擬物法
擬物法とは、人間を人間以外の生物、非生物などに喩え擬物化する表現のことです。人間と人間以外の間に類似性を見出した比喩であり、隠喩(メタファー)の一種。擬人法とは逆の表現法です。人間から見ると人間、動物、植物、物、抽象的概念などには序列があって、その頂点に人間が立っているものと考えられます。擬物法は人間を人間よりも下位に位置する存在と同レベルに引きずり下ろす表現方法です。
(1) 男は猿だ。
(2) 虫けらどもめ。
(3) 木偶の坊(でくのぼう)
(4) 会社の歯車にはなりたくない。
(1)は人間の男を動物の猿に喩え、(2)は虫に喩えています。(3)はもはや生物ではない木の人形に喩え、(4)は物そのものである歯車に喩えています。上位の存在として認識されている人間よりも下位レベルの存在に喩える性質上、擬物化された対象は蔑まれる対象であることが多いようです。
参考文献
佐藤信夫・佐々木健一・松尾大(2006)『レトリック事典』568-574頁.大修館書店
瀬戸賢一(1997)『認識のレトリック』85-94頁.海鳴社
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