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Uカーブ仮説とは?

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Uカーブ仮説(U-Curve Hypothesis)

 Uカーブ仮説(U-Curve Hypothesis)とは、異文化適応過程のモデルの一つで、時間経過に伴って異文化への適応・不適応の程度がU字型に変化することを示すモデルです。U型曲線仮説、U型曲線モデルなどとも呼ばれます。リスガード(S.Lysgaard 1955)はアメリカに滞在したノルウェー人に対する異文化適応過程の研究で、滞在期間と適応との間にU字型(U-shaped)の関係が存在することを発見しました。このU字曲線の各段階をどのように分類するかは研究者によって違いますが、リスガードは異文化へ移動した初期の段階(introductory stage)、初期段階からある一定の時間が経過して訪れる孤独の段階(loneliness stage)、孤独を克服し始める段階について言及しています。一般に初期の段階はハネムーン期(蜜月期)、孤独の段階はカルチャー・ショック期ショック期)と呼ばれています。

 この曲線はどんな人にでも当てはまる異文化適応過程を示しているとは限らないということに注意しなければいけません。各段階が長く続くときもあれば短くなるときもあります。また、ショックを受けても、1か月後に帰国すると知っている場合と、ずっとそこで暮らさなければならない場合ではショックの程度も異なるだろうし、適応の過程も異なってきます。それによって個々人の適応過程が綺麗なUカーブを描くとは限りません。加えて、Uカーブ仮説はカルチャー・ショックは乗り越えられるものとみなしていますが、当然乗り越えられない場合もあります。

ハネムーン期(蜜月期)

 異文化に接触したばかりのエネルギーと喜びに満ち溢れている段階で、仕事も趣味も滞在先の生活習慣に合わせようとします。自らが接触する集団の中で知人や友人を作ったり、社会的接触を楽しんだり、そして自分が滞在国にいて新鮮な体験をしていることに満足し、感銘を受けます。受け入れてくれる人々たちも親切でこれからの滞在先での生活に期待を抱きますが、この段階での社会的接触は偶然かつ表面的で、特別なものではありません。こうした段階は人によって異なりますが、一般に数週間から1年ほど続くとされています。

カルチャー・ショック期(ショック期)

 ハネムーン期が一定期間続くと、ハネムーン期で感じていた新鮮さや満足感、楽しみを失い始め、より親密な社会的接触が必要となる段階が訪れます。しかし、自分が慣れているやり方ではうまくいかなかったり、表面的にしか知らない滞在先の環境に対して躊躇したりと滞在先の人と親密な関係を築くのが難しい場合があり、そうすると孤独感が生じる可能性があります。すると自分がここにいるのが場違いであると感じ、この不満やいらだち、不幸な状況を生じさせた原因を滞在先に求める傾向が見られます。滞在先にはもう居たくない、滞在先の人とは接触するのが難しい、あるいは接触したくない、滞在先の人々は自分自身よりも劣っているなどと感じたりします。より親密な関係を築くためには言語スキルが重要で、ハネムーン期では必要ないと思っていたとしても、この段階では言語習得の必要性に迫られます。

参考文献

 Lysgarrd, S.(1995) “ADJUSTMENT IN A FOREIGN SOCIETY:NORWEGIAN FULBRIGHT GRANTEES VISITING THE UNITED STATES” International Social Science Bulletin, 7, 45-51.
 石井敏・久米昭元・遠山淳・平井一弘・松本茂・御堂岡潔(1997)『異文化コミュニケーション・ハンドブック』36-38頁.有斐閣
 池田理知子・エリック・M.クレーマー(2000)『異文化コミュニケーション・入門』147-160頁.有斐閣
 池田理知子(2010)『よくわかる異文化コミュニケーション』100-101頁.ミネルヴァ書房
異文化間教育学会(2022)『異文化間教育事典』184.198頁.明石書店
 原沢伊都夫(2013)『異文化理解入門』58-59頁.研究社




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