平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題11解説
問1 対者敬語
対者敬語とは、その場にいる人物(素材)に対する敬語ではなく、自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁重に述べる敬語です。謙譲語Ⅱと丁寧語が対者敬語に該当します。
尊敬語 | 相手側又は第三者の行為・ものごと・状態などについて、その物を立てて述べるもの。 例)いらっしゃる、おっしゃる、なさる、召し上がる、お使いになる、御利用になる、読まれる、始められる、お導き、御出席、(立てるべき人物からの)御説明、お名前、御住所、(立てるべき人物からの)お手紙、お忙しい、ご立派 |
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謙譲語Ⅰ | 自分側から相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて、その向かう先の人物を立てて述べるもの。 例)伺う、申し上げる、お目に掛かる、差し上げる、お届けする、御案内する、(立てるべき人物への)お手紙、御説明 |
謙譲語Ⅱ(丁重語) | 自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。 例)参る、申す、いたす、おる、拙著、小社 |
丁寧語 | 話や文章の相手に対して丁寧に述べるもの。 例)です、ます |
美化語 | ものごとを、美化して述べるもの。 例)お酒、お料理 |
選択肢1
「差し上げる」は「あげる」の謙譲語Ⅰにあたります。(素材敬語)
選択肢2
「存じ上げる」は「知る」の謙譲語Ⅰにあたります。(素材敬語)
選択肢3
「伺う」は「行く/訪問する/聞く」の謙譲語Ⅰにあたります。(素材敬語)
選択肢4
「申す」は「言う」の謙譲語Ⅱにあたります。(対者敬語)
選択肢4だけが謙譲語Ⅱ、つまり対者敬語です。
答えは4。
問2 絶対敬語と相対敬語
日本語はかつて 上下関係 を重視した敬語の使い方(絶対敬語)をしていましたが、現代では上下関係に加え、 親疎関係 も考慮する敬語の使い方(相対敬語)へと移り変わっています。詳しくは各リンク先をご覧ください。
ということで答えは3です。
問3 尊敬語の誤用
選択肢1
立てるべき人物である「先生」の行為「相談する」に尊敬語の形式「ご~なさる」をつけています。この文に誤用は見られません。
選択肢2
立てるべき人物である「先生」の状態「忙しい」に尊敬語の形式「~ていらっしゃる」をつけています。この文に誤用は見られません。
選択肢3
立てるべき人物である「先生」の行為「指導する」に尊敬語の形式「ご~くださる」をつけています。この文に誤用は見られません。
選択肢4
立てるべき人物である「先生」の行為「来る」は、「いらっしゃる」や「来られる」などの尊敬語に形式にすべきですが、この文は謙譲語Ⅱ「参る」を用いています。謙譲語Ⅱは自分の行為に使うものなので、立てるべき人物の行為に「参る」を使うのは誤用とみなされます。
答えは4です。
問4 謙譲語Ⅰ
1 「いらっしゃる」は相手の行為 ⇒ 尊敬語
2 「お届けする」は相手に向かう自分の行為 ⇒ 謙譲語Ⅰ
3 「ご利用する」は相手の行為 ⇒ 尊敬語
4 「ご覧になる」は相手の行為 ⇒ 尊敬語
答えは2です。
問5 美化語
美化語は物事を美化して述べます。つまり美化語には相手が必要なく、物事を綺麗に言うだけです。
1 美化語(「祝儀」を綺麗に言ってるだけ)
2 「立派」は相手の状態なので「ご立派」は尊敬語
3 「説明」は相手に向かう自分の行為なので「ご説明」は謙譲語Ⅰ
4 「住所」は相手の物事なので「御住所」は尊敬語
答えは1です。
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