平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題10解説

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平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題10解説

問1 処理可能性理論/学習可能性理論 (Processability Theory)

 処理可能性理論/学習可能性理論
 ピーネマン (Pienemann)が提唱した仮説で、人は言語処理レベルが単純なものから習得し、複雑なものほど後に習得されるというもの。語は最も単純で習得しやすいが、句や文になると複雑になるので習得しにくいとされている。
 
 選択肢4がそうです。小さい単純なものから習得し、徐々に複雑なものへ習得が進んでいきます。
 したがって答えは4です。

問2 言語適性

 言語適性とは、外国語を学ぶために必要とされる能力のことです。簡単に言うと、言葉を学ぶときのセンスがあるかどうか。

選択肢1

 これはカナルとスウェインが提唱した、コミュニケーションを行うための4つの能力のうちの一つ、社会言語能力です。

談話能力 言語を理解し、構成する能力。会話の始め方、その順序、終わり方などのこと。
方略能力
(ストラテジー能力)
コミュニケーションを円滑に行うための能力。相手の言ったことが分からなかったとき、自分の言ったことがうまく伝わらなかったときの対応の仕方のことで、ジェスチャー、言い換えなどがあてはまる。
社会言語能力
(社会言語学的能力)
場面や状況に応じて適切な表現を使用できる能力。
文法能力 語、文法、音声、表記などを正確に使用できる能力。

選択肢2

 これは言語学習のセンスが問われるので言語適性と言えます。

選択肢3

 これは性格によるものが大きいと思います。

選択肢4

 認知スタイルの「あいまいさへの寛容度」の話をしてます。認知スタイルとは、情報の知覚、符号化、体制化、記憶などに対して個人が一貫して示す方法のことです。これは話が長くなるので、とりあえず「あいまいさへの寛容度」についてだけ述べます。
 何か学習するとき、自分が理解できない状態に対する耐性が高いタイプと低いタイプがいます。例えば聴解問題でひとたび理解できない単語や文が来ると、もうそれに耐え切れず諦めてしまうみたいなタイプは「あいまいさへの非寛容」と言います。こういうのに耐えながら、苦しみながら、一つずつ解き明かしていこうとするのが「あいまいさへの寛容」です。

 
 選択肢の中で最もセンスが問われるのは2でしょう。答えは2です。

問3 ビリーフ

 ビリーフ(学習ビリーフ)とは、どのようにすれば言語を習得できるかという考え方、信念のことです。教師のビリーフと学習者のビリーフが一致すると学習にはプラスに働きます。例として、教師は言語形式を重要視し、学習者は意味を重要視していたら、お互いのビリーフは異なっているので学習に対してマイナスに働く可能性があります。

 1 ビリーフはその人の考え方なので、正しい場合もあるし間違っている場合もあります。ビリーフに沿ったやり方を取ったからと言って必ずしも効率的とは限りません。
 2 経験を重ねると考え方も当然変わります。
 3 学習者のビリーフは、学習方法に当然影響します。
 4 上達するにはネイティブと会話するのが一番いいと思っていても、近くにネイティブがいない場合もあります。ビリーフと行動は必ずしも一致しません。

 したがって答えは1です。

問4 適性処遇交互作用

 適性処遇交互作用とは、学習者の適性と処遇(指導)には交互作用があり、その2つの組み合わせにより学習効果に差が出るというものです。

 1 学習者の特性と教師の指導法が影響し合うのは正しいですが、双方が徐々に変化するわけじゃない。
 2 学習者の特性が徐々に変化していくわけではないです
 3 適性処遇交互作用の記述
 4 学習者と教師の特性というのが間違い。

 答えは3です。

問5 補償ストラテジー

直接 記憶 記憶するために用いる暗記、暗唱、復習、動作などの記憶術。新しい知識を蓄え、蓄えた知識の想起を支えるもの。
認知 記憶した情報の操作や変換に用いるストラテジー。リハーサルしたり、既知の要素を組み合わせて長い連鎖を作ったり、分析・推論するなど。または、より理解を深めたりアウトプットするためにメモ、要約、線引き、色分けなどをして知識を構造化するなど。
補償 外国語を理解したり発話したりする時に、足りない知識を補うために用いるストラテジー。知識が十分でなくても推測やジェスチャーなどによって限界を越え、話したり書いたりできるようになる。
間接 メタ認知 学習者が自らの学習を管理するために用いるストラテジー。自分の認知を自分でコントロールし、自ら学習の司令塔となって学習過程を調整したり、自分自身をモニターする。
情意 学習者が学習者自身の感情、態度、動機などの情意的側面をコントロールし、否定的な感情を克服するためのストラテジー。自分を勇気づけたり、音楽を聴いてリラックスしたりするなど。
社会的 学習に他者が関わることによって学習を促進させるストラテジー。質問したり、明確化を求めたり、協力したりするなど。

 補償ストラテジーはレベッカL.オックスフォードが提唱した言語学習ストラテジーの一つです。目標言語の不足した知識を補うために行う推測などが該当します。

 1 他人が関わっているので社会的ストラテジー
 2 推測ときたら補償ストラテジー
 3 感情面のケアがあるので情意ストラテジー
 4 理解を深めようとしてるので認知ストラテジー

 答えは2です。

 




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