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平成25年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題1解説

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平成25年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題1解説

問1 自動詞の受身

 日本語において、受身形にできる動詞についての問いです。各選択肢を例文で検証していきます。

選択肢1

 (1) a 先生が私を叱った。
     b 私が先生に叱られた。 <他動詞「叱る」+受身>
 (2) a 彼氏が先に寝た。
     b 私が彼氏に先に寝られた。 <自動詞「寝る」+受身>

 日本語では他動詞自動詞も受身にできます。この選択肢が答え。

選択肢2

 (3) a 彼が英語を話せる。
     b *私が彼に英語を話せられる。 <可能動詞「話せる」+受身>
 (4) a 彼が私を見る。
     b 私が彼に見られる。      <知覚動詞「見る」+受身>
 (5) a 山が見える。
     b *山がAに見えられる。    <知覚動詞「見える」+受身>

 可能動詞「話せる」を例に、受身形の接辞 -rare- をつけて「話せられ」としてみたのが(3)ですが、この文は非文です。そもそも可能動詞は動作を表さず、可能の状態を表すので受身にはできません。
 知覚動詞、例えば「見る」「見える」を例にすると、「見る」は(4b)のように受身形にできますが、「見える」は(5b)のように受身形にできません。知覚動詞といっても受身にできるものとできないものがあります。
 だからこの選択肢は間違いです。

選択肢3

 (6) a 窓に鳥がいる。
     b *私が窓に鳥がいられる。  <存在動詞「いる」+受身>
 (7) a 私が橋を渡る。
     b ?橋が私に渡られる。    <移動動詞「渡る」+受身>
 (8) a 男が部屋に侵入する。
     b 部屋が男に侵入される。  <移動動詞「侵入する」+受身>

 存在動詞「いる」は受身形にできません(6b)。
 移動動詞「渡る」は受身にすると若干違和感がありますが、言えないこともない感じ。「侵入する」のような動詞は移動も表しますが、侵入した先で他動的な動作を行うことを含意するので、移動動詞(自動詞の一種)ながら他動的です。このような移動動詞は(8b)のように受身形にできます。
 この選択肢は間違いです。

選択肢4

 (9) a 財布が落ちる。
     b *私が財布に落ちられる。  <無意志動詞「落ちる」+受身>
 (10) a 彼がタバコを捨てる。
     b タバコが彼に捨てられる。 <意志動詞「捨てる」+受身>

 無意志動詞「落ちる」は受身にできませんでした。意志動詞「捨てる」は受身形にできました。
 この選択肢は間違いです。

 答えは1です。

問2 間接受身や迷惑の受身

 間接受身迷惑の受身についてはリンク先をご覧ください。簡単に言うと、受身文とそれに対応する能動文の補語が一致する場合は直接受身、一致しない場合は間接受身です。なので各選択肢を能動文になおしてみて、補語の数を見てみましょう。

選択肢1

 (1) a 花子が母親にしかられる。 <受身文:補語2つ>
     b 母親が花子をしかる。   <能動文:補語2つ>

 「花子が母親にしかられる」は能動文(1b)に対応し、どちらも補語は2つと一致しています。この受身文は直接受身文です。この選択肢が答え。

選択肢2

 (2) a 花子が妹に先に帰られた。 <受身文:補語3つ>
     b 妹が先に帰った。     <能動文:補語2つ>

 「花子が妹に先に帰られた」は能動文(2b)に対応しますが、補語の数は一致しません。この受身文は間接受身です。また、自動詞「帰る」を用いた受身文なので自動詞の受身文と呼ばれるものです。

選択肢3

 (3) a 花子が飼い猫に手を引っかかれた。 <受身文:補語3つ>
     b 飼い猫が花子の手を引っかいた。  <能動文:補語2つ>

 「花子が飼い猫に手を引っかかれた」は能動文(3b)に対応しますが、補語の数は一致しません。この受身文は間接受身です。
 ちなみにこの受身文はヲ格名詞「手」が主格「花子」の身体部分にあたるので、間接受身の中でも持ち主の受身と呼ばれているものです。

