証拠性(evidentiality)
話し手がどのようにして文が表す情報を得たかを表す文法カテゴリーを証拠性(evidentiality)と言います。日本語における「ようだ」「みたいだ」「らしい」「(し)そうだ」「(する)そうだ」などの観察や推定、伝聞を表す形式は、話し手が得た情報(証拠)の出どころに基づいて区別し使い分けられます。これらは情報の出どころによって当該事態に対する認識が変わるということを表します。
(1) もうすぐ雨が降るようだ。 (観察、推定)
(2) もうすぐ雨が降るみたいだ。 (観察、推定)
(3) もうすぐ雨が降るらしい。 (観察、推定)
(4) もうすぐ雨が降りそうだ。 (観察、推定)
(5) もうすぐ雨が降るそうだ。 (伝聞)
(6) もうすぐ雨が降るらしい。 (伝聞)
(7) もうすぐ雨が降るって。 (伝聞)
(8) もうすぐ雨が降るとのことだ。(伝聞)
観察や推定を表す形式には「ようだ」「みたいだ」「らしい」「(し)そうだ」などがあります。例(1)~(4)。いずれも「もうすぐ雨が降る」という同じ命題を有し、同じ情報を表していますが、各モダリティ形式が後接することによってそれが観察や推定によるものであるという当該事態への認識を表しています。
伝聞を表す形式は「そうだ」「らしい」「って」「とのことだ」などがあります。例(5)~(8)。
情報の出どころを形式上どのように区別して標示するかは言語によって異なります。
参考文献
斎藤純男・田口善久・西村義樹編(2015)『明解言語学辞典』118頁.三省堂
日本語記述文法研究会(2003)『現代日本語文法 4: 第8部モダリティ』133-178頁.くろしお出版
宮崎和人・安達太郎・野田春美・高梨信乃(2002)『モダリティ』くろしお出版
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