平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3C解説

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平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3C解説

(11)言い換え・例示の接続詞

選択肢1

 (1) 人には承認欲求がある。つまり、認めて欲しいという願望がある。
 (2) 彼は傲慢すぎる。つまり、つまり井の中の蛙だ。

 「つまり」は前述の内容を要約する機能があります。(1)(2)いずれも前述の内容を要約したものが「つまり」の後ろで述べられています。しかし、「つまり」の後ろは必ず比喩を用いるとは限りません。(1)は比喩を用いずにただ平易な言い方にしたもので、(2)では「井の中の蛙」と比喩を使っています。この選択肢は間違い。

選択肢2

 (3) もうこれで満足という時は、すなわち衰える時である。
 (4) 初めて買う人に500円OFFクーポンあり。すなわち500円以下の作品は0円で見れます。

 「すなわち」は説明通り、何か見方を変えて言い換えたりするときに使います。(3)も(4)も前件の見方とは別の見方を後件で述べています。この選択肢が答え。

選択肢3

 (5) 彼は手段を問わず勝ちたいらしい。要するに負けず嫌いだ。
 (6) 挑戦しなければ何も起きない。要するに現状維持である。

 「要するに」は前述の内容を要約する機能がありますが、後件では具体例を挙げるのではなく、趣旨を変えずに別の言葉で短くまとめます。この選択肢は間違い。

選択肢4

 (7) 最近つらい。例えば家事とか残業とか。
 (8) 良い習慣を身に付けたい。例えば運動とか。

 「例えば」は後件で前述の内容を短く言い換えるのではなく、具体例を挙げて説明します。この選択肢は間違い。

 答えは2です。

(12)命令、依頼、意志など幅広い表現を後件に取れる接続詞

 「だから」「それで」「そのため」「そこで」のうち、後件に命令・依頼・意志表現が取れるものはどれか。例として命令表現「~しなさい」、依頼表現「~てくれませんか」、意志表現「~つもりだ」で例文を作ってみます。

選択肢1

 (1)a 遅い時間だ。だから早く帰りなさい。
    b 遅い時間だ。だから早く帰ってくれませんか。
    c 遅い時間だ。だからもうすぐ帰るつもりだ。

 「だから」は以下のように命令、依頼、意志表現全てに使えました。この選択肢が答え。

選択肢2

 (2)a *喉が渇いた。それで、私に水を買いなさい。
    b *喉が渇いたんです。それで、私に水を買ってくれませんか。
    c 高価な買い物をした。それで、今後は節約するつもりだ。

 「それで」は後件に意志表現は来れました。この選択肢は間違い。

選択肢3

 (3)a *雨が降った。そのため、洗濯物を取り込みなさい。
    b *雨が降った。そのため、洗濯物を取り込んでくれませんか。
    c 雨が降った。そのため、洗濯物を取り込むつもりだ。

 「そのため」の後件には意志表現だけ来れました。この選択肢は間違い。

選択肢4

 (4)a *分からない問題があった。そこで、先生に質問しなさい。
    b *分からない問題があった。そこで、先生に質問してくれませんか。
    c *分からない問題があった。そこで、先生に質問するつもりだ。

 「そこで」の後件には命令、依頼、意志のいずれも来れませんでした。「分からない問題があった。そこで、先生に質問した。」だったら良いんですけど。この選択肢は間違い。

 答えは1です。

(13)後続部の談話全体との関係

 接続詞には、順接や逆接など先行部と後続部の関係を示すものもありますが、後続部が談話全体とどのような関係にあるのかを示すものもあります。

選択肢1

 (1) まず野菜を切ります。次にフライパンで炒めます。最後に味を調えます。

 「まず」は、いくつかある過程のうち最初にすることを後続部で示す接続詞です。先行部と後続部の関係を示しているのではなく、談話全体との関係性を表しています。この選択肢が答え。

選択肢2

 (2) 雨が降った。でも出発した。

 「でも」は、前件から予想される結果とは逆の結果になることを示す逆接の接続詞です。先行部と後続部の関係を示すものです。

選択肢3

 (3) 赤点だった。だって難しかったんだもん。

 「だって」は、前件についての理由を説明する接続詞です。先行部と後続部の関係を示すものです。

選択肢4

 (4) 赤点だった。とはいえ自分にしては頑張ったほうだ。

 「とはいえ」は、逆接の確定条件を表す接続詞です。先行部と後続部の関係を示します。

 答えは1です。

(14)「すると」の口頭表現

 (1) 給餌機の音が鳴った。すると猫たちがすぐ走ってきた。  <出来事の継起>
 (2) 門限が過ぎた。すると、すぐ母から電話がかかってきた。 <出来事の継起>

 「すると」は文章表現では出来事の継起を表すと文章中に書いています。それは(1)(2)のような例を見ると分かります。しかし、口頭表現ではそうではない用法があるようです。

 (3) 「月曜日は休みとった」「すると、今週末は三連休?」
 (4) その口ぶり。すると、全て知ってたんですか?

