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平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3B解説

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平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3B解説

(6)「テイル形」に関する記述

選択肢1

 (1)   扉が閉まっている  (自動詞:閉まる)
 (2) 彼が扉を閉めている   (他動詞:閉める)

 このようにしてみると(1)は自動詞、(2)は他動詞で対立しているように見えますが、対立しているのは「閉まる」と「閉める」であって、「ている」とは関係ありません。
 自他の対立があるのは動詞。この選択肢は間違い。

選択肢2

 (3) ペンがある。 (無情物)
 (4) ネコがいる。 (有情物)

 有生・無生の対立があるのは存在表現です。日本語の存在表現は無生物の場合は「ある」、有生物の場合は「いる」を使います。「ている」は有生・無生に関わりません。この選択肢は間違い。

選択肢3

 (5) 彼はご飯を食べている。 <進行中>
 (6) 会場に着いたとき、コンサートは始まっていた。 <完了>

 テイル形は(5)のように動作の<進行中>を表すのが代表的な用法ですが、(6)のように<完了>を表すこともあります。(6)は会場に着いたときにはコンサートはすでに<始まる>という動作が完了していたことを表しています。
 この選択肢が答えです。

選択肢4

 (7) 私のペン
 (8) 私が持っているペン

 所有を表す形式として代表的なのは「の」です。そのほか、「持つ」「保有する」「有する」などの所有を表す動詞を使えば、その対象を主体が所有していることを表せます。
 「ている」には所有を表す用法はありませんからこの選択肢は間違です。

 よって答えは3です。

(7)アスペクトを表す用法の「ばかり」

 アスペクトとは、述語が表す動きの動作局面のことです。例えば「食べる」という動詞で考えてみます。

 (1) 食べるところだ。   <開始直前>
 (2) 食べ始めた。     <開始>
 (3) 食べている。     <進行中>
 (4) 食べ終わるところだ。 <完了直前>
 (5) 食べ終わった。    <完了>

 「食べる」という動詞は人が食べ物を口に運ぶ動きを表します。しかしその動きには様々な局面があって、例えば(1)のような<開始直前>の局面。人が食べ物を口に運ぼうとしている局面を表したい場合は、日本語では動詞辞書形に「ところ」をつけます。<進行中>、つまり今まさに食べ物を口に運び続けている局面を表したい場合はテイル形にします。このように”動き”には様々な局面があり、その局面をアスペクト(相)と呼んでいます。また、特定の動作局面を表す表現をアスペクト表現、アスペクト形式と言います。上記の場合は「ところ」「始める」「ている」などがアスペクト表現です。

 この問題はアスペクトを表す「ばかり」を探す問題です。「ばかり」が動きの特定の局面を表しているものを探しましょう。

 1 比喩の「ばかり」 
 2 限定の「ばかり」 
 3 原因の「ばかり」 
 4 動作の<開始直後>を表す「ばかり」

 選択肢4だけアスペクト表現です。「起きる」という動作が開始されてすぐの局面を表しています。
 したがって答えは4です。

(8)終結のアスペクト

 ここでいう<終結>は<完了>と考えていいです。
 動きの<完了>の局面を表すアスペクト表現が含まれているかどうかを見ていきます。

選択肢1

 「~ておく」はあらかじめ物事を済ませることを表します。動作の<直前>を表すアスペクト表現です。

選択肢2

 「~きる」は動作の完了(終結)を表すアスペクト表現です。これが答え。

選択肢3

 この文の「~てくる」は<進行中>を表すアスペクト表現です。

選択肢4

 「~つつある」は何らかの動作や状態がある一定の方向へ持続的に変化していることを表す、<進行中>のアスペクト表現です。

 答えは2です。

(9)動き動詞

 問題文を読むと、   ア   に入るものは動き動詞(非状態動詞)です。動き動詞とは、そのことばどおり動きを表す動詞のことです。動きがあるかないかをどのように判別するかというと、アスペクト表現がつけられるかどうかが最も良い方法です。

 (1) ご飯を食べ終わったところだ。      (動き動詞:非状態動詞)
 (2) 彼と話し終わったところだ。       (動き動詞:非状態動詞)
 (3) *りんごが机の上にあり終わったところだ。 (動きを表さない動詞:状態動詞)
 (4) *成績が優れ終わったところだ。      (動きを表さない動詞:状態動詞)

 (1)(2)の動詞「食べる」「話す」は<完了直後>の局面を表す「~終わったところ」をつけることができますが、(3)(4)の「ある」「優れる」はそれができません。同じ動詞なのに。
 そもそもアスペクト表現は動きの局面を表すものです。だから動きがない動詞には接続することができません。「食べる」「話す」は動きがあるのでアスペクト表現がつけられ、「ある」「優れる」は動きがないのでアスペクト表現がつけられません。

 このように、アスペクト表現がつけられれば動き動詞(非状態動詞)、つけられなければ動きを表さない動詞(状態動詞)と判別します
 じゃあ、上の例と同じように各選択肢の動詞に<完了直後>の局面を表す「~終わったところ」をつけてみましょう。

選択肢1

 (1) *感じ終わったところだ。 (知覚動詞)
 (2) *聞こえ終わったところだ。(知覚動詞)
 (3) *心配し終わったところだ。(心理動詞)

 知覚動詞(perception verb)は英語でいう feel, hear, notice などの動詞を指します。日本語なら「感じる」「見つける」「聞こえる」など。心理動詞(psych verb)は worry(心配する)など。
 これら知覚動詞、心理動詞には少なくとも上記の例文でアスペクト表現はつけられませんでした。この選択肢は間違いです。

