平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3B解説
(5)動詞
動詞の特徴についての問題です。各選択肢が、動詞は主節の述語になれるかどうか、従属節の述語になれるかどうか、名詞を修飾できるかどうかを聞いてるので、この3点に絞って例文を作ります。
(1) 雨が降ったら、計画を延期します。
(2) 黙っている人は、実は怖い。
(1)では従属節「雨が降ったら」の述語には動詞「降る」が使われてますし、主節「計画を延期します」の述語にも動詞「延期する」が使われています。動詞は従属節でも主節でも、その述語になることができます。また、(2)では動詞「黙っている」が名詞「人」を修飾しているので、動詞は名詞を修飾できることがここから分かります。これを踏まえて選択肢を見ると…
1 これが答え
2 主節の述語になることはできます
3 名詞を修飾することはできます
4 従属節の述語になることはできます
答えは1です。
(6)動詞「ある」
「ある」は五段動詞に分類されますが、典型的な五段動詞とはちょっと違う部分があります。
典型的な五段動詞として「話す」を例にして、「ある」との比較をしてみましょう。
選択肢1
(1)a ある → ✕あれる <可能形>
b 話す → 〇話せる <可能形>
(2)a ある → 〇あります <マス形>
b 話す → 〇話します <マス形>
「ある」には可能形がありません。この点は特殊ですが、マス形には特殊性は見出せません。
選択肢2
(3)a ある → ✕あらない <ナイ形>
b 話す → 〇話さない <ナイ形>
(4)a ある → ✕あっている <テイル形>
b 話す → 〇話している <テイル形>
五段動詞のナイ形は動詞語幹に -anai をつけて作りますが、同様の方法を「ある」に適用するとナイ形は「あらない」となり、存在しない活用形が生まれます。「ある」のナイ形は「ある」とは形態的に関係のないイ形容詞「ない」であり、この点が特徴的です。また「ある」はテイル形にできません。この点も特徴的。この選択肢が答えです。
選択肢3
(5)a ある → ✕あっておく <テオク形>
b 話す → 〇話しておく <テオク形>
(6)a ある → 〇あれば <バ形>
b 話す → 〇話せば <バ形>
「ある」は「~ておく」の形にはできませんから特殊と言えますが、バ形はあります。この選択肢は間違い。
選択肢4
(7)a ある → ✕あってある <テアル形>
b 話す → 〇話してある <テアル形>
(8)a ある → 〇あった <タ形>
b 話す → 〇話した <タ形>
「ある」は「~てある」にできませんから特殊ですが、タ形にはできます。この選択肢は間違い。
答えは2です。
(7)病気
「病気」は本来名詞ですが、意味的にも統語的にも形容詞的な使われ方をします。
意味の面から言えば、「彼は病気だ」のように言うときの「病気」は発熱・苦痛などの心身に悪い変化がある状態を指しています。名詞だったら事物を指すはずですが、ここでは状態を指しているので形容詞的。
「病気」は本来名詞なので名詞を修飾するときは「の」を介在させるのですが、日本語母語話者の中には「病気な人」のように「な」を介在させるケースが見られ、「病気」をナ形容詞のように扱っていることが分かります。「病気」は意味的にも形容詞に近いので、統語面に反映させて「な」を用いたと考えると納得がいきます。
また、「病気」の対義表現である「健康」はナ形容詞です。対義関係にあるものがナ形容詞であることから見ても、「病気」も形容詞的と考える一つの理由になります。さらに諸言語との比較でいうと、英語の sick は形容詞です。
このようないろんな理由があって、「病気」は形容詞っぽいんです。
だから答えは1です。
(8)数量表現の品詞
数量表現「3人」や「250cc」が何を修飾してどのように用いられているのかを見る問題です。
選択肢1
(1) 3人の学生が来た <名詞>
(2) 学生が3人来た <副詞>
(1)の「3人」は「の」を介在させて名詞「学生」を修飾しているので名詞として扱われていますが、(2)の「3人」は直接動詞を修飾しているので副詞として扱われています。この選択肢は間違い。
選択肢2
選択肢1と同じく、前者の「3人」は名詞として、後者の「3人」は副詞です。
この選択肢は間違い。
選択肢3
(1) 水を250cc入れる <副詞>
(2) 250ccの水を入れる <名詞>
(1)の「250cc」は動詞を修飾しているので副詞として扱われています。
(2)の「250cc」は「の」を介在して名詞「水」を修飾しているので名詞。
この選択肢が答えです。
選択肢4
選択肢3で述べたように、前者の「250cc」は副詞、後者の「250cc」は名詞。
答えは3です。
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