選択肢4

 (4) a 花子が弟に玄関の鍵をかけられた。 <受身文:補語3つ>
     b 弟が玄関の鍵をかけた。      <能動文:補語2つ>

 「花子が弟に玄関の鍵をかけられた」は能動文(4b)に対応しますが、補語の数は一致しません。この受身文は間接受身です。

 答えは1です。

問3 複文で同一主体について述べる文

 主節の述語の主体と、従属節の述語の主体とを比較してみます。

 1 従属節の述語「表彰された」の主体は「田中さん」、主節の述語「企画しよう」の主体は「私たち」等
 2 従属節の述語「褒められた」の主体は「彼」、主節の述語「ぐっと伸びるタイプ」の主体も「彼」
 3 従属節の述語「紹介される」の主体は「店」、主節の述語「殺到した」の主体は「客」
 4 従属節の述語「注目された」の主体は「子ども」、主節の述語「嬉しい限り」の主体は「私」

 選択肢2は従属節も主節も同一主体について述べています。
 答えは2です。

問4 可能文の格表示

 可能文の格表示は以下の3通りあります。

 (1) 彼が英語を話せることは、有名だ。 <-が-を>
 (2) 彼には英語が話せない。      <-に-が>
 (3) 彼が英語が話せることは、有名だ。 <-が-が>

 答えは1です。

問5 「強制的に何かをさせる」という意味合いが薄い使役文

 1 強制的にレポートを出させる意味合いがあります。
 2 「あきれさせた」には強制的な意味合いがあまりありません。
 3 「怪我をさせた」には強制的な意味合いがあまりありません。
 4 「言わせておけばいい」には強制的な意味合いがあまりありません。

 答えは1です。




コメント

コメント一覧 (2件)

  • 平成25試験Ⅲ問題1
    受身の分類で混乱しています。
    1 花子が母親に叱られた」は直接受身
    2花子が妹に先に帰られた」は間接受身(迷惑の受身)
    2を妹が花子より先に帰ったと変えることは出来ないのでしょうか?(能動文)
    能動文の時に他の要素を入れないルールがありますが、
    1は、 が に→が を と変えてあり、
    2は、が に→に よりになっています。

    • >メロンパンさん
      コメントありがとうございます。お答えします。

      「他の要素を入れない」についてですが、格助詞が変わることは問題ではありません。名詞句が増えたり減ったりするのが問題です。

      1 花子が母親に叱られた
      能動文「母親は花子を叱った」があるので、直接受身です。

      2 花子が妹に先に帰られた
      まず「帰る」は自動詞なので、能動文を作る必要なく間接受身の自動詞の受身だと分かります。
      能動文を作ってみた場合ですが、「ヨリ」を使うのは反則です。

      自動詞が取る項は必ず1つです。「雨が降る」「星が光る」「妹が帰る」など。
      しかしこれらを自動詞の受身に変換してみると、「私は雨に降られた」「私は妹に帰られた」など、能動文ではなかった動作の受け手(ここでは”私”)が現れます。他の要素が増えたり減ったりしているのでお互い変換可能な関係とは言えません。

      自動詞「帰る」は一項動詞で、動作主をガ格でとります。それ以外の格を取ることはできないのです。なので「花子が妹に帰られた」に対する「妹が帰った」には「私」を挿入できないということです。

      では「花子が妹に先に帰られた」はなぜ「私より先に帰った」になったのかですが、それは「先に」があるから、比較を表すヨリ格を無理やり持ってきたと思われます。こういう力づくな変換はダメです。

      3 花子が飼い猫に手を引っかかれた
      「飼い猫が花子を引っかいた。」に「手を」「手に」が挿入できないので間接受身。
      「手」は花子の身体的部位ですので、持ち主の受身。
      ※「花子の手を」のように結合して挿入するのは不可。

      4 花子が弟に玄関の鍵をかけられた
      「弟が玄関の鍵をかけた」に「花子」を挿入できないので間接受身(迷惑の受身)。

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