選択肢2

 (4) 食べ終わったところだ。 (動作動詞)
 (5) 変化し終わったところだ。   (変化動詞)

 動作動詞「食べる」と変化動詞「変化する」にはアスペクト表現がつけられました。   ア   に入るものとしてこれが適当です。

選択肢3

 (6) 私は ご飯を 食べ終わったところだ。    (2項動詞)
 (7) *りんごが 机の上に あり終わったところだ。 (2項動詞)
 (8) 私は 彼に 英語を 教え終わったところだ。 (3項動詞)
 (9) 私は 壁に 飾りを 飾り終わったところだ。 (3項動詞)

 を2つとる動詞を2項動詞、3つ取る動詞を3項動詞と言います。「食べる」は「~が~を」の形で2つの項をとるので2項動詞、「ある」は「~に~が」の形で2つの項を取るのでこれも2項動詞です。(6)(7)の通り、2項動詞でも「食べる」の場合はアスペクト表現がつけられ、「ある」の場合はつけられません。
 なお、3項動詞はどうやらアスペクト表現がつけられるようです。
 3項動詞がつけられても2項動詞はつけられるとは限らないのでこの選択肢は間違いです。

選択肢4

 (10) お肉を噛み切り終わったところだ。 (語彙的複合動詞)
 (11) *ようやく走り切り終わったところだ。(統語的複合動詞)

 嚙み切る、取り出す、垂れ流すのように、複合動詞の後部要素の動詞が本来の語彙的な意味を担っている語を語彙的複合動詞と呼びます。逆に、走り切る、冷え込む、泣き出すのように、複合動詞の後部要素の動詞が本来の意味を失い、文法的な機能を担うようになった語を統語的複合動詞と呼びます。
 語彙的複合動詞「噛み切る」にアスペクト表現「終わったところだ」をつけることはできましたが、統語的複合動詞「走り切る」にはつけられませんでした。「切る」と「終わる」が同じ<完了>の意味を持っていて重複するのでダメのようです。
 アスペクト表現がつけられない例がありますのでこの選択肢は間違いです。

 ということで答えは2です!

(10)副詞が述語のアスペクトの解釈を変更している例

 副詞が述語のアスペクトに影響しているかどうかを見ます。

選択肢1

 (1) こなごなに花瓶が割れている。 <完了>
 (2)      花瓶が割れている。 <完了>

 副詞「こなごなに」があるかないかでアスペクトの解釈が変わるかみると…
 (1)はすでに花瓶が割れている解釈が可能で、「割れる」という動きの<完了>の局面を表しています。
 (2)もすでに花瓶が割れている解釈が可能で、「割れる」という動きの<完了>の局面を表しています。
 副詞「こなごなに」があってもなくても、アスペクトの解釈は変わりません。
 この選択肢が答え。

選択肢2

 (3) ゆっくり幕が下りている。 <進行中>
 (4)     幕が下りている。 <進行中>or<完了>

 副詞「ゆっくり」があるかないかでアスペクトの解釈が変わるかみると…
 (3)は今まさに幕が下りているところを表していて<進行中>を表しています。
 (4)は今まさに幕が下りている<進行中>の解釈もできますし、すでに幕が下りきった<完了>の局面の解釈も可能です。
 副詞「ゆっくり」があるかないかによってアスペクトの解釈が変わっています。

選択肢3

 (5) 次々と当選が確定している。 <進行中>
 (6)    当選が確定している。 <進行中>or<完了>

 副詞「次々と」があるかないかでアスペクトの解釈が変わるかみると…
 (5)は「確定する」という動きの<進行中>の局面を表します。
 (6)は<進行中>の局面も表せますが、当選が確定した<完了>の解釈も可能です。
 副詞「次々と」があるかないかによってアスペクトの解釈が変わっています。

選択肢4

 (7) 毎日牛乳を飲んでいる。 <繰り返し>(習慣相)
 (8)   牛乳を飲んでいる。 <進行中>

 副詞「毎日」があるかないかでアスペクトの解釈が変わるかみると…
 (7)は動作の繰り返される局面を表しています。
 (8)は今まさに飲んでいる<進行中>の局面を表します。
 副詞「毎日」があるかないかによってアスペクトの解釈が変わっています。

 したがって答えは1です。




コメント

コメント一覧 (3件)

  • 初めまして。
    いつもこちらのサイトで勉強させていただいております。

    ★問題3(9)の選択肢3について

    私は「毎日」は頻度の副詞(しばしば、たまに、再びなど事態の発生頻度を表す)と理解しています。

    上記に基づく理解から、選択肢3の解釈は

    「毎日牛乳を飲んでいる」の「~ている」は繰り返しを表すアスペクト。「毎日」を消して「牛乳を飲んでいる」とすると、この「~ている」は進行の状態を表す。副詞「毎日」があるかないかによってアスペクトの解釈が変わっている。

    だと考えております。公式の解説がないので難しいのですが、日本語教育能力検定試験の完全攻略ガイドp73を参考に考えてみました。

    いつもお役立ち情報ありがとうございます。
    大変参考になります。

    • >mkさん
      ご協力ありがとうございました!
      「毎日」は頻度の副詞、確かにそうですね。解説修正しておきました!

  • こんにちは。
    いつも更新ありがとうございます。

    問題6の選択肢4について

    「〇〇持ってる?」(漫画とか家に保管しとく系のもの)
    「うん、(私もそれを)持って(い)るよ。」

    という時は所有ではないのですか?

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