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令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題13解説

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令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題13解説

問1 ネオ方言

 標準語と方言が混ざって生まれた中間的な言い方をネオ方言と言います。
 例としては、標準語「来ない」+関西方言「けーへん」=ネオ方言「こーへん」など。他にも標準語「だめじゃないか」+関西方言「あきまへんがな」=ネオ方言「あかんやないか」もあります。

 1 「~てしまう」の口語形「~ちゃう」です。方言じゃなくて口語形。
 2 「うざったい」は一つの語。これが省略されて「うざい」になりました。
 3 ネオ方言
 4 一段動詞「起きる」を五段動詞として扱い、五段動詞命令形の活用を適用した言い方。(方言でもある)

 答えは3です。

問2 気づかない方言

 その人は標準語だと思って使っているのに実は方言だったっていうのを気づかない方言と言います。私も津軽方言母語話者としてこういうのはたくさんあります。

 1 語の分布域がある程度広いと広く使われているということだから方言だと気づかない可能性あり
 2 男性の老人を想起させる役割語で、方言じゃないです。
 3 標準語と同形の場合は標準語だと思っちゃいがちだから方言だと気づかない可能性あり
 4 形態素レベルの同形だろうと選択肢3と同じで、方言だと気づかない可能性あり

 選択肢4は九州博多のほうでは使われる方言だそうです。TVでソフトバンク戦あってる(=放映されている)などと使うようです。

 気づかない方言じゃないのは2。
 答えは2です。

問3 音韻規則

 こんなん方言研究でもしてない限り分からないよ… 全国にまたがる方言の知識が必要だし。

 私は青森出身なので津軽方言と照らし合わせてみたけど、津軽方言は語中のカ行、タ行がことごとくガ行、ダ行になります。鼻音かどうかは分からないけど、まあそんな傾向があるかなーと思って試験では1を選びました。だって他の方言知らないんだもん。

 って思ったら答えは1でした。
 他の選択肢は違うみたいですね。

問4 アクセント体系の違い

 方言のアクセントに関する問題は難しい…
 参考となる本とか見つかってないんです。

選択肢1

 アクセントは地域ごとに類似性があり… というのは何となくだいたい理解できる。青森を例にして言えば、五所川原市方言と弘前方言はまーおおむね同じだから。でも関東全体でアクセントタイプが共通っていうのは全然違います。標準語となっている東京方言と、茨城、栃木、群馬などの方言は全く違いますから。この選択肢は間違いです。

選択肢2

 無アクセント地域とは、茨城・福島などのことです。この地域の方言は拍の高低が語の弁別をしないということなので、標準語を話す場合も方言のアクセントが転移して、どちらかというと抑揚がないような話し方をするのではないかと思われます。参考文献はありませんが予想です。実際この選択肢は間違いなので、少なくとも抑揚が激しい話し方をするわけではないようですね。

選択肢3

 東京式のアクセントパターンは「拍数+1通り」あります。例えば1拍語「〇(が)」なら「高低」か「低高」かの2通り、2拍語「〇〇(が)」なら「高低低」「低高低」「低高高」の3通り、3拍語なら4通り、4拍語なら5通り… 日本語は拍リズムなので「音節数」というのが間違いだと思われます。

選択肢4

 京阪式のアクセントについて私は知らないんですけど、試験中に「アホ」について考えてました。「ホ」を言うとき、高いアクセントから低いアクセントに移ってる感じ。正確に言うとアクセントではなくイントネーションだと思います。1拍の中で高低が存在しているような、まるで声調言語のような。この解説が合っているかは分かりませんが…

 答えは4です。

問5 方言教育

 方言教育は私したことがないので全く分からないんですが、試験ではたまにこうやって出題されます。標準語以外の言語教育をやっているところ興味があります。

選択肢1

 方言の使用場面、機能を知ってもらうことは良いことです。

選択肢2

 方言を使うということは話し相手と距離を縮めようとする行為だったり、わざと標準語を使うということは距離を取りたいということだったり… その使い分けは話し手の気持ちが含まれます。それを説明することは良いことです。

選択肢3

 方言の使用を望んでいるんだったら方言を教えてあげると良いですけど、だからといって共通語の指導を捨てるのはダメ。なぜなら共通語は日本どこに行っても通じる言葉ですし、それを捨てて方言だけ指導すると色んな事に対応できなくなります。公共施設の窓口、アナウンスなどはほとんど共通語だし。

選択肢4

 その通りです。方言が嫌だったら無理に教える必要はありません。

 よって答えは3です。




コメント

コメント一覧 (6件)

  • 確か東北ですと、「イカ」がいがって発音するらしく、そのためイカと区別するためにインガ痛いって発音するって聞いたことがあります。
    説明がうまくできずに申し訳ありません

  • 関西出身です。確かに、「あほ」はあほ↓となりますね。ちゃうもしかりです。ちゃ(↑)う(↓)になります。

  • 問2に関し、

    僕の友人は広島出身なんですが、若い時から一人称は「ワシ」です。今でこそワシを使う男性は減ってきたらしいですが、広島では別にワシが老人を想起させる役割語として機能しているわけでもなく、本人たちは当たり前に使っている「方言」かと思われます。ただ、これが正答だということは、少なくとも彼らは他の地域ではワシが一般的ではないということを知っていそうなので、「《気付かない》方言」には当たらない、という解釈で宜しいでしょうか?

    • >ぽてさん
      本人が気づいていなければ、気づかない方言ですね!
      「ワシ」は老人を想起させる東京方言であることを知らないのは通常考えられませんので、気づかない方言には当てはまらないでしょう。

  • 問2 選択肢4 「アッテル(=している)」
    私は九州博多出身です。

     TVでソフトバンク戦あってる(=放映されている)→ TVでソフトバンク戦やってる(by 東京の友人)
     会議があってる(=行われている) → 会議やってる (by 東京の友人)
     夏祭りがあってる (=開催されている) → 夏祭りやってる(by 東京の友人)
    という風に東京から来た友人がすべて やってる と言ったときには新鮮な驚きがありました。
     
      ・・っというわけでこれは気づかない方言ですね。

    ”やってる”のほうが能動的な気がします。 ”あっているは”自然現象のようなちょっと遠目で眺めているような 自力でないイメージ。
    (でも 台風はあってるとは言いませんが。)
    R3難しいです。3回目ですが正解率が上がりません。

    • >まっきぃさん
      コメントありがとうございます!
      こちら方言だと分かってよかったです。まっきぃさんのコメントの一部で解説を修正しております。
      他にも何か問題がありましたらいつでもコメントください。よろしくお願いします。

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