6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

ピジンとは?

ピジン(pidgin)

 ピジン(pidgin)とは、「共通語を持たない者同士の間で通じることを優先して単純化された言語」(岩田ら 2022: 57-58)のことです。簡単に言うと、複数の言語が接触して生まれた言語。その場限りの言語でもなく、かといってしっかり体系化された言語でもない生まれたばかりの言語を指します。ピジン形成(pidgin formation)にはある地域でもともと使われていた社会的・経済的・政治的に優勢な上層言語(superstrate)と話者の母語である劣勢な基層言語(substrate)が関わり、上層言語は語彙を、基層言語は文法構造などを提供する語彙提供言語(lexifier language)になること多いです。言語接触し、ピジンが確立されるまでは簡略化された語彙や文法体系などを持つのがその特徴です。また、言語が接触する(異なる言語を持つ人々が接触する)機会が多いところでピジンは生まれやすく、主に先住民と移民の接触、集団移住、貿易通商が盛んな海に面した地域で形成されます。

 ピジンを母語とする話者が生まれた場合、その母語にあたるピジンはクレオール(creole)と呼ばれます。

 ※西江(2020: 230)は、pidgin は英語の”business”という単語を”biznis”、”pijin” というように訛って発音したことが語源であるとする説が最も有力であると述べています。

参考文献

 岩田祐子・重光由加・村田泰美(2022)『改訂版 社会言語学—基本からディスコース分析まで』57-69頁.ひつじ書房
 高田博行・渋谷勝己・家入葉子(2015)『歴史社会言語学入門: 社会から読み解くことばの移り変わり』28-29頁.大修館書店
 中尾俊夫・日比谷潤子・服部範子(1997)『社会言語学概論―日本語と英語の例で学ぶ社会言語学』157-187頁.くろしお出版
 西江雅之(2020)『ピジン・クレオル諸語の世界:ことばとことばが出合うとき』230-231頁.白水社




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