 これは、相手の発言を受けて話し手の判断が続くことを示す表現です。
 答えは4

(15)「もしくは」と「か」の文法的な違い

 「もしくは」と「か」は前件と後件から選択することを表す接続詞です。その違いは何でしょう、という問題。

選択肢1

 「もしくは」も「か」も、「延期もしくは中止」「続行か中止」のように2つの並列はできます。3つ並列させたい場合は「続行、延期もしくは中止」「続行か延期か中止」のように言えば大丈夫。4つの場合でさえも「続行、延期、中止もしくは中断」「続行か延期か中止か中断」で大丈夫。「か」は二者択一の場合にしか使えないわけではないのでこの選択肢は誤り。

選択肢2

 「もしくは」は確かに名詞、動詞、格成分などの要素を並列させられます。

 【名詞】延期もしくは中止
 【動詞】延期する、もしくは中止する
 【格成分】学校で、もしくは家で

 でも「か」も同じことができます。

 【名詞】延期か中止か
 【動詞】延期するか中止するか
 【格成分】学校でか、家でか

 名詞の並列にしかできないわけじゃないです。この選択肢は誤り。

選択肢3

 続行、もしくは中止
 続行か中止か。

 「もしくは」はどちらかというと後続部を特に強調し、「か」は先行部を強調します。この選択肢が答え。

 だからこの選択肢は正しいです。

選択肢4

 続行、もしくは中止
 続行か中止か。

 選択肢3とは逆のことを言っています。「もしくは」は後続部に情報の焦点(強調)があり、「か」は先行部に情報の焦点があります。だからこの選択肢は間違い。

 答えは3です。




コメント

コメント一覧 (5件)

  • (15)について疑問を書かせてください。
    「続行、延期もしくは中止」だと英語でいうA,B and Cのような形で
    綺麗だと思い、「続行か延期か中止か」だとA and B and C のように
    表現がくどく、「場合にしか用いることはできない」は誤りにせよ、
    上記理由で1を選択しました。
    3番が正しいということですが、
    確かに、「A、もしくはB」だとBと結びつきがあるように思います、
    ただ「AかB」は、AもBも等しく結びつきがあるように思えました。
    そもそも「構造的な結びつきが強く」の意味がわかりませんでした。

    ある方にとっては一般常識的なのかもしれません。
    しかし自分は回答を見てもちんぷんかんぷんです。

  • こんにちは。

    (15)は問題文中にあるように、「接続詞」と「並列助詞」という品詞の違いとして捉えると、比較的容易に正解である3番にたどり着くのかな〜と思ったのですが。。。

    • >そら豆さん
      どのように考えられたのか、もう少し詳しく説明していただけませんか。
      お願いいたします。

  • 私の考え方が正しのか分かりませんが、こんな風に考えました。

    まず、それぞれの意味の違いを考えた時、まったく分かりませんでした。
    そこで、接続詞と助詞の品詞の違いに着目し、
    四つの中から消去法で選びました。

    まだまだ不勉強なのでたまたま正解したのかも知れませんが、
    ニュアンスが似ている語の比較には、
    品詞の違いも問題を解く糸口になるのかな、と思いました。

    以上、ざっくりとした説明で申し訳ありません。

  • しつこくてすみません。
    もう少し頑張って説明しますと、「もしくは」は接続詞で、接続詞は先行部だけでなく
    後続する内容と文の構造的な繋がりが強い。
    「か」は並列助詞、つまり助詞ということは、先行する名詞との繋がりが強い。
    以上のことから、品詞に着目して答えを導きました。

    結果的に、おしゃっていることと同じ結論に至りましたが、
    続行もしくは中止。⇒ 中止を強調。
    続行か中止か。⇒ 続行を強調。

    上記二つの文を比較した場合、強調していることが変わる、ということなんですね。
    今までどちらの文も強調の程度は同じだと思っていました。

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