平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題8解説
問1 トータル・フィジカル・レスポンス(TPR)
教師の指示に体を動かして反応する活動といえば、TPR(全身反応教授法)。たとえば「立ってください」とか「座ってください」とか教師が指示して、その指示を聞いた学習者は指示にしたがって体を動かし反応します。この教授法は幼児の母語習得過程を参考にしています。赤ちゃんは周りの大人のことばに反応してことばを覚えていくものと捉えているようです。
1 これが答え。幼児の母語習得過程と同じように、話すよりも聞くを優先します。
2 ???
3 TPRは第二言語習得は第一言語習得と同じだと考えるので、幼児の母語習得過程を参考にしています。これは間違い。
4 ???
答えは1です。
問2 文型を聞き取って書き出す練習の限界
選択肢1
リスニング教材なのでいろんな人が登場し、会話する様子が聞けます。話している人物は固定されていないし、多様な人物の声を聞き取る練習はできます。この選択肢は間違い。
選択肢2
間違いです。文型を聞き取って書き出す練習だから全て聞き取る必要はありません。
選択肢3
正しいです。文型を聞き取る練習だけをするとそこだけ聞けば正解になっちゃうので、その他の部分の意味については分からないことがあります。
選択肢4
文型を聞き取って書き出す練習だからその文型に注意が向けられます。未知語には注意を向けられにくいです。
答えは3です。
問3 「習っていない言葉があるので分かりません」という学習者へのアドバイス
習っていない言葉が出てくると諦めてしまう学習者には、内容を推測させる練習を行わせるべきです。習っていなくても、推測によって文の理解ができるようになるかもしれません。
「推測」というキーワードが含まれている選択肢2が答え。
答えは2です。
問4 知らない言葉がたくさん出てくる場合の対応
知らない言葉がたくさん出てきたとき、諦めることはありません。できることはいろいろあります。
1 分からない言葉を分からないままにしないで相手に聞くのは良い作戦です。
2 分からない言葉の意味を相手に確認するのも良い作戦です。
3 理解しているふりをするとその先の会話が分からなくなっちゃうので避けたほうがいい。
4 今のことばが分からなかったことを相手に伝えると、分かりやすい言い方に言い換えてくれるかも。
答えは3です。
問5 在住日本人を教室に呼ぶ
日本人を教室に呼ぶことによって、日本人と接触する場面が少ない学生が得られる有用な情報について考えます。
1 挨拶表現の練習は有用な情報だけどコミュニケーションの機会は得られなそう。
2 せっかく日本人を教室に呼んだので、教科書の会話文を用いるのはもったいないです。
3 正しいです。日本での生活で困ったことなどを聞くことができます。
4 有用な情報かもしれませんが、説明をしてもらうだけではコミュニケーションの機会とはいえません。
答えは3です。
コメント
コメント一覧 (2件)
こんにちは。こちらのサイトをいつも本当に頼りにしております。
お忙しい中と存じますが、質問失礼いたします。
平成23年度 試験Ⅲ 問題8 問5の3の解説ですが、
設問に「海外の異なる大学で日本語教育を行っており」とありますので、
解説の「日本での生活で困ったこと」の部分は違うのではないかと思うのですが、私の理解不足でしょうか。
ご教授願います。
>千紘さん
コメントありがとうございます。
教師1から4は、海外の異なる大学で日本語教育を行っています。そしてそれぞれの教師が学生の聴解力を養成するために行っている授業について述べています。
教師4は、同じ海外の都市に住んでいる”在住日本人”を授業に呼んで、彼らが現地で困っていることを学生に尋ねさせ、アドバイスをするような授業をしています。日本での生活で困ったことではなく、現地での生活で困ったことだと思います。