平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題5解説
問1 スキミング
選択肢1
スキミングとは、ざっと目を通してその文章の内容をおおまかに理解する読み方のことです。下線部Aの内容がスキミングにあたるのでこの選択肢が答え。
選択肢2
スキャニングとは、文章の中から探している情報だけを探し出す読み方のことです。この選択肢は間違い。
選択肢3
精読は一語一語、一文一文意味を分析しながらしっかり読んでいくことなので下線部Aとは違います。
選択肢4
クリティカル・シンキング的なやつかな。目の前にある情報を鵜呑みにしないで、本当に正しいのかと疑うことで考えを深めて、最適解に辿り着こうとする思考法のことです。素早く理解するための読み方と異なります。
答えは1です。
問2 展開の予測
新聞の見出しは「衆院選 深夜にも大勢判明の見通し」みたいに体言止めで終わったり、「投票用紙交付ミス 外国籍の別人に」のように後ろの文(主節ないし主節の述語)を省略した言い方をしたりして書かれます。
選択肢1
「政府は国産技術を守れ」みたいな命令形で書かれている新聞の見出しはなさそう。「署名100万人を超える」はありえるけど。一つ目が見出しとして不適当です。
選択肢2
「団塊世代の本音」「なでしこ大活躍」のような言い方は新聞の見出しになりえますが、「団塊世代」とか「なでしこ」とかは日本の文化に長くいる人にしか分からないことばで、上級の学生でもなかなか知らないかも。特に「なでしこ」。見出しとしてはいいけど、取り上げる内容としてはちょっとダメです。
選択肢3
「システム開発、新時代へ」「家事ロボット、実用化を視野に」のように述語を省略した言い方は新聞の見出しによく使われます。内容的にも上級の学生には向いていると思いますし、これが答え。(→言いさし)
選択肢4
「サマータイム」の話しかないので、この見出しをみてその後の展開を予測する活動ではサマータイムのことにしか触れられません。もっとバリエーションがあるといいかも。また、読書投書欄の内容だから新聞の見出しではないんですね。この選択肢は間違い。
答えは3です。
問3 トップダウン処理
選択肢1
語や文法などの言語知識を用いて、細かい部分から徐々に全体の理解に繋げていく帰納的な言語処理方法のことをボトムアップ処理といいます。これは下線部Cとは逆の処理。
選択肢2
既に持っている背景知識や文脈、タイトル、挿絵、表情などから推測しながら理解を進めていく演繹的な言語処理方法のことをトップダウン処理と言います。見出しから記事の内容を「予測する」とありますが、これがトップダウン処理の「推測」と一致します。この選択肢が答え。
選択肢3
インプットされた情報を忘れないように短期記憶にとどめておいたり、長期記憶へ送ったりする方法をリハーサルと言います。リハーサルのうち長期記憶に転送するための方法を精緻化リハーサルと言います。長期記憶に貯蔵されている情報と関連付けたり、関連する場面や状況をイメージしたりする行為をすることです。
選択肢4
課題遂行中の被験者に考えていることを言語化させ、そのときの被験者の認知過程を分析する方法を発話思考法やプロトコル分析と言います。この選択肢は関係なし。
答えは2です。
問4 学習ストラテジー
内容 第1回 ①に書かれているように、まず見出し一覧を見て、そこから学習者は興味があるものを選びます。たぶん「サッカー」「W杯」や選手名、チーム名などの言葉が見出しに含まれていたため、学習者Xはワールドカップの記事を選んだと思います。
見出しからキーワードを見つけていますので、答えは4です。
こういう特定の情報を探し出す読み方はスキャニングです。
問5 総まとめの活動
「活動のねらい」は(1)スキミング、(2)内容の予測です。
第1回では見出しから記事の内容を予測してます。第2回でも予測するような活動がしたいんですが…
1 調べて分析して発表。予測とかスキミングと関係ない活動です。
2 母語の新聞と比較、発表。予測とかスキミングと関係ない活動です。
3 記事を読んで見出しを推測する。そして実際の見出しと比較。活動のねらいに沿っています!
4 慣用表現やことわざ取り出すのは、予測とかスキミングと関係ない活動です。
答えは3です。
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