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平成25年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題1解説

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平成25年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題1解説

問1 自動詞の受身

 間接受身には「赤ちゃんに泣かれた」や「雨に降られた」のように自動詞が受身となるものがあります。これらは自動詞の受身と呼ばれ、日本語特有の表現だと言われています。
 したがって答えは1です。

問2 間接受身や迷惑の受身

 受身については複雑。簡単に言うと、対応する能動文があるのは直接受身、ないのは間接受身です。

選択肢1

 「花子が母親に叱られた」には「母親が花子を叱った」という能動文がありますので、直接受身です。

選択肢2

 「妹は先に帰った」に「私に」や「私を」を入れられません。対応する能動文がありませんので間接受身です。
 それから「帰る」は自動詞なので、この文は自動詞の受身。 自動詞の受身ってことは間接受身なので、能動文を作ろうとしなくても分かります。

選択肢3

 「飼い猫が手を引っかいた」に「私を」や「私に」を入れることができません。対応する能動文がないので間接受身です。
 これは自分の身体的部位が目的語になっているので持ち主の受身です。

選択肢4

 「弟が玄関の鍵をかけた」に「花子を」や「花子に」を入れることができません。対応する能動文がないので間接受身です。
 迷惑っぽい感じがしてるので、迷惑の受身。

 したがって答えは1です。

問3 複文で同一主体について述べる文

 従属節の主体と、主節の主体を比較してみます。

 1 「表彰された」の主体は「田中さん」、「企画しよう」の主語は「私たち」
 2 「褒められた」の主体は「彼」、「ぐっと伸びるタイプ」の主体も「彼」
 3 「紹介される」の主体は「店」、「殺到した」の主体は「客」
 4 「注目された」の主体は「子ども」、「嬉しい限り」の主体は「私」

 選択肢2は従属節も主節も同一主体について述べています。
 したがって答えは2です。

問4 可能文の格表示

 可能文の格表示は以下の3通りあります。

[-ガ-ヲ格] 彼が英語を話せる
[-ニ-ガ格] 彼に英語が話せる
[-ガ-ガ格] 彼が英語が話せる

 「彼に英語を話せる」のように[-ニ-ヲ格]もとることができるように見えますが、「『文』は少なくとも一つの主格名詞節を含んでいなければならない。」という主格保持の原則により、非文として処理されます。ここでいう主格名詞節とは、ガ格のことです。

 したがって答えは1です。

問5 「強制的に何かをさせる」という意味合いが薄い使役文

 1 強制的にレポートを出させる意味合いがあります。
 2 「あきれさせた」には強制的な意味合いがあまりありません。
 3 「怪我をさせた」には強制的な意味合いがあまりありません。
 4 「言わせておけばいい」には強制的な意味合いがあまりありません。

 したがって答えは1です。




コメント

コメント一覧 (2件)

  • 平成25試験Ⅲ問題1
    受身の分類で混乱しています。
    1 花子が母親に叱られた」は直接受身
    2花子が妹に先に帰られた」は間接受身(迷惑の受身)
    2を妹が花子より先に帰ったと変えることは出来ないのでしょうか?(能動文)
    能動文の時に他の要素を入れないルールがありますが、
    1は、 が に→が を と変えてあり、
    2は、が に→に よりになっています。

    • >メロンパンさん
      コメントありがとうございます。お答えします。

      「他の要素を入れない」についてですが、格助詞が変わることは問題ではありません。名詞句が増えたり減ったりするのが問題です。

      1 花子が母親に叱られた
      能動文「母親は花子を叱った」があるので、直接受身です。

      2 花子が妹に先に帰られた
      まず「帰る」は自動詞なので、能動文を作る必要なく間接受身の自動詞の受身だと分かります。
      能動文を作ってみた場合ですが、「ヨリ」を使うのは反則です。

      自動詞が取る項は必ず1つです。「雨が降る」「星が光る」「妹が帰る」など。
      しかしこれらを自動詞の受身に変換してみると、「私は雨に降られた」「私は妹に帰られた」など、能動文ではなかった動作の受け手(ここでは”私”)が現れます。他の要素が増えたり減ったりしているのでお互い変換可能な関係とは言えません。

      自動詞「帰る」は一項動詞で、動作主をガ格でとります。それ以外の格を取ることはできないのです。なので「花子が妹に帰られた」に対する「妹が帰った」には「私」を挿入できないということです。

      では「花子が妹に先に帰られた」はなぜ「私より先に帰った」になったのかですが、それは「先に」があるから、比較を表すヨリ格を無理やり持ってきたと思われます。こういう力づくな変換はダメです。

      3 花子が飼い猫に手を引っかかれた
      「飼い猫が花子を引っかいた。」に「手を」「手に」が挿入できないので間接受身。
      「手」は花子の身体的部位ですので、持ち主の受身。
      ※「花子の手を」のように結合して挿入するのは不可。

      4 花子が弟に玄関の鍵をかけられた
      「弟が玄関の鍵をかけた」に「花子」を挿入できないので間接受身(迷惑の受身)。

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