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五段動詞と一段動詞の見分け方

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五段動詞と一段動詞の見分け方

 五段動詞と一段動詞の見分ける方法は2つの形態的特徴に注目するとたくさんあります。ここではそのうちより手軽で、見極めに使いやすいやり方を3つ紹介します。

ナイ形の「ない」の前の音に注目する

 ナイ形は、五段動詞なら語幹に「-anai」をつけ、一段動詞なら語幹に「-nai」をつけて作ります。このとき「-nai」の直前に来る音に注目すると、五段動詞は必ず /a/ が現れ、一段動詞は語幹末尾音の /i/ もしくは /e/ が現れます。だからナイ形にして「-nai」の前の音が /a/ であれば五段動詞、そうでなければ一段動詞だと見分けることができます。

 (1) 怒る → 怒らない(okoranai) → /a/ だから五段動詞
 (2) 飲む → 飲まない(nomanai) → /a/ だから五段動詞
 (3) 生きる → 生きない(ikinai)  → /i/ だから一段動詞
 (4) 避ける → 避けない(sakenai) → /e/ だから一段動詞

 この形態的操作による見極めは五段動詞と一段動詞を漏れなく判別できる上に日本語母語話者であれば誰でも簡単にできるので、判別に最も用いられている方法です。

音便が生じるかどうかに注目する

 動詞のテ形には音便が生じるものと生じないものがあります。現代でイ音便が生じるのは辞書形が「く」「ぐ」で終わる五段動詞、撥音便が生じるのは「ぬ」「ぶ」「む」で終わる五段動詞、促音便が生じるのは「う」「つ」「る」で終わる五段動詞です。つまり、テ形で音便が生じる動詞は必ず五段動詞と言えます。

 (5) 【五】書く → 書きて → 書いて (イ音便
 (6) 【五】死ぬ → 死にて → 死んで (撥音便
 (7) 【五】切る → 切りて → 切って (促音便

 五段動詞は必ずテ形で音便が生じる、とは言えないことに注意してください。辞書形が「す」で終わる動詞は五段動詞でありながらテ形で音便は生じません。したがって音便が生じるのは五段動詞とは言えますが、五段動詞は音便が生じるとは言えません。なお、一段動詞は全て音便は生じません。

 (8) 【五】話す → 話して  (音便なし)
 (9) 【五】貸す → 貸して  (音便なし)
 (10) 【五】押す → 押して  (音便なし)

辞書形が「る」以外で終わるかどうかに注目する

 動詞辞書形の末尾音に注目すると、五段動詞は「く」「ぐ」「す」「つ」「ぬ」「ぶ」「む」「る」「う」の9つのバリエーションが見られますが、一段動詞は全て「る」で終わるという形態的特徴が見られます。このことから、辞書形が「る」以外で終わる動詞は五段動詞という簡易的な判別が可能です。

 この方法では動詞を五段動詞と一段動詞に完璧に分類できるわけではありませんが、語末の「る」の有り無しだけに注目すればいいという手軽さから日本語学習者(日本語非母語話者)でも五段動詞の見極めとして使うことができ、教育場面では簡易的な判別方法としてよく用いられます。




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