語だから、複合できない。
答えは2です。
(14)複合動詞の前項と後項
前項か後項のいずれかが実質的な意味を失っているものが ア 、前項と後項どっちも実質的な意味が残っているものが イ です。各選択肢を見てみます。
選択肢1
「差し戻す」の前項「差す」は鋭いもので突くみたいな意味がありますが、「差し戻す」においてその意味はないので実質的な意味を失っています。後項「戻す」はそのままの意味を保持しています。
「取りかかる」の前項「取る」は物を手で持つの意ですが、「取りかかる」ではその意味で使われていないので実質的な意味を失っています。後項「かかる」はもはや第一義が何か分からないんで実質的な意味を失ってると考えてよさそう。
選択肢2
「切り開く」の前項「切る」は切断で、「切り開く」においても切断の意味を保持しています。後項「開く」は閉じていたものを広げるみたいな意味があり、これも実質的な意味を保持しています。
「出回る」の前項「出る」は外側への移動で、実質的な意味で使われています。後項「回る」は回転を表しますが、「出回る」においては回転の意味ではないので実質的な意味を失っています。
選択肢3
「読み切る」の前項「読む」は文字の意味をとることで、そのままの意味で使っています。後項「切る」の第一義は切断ですが、「読み切る」において切断の意味はないので実質的な意味を失っています。
「食べ残す」の前項「食べる」は食べ物を口に入れることを指し、「食べ残す」においてもその意味で使われています。「残す」は残るようにすることを表し、そのままの意味で使われています。
選択肢4
「分け与える」の前項「分ける」は分配を意味し、「分け与える」においてもそのままの意味で使われています。後項「与える」は授受を意味しますが、こちらもそのままの意味で使われています。
「送り届ける」の前項「送る」は授受を意味し、「送り届ける」においても授受の意味で使われています。「届ける」は物を送ることを意味しますが、これも実質的な意味で使われています。
前項も後項も実質的な意味を失っていない場合「~て~」に言い換えることができます。例えば「切り開く」「食べ残す」「分け与える」「送り届ける」は「切って開く」「食べて残す」「分けて与える」「送って届ける」といってもいいですが、実質的な意味を失っている「差し戻す」「取りかかる」「出回る」「読み切る」は「*差して戻す」「*取ってかかる」「*出て回る」「*読んで切る」というと変。こういう統語的操作で意味を失っているかどうか判断することもできます。
答えは3です。
(15)造語法
「乗り入れる」から「乗り入れ」を作るような造語法は転成と言います。
答えは3です。
(16)前項、後項ともに動詞の複合動詞
(14)の8つの複合動詞を参考に解いていきます。一つ例外を見つけると選択肢を絞れます。
選択肢1
「取りかかる」は「~に取りかかる」のようにニ格をとりますが、前項「取る」は「~を取る」のようにヲ格をとります。同じとは限りません。
選択肢2
「取りかかる」の前項「取る」は他動詞、後項「かかる」は自動詞です。間違い。
選択肢3
「恋愛する」「調査する」などの漢語を用いた動詞では、前項に漢語動詞が来てます。
後項に漢語動詞が来る例はたぶんない。
選択肢4
「取る」は「る」の前にアクセント核があり、「かかる」は「る」の前にアクセント核があります。これらが合わさった「取りかかる」は「る」の前にアクセント核があります。一語になったことでアクセントも変わっています。元々のアクセントを保持するとは限りません。
答えは4です。
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