基本語彙と基礎語彙について
基本語彙
基本語彙とは、「ある方面で、ある目的の上にたって選定されるべき功利性をもった語彙団」(真田 1977: 115)のことです。具体的には接客で用いる語彙、児童向けの絵本などで用いる語彙、日本語教育のための語彙など、様々な領域でそれぞれに求められる語彙群を指します。このように基本語彙は目的と用途に応じて決められるものであって、そうでなければ基本語彙の内容は決められません。また、基本語彙は現実社会での言語実態についての実証的な語彙調査から得られます。
日本語教育における基本語彙としては、『日本語教育のための基本語彙調査』及び『『日本語教育のための基本語彙調査』データ』が参考になります。5000~6000語が基本語彙として選定されています。
基礎語彙
真田(1977: 117)は基礎語彙を「特定言語の中に、その中枢的部分として構造的に存在する語の部分集団」と定義し、基礎語彙と呼ばれる語彙は次のような5つの性格を持つとしています。
(1)その語の使用を禁ずるとしたら、他の語では代用できず、したがって文章をつづることができないか、他の語で代用しにくく、しいて言い換えるとその語を使うよりかえって不便かである。
(2)それらの語を組み合わせて、他の複雑な概念や新しく命名が必要になった概念などをさす語が作りやすい。また現に、そうしてできた語がたくさんある。
(3)それらの語に属しないような語の説明をする時も、結局はそれらの語を操作してまかなうことが大概はできる。
(4)そういう語の多くは、昔から使われてきたし、また将来も使われるであろう。
(5)他方面の話題を通じてよく使われる。
具体的な基礎語彙は示されていませんが、例えば「寝る」のような語は他の語で代用しにくい性格を持ち、(1)を満たします。また、「昼寝」「雑魚寝」「寝正月」のように「寝る」を使って他の概念を表す語を作ることもできます(2)。さらに、「いびき」を説明した「寝ているときに呼吸と一緒に出る大きな音」のように、「寝る」が特定の語の説明に現れることもあります(3)。このような語は基礎語彙とみなせそうです。
参考文献
国立国語研究所(1984)『日本語教育のための基本語彙調査(国立国語研究所報告78)』秀英出版
真田信治(1977)「基本語彙・基礎語彙」『岩波講座日本語9 語彙と意味』87-132頁.岩波書店

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