6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

令和2年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題11解説

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令和2年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題11解説

問1 動機づけ

 有機体に行動を起こさせるもの、つまり行動の原動力となるものやそのきっかけのことを動機づけ(motivation)と言い、その源泉が有機体の外部にあるのか内部のあるのかで外発的動機づけ内発的動機づけに分けられます。

外発的動機づけ 外部からの報酬を得るため、罰を回避するための行動の原動力となるもの。
内発的動機づけ 自分の内側から湧いてくる行動の原動力となるもの。好奇心や興味など。

 例えば、ある子どもがお母さんに褒められたいがために勉強をしていたとしたら、それは「褒める」という外部報酬を得るためであり、「勉強する」という行為は外部的に動機づけられています。逆にただ知識を得るのが楽しくて勉強しているのであれば、その行動は好奇心や興味に支えられていると考えられるので内発的動機づけです。

選択肢1

 単位という報酬を得るために日本語を勉強しているので外発的動機づけです。。

選択肢2

 外部からの報酬を得るために勉強していないみたい。この学習者は日本語が好き、興味がある、知識を増やしたいという内発的動機づけ。

選択肢3

 学位という外部報酬を得るためなので外発的動機づけ。

選択肢4

 奨学金という外部報酬を得るためなので外発的動機づけ。

 答えは2です。

問2 動機づけを維持するための指導

選択肢1

 細かい指摘はやる気をなくさせるかもしれないので動機づけの維持にはあまり役立ちません。第二言語不安の程度が高まるかもしれないし。学習者によっては重大な誤りだけ指摘して、それ以外の軽微な誤りは放置するなんてことも実際はあり得ます。この選択肢は不適当。

選択肢2

 挑戦的な(難しめの)タスクや活動をして、もしそれが成功したら「自分はできる!」みたいな達成感を得られるかも。それは動機づけの維持に直結します。これは適当。

選択肢3

 目標があると今何をすればいいのか明確になるので、動機づけの維持に役立ちます。

選択肢4

 情意面への配慮ですね。これも動機づけの維持に役立ちます。

 不適当なのは1。答えは1です。

問3 学習者のビリーフ

 ビリーフとは、どのようにすれば言語を習得できるかという考え方、その人の信念のことです。とにかく語彙をたくさん覚えればいいんだって人もいるし、文法が重要だって人もいるし、それよりも母語話者とコミュニケーションするのが重要だって人もいます。誰にでもビリーフはあって、学習者にもビリーフはあります。教師の指導が学習者のビリーフと一致しないと学習者は不満を持ったりするので、これが教育の難しいところ。

選択肢1

 正しいです。
 勉強を始めたばかりのときはとりあえず教科書を勉強していくことが重要だ!ってビリーフを持っていたとしても、上達するにつれてやっぱり会話のほうが重要だ、動画を見て勉強するほうが良いとかビリーフが変わっていくことがあります。ビリーフの変容と習熟度には関係があります。

選択肢2

 その通りです。日本では文法訳読法が主流で、そうした教育を受けている最中は「この方法が最もいい方法なんだ」って思っている人もいると思う。逆に社会人になって子どもの頃の英語教育を振り返ったときに「あの方法じゃダメだ」って思うかもしれません。それまで受けてきた教育はビリーフの形成に影響を及ぼします。

選択肢3

 選択肢2でも言いましたが、受けてきた教育に対して好意的であればそのやり方がいいと思い、否定的であればあのやり方じゃダメだと考えます。ビリーフの形成にはそれまでの教育活動が影響を及ぼすのでこの選択肢は間違い。独立して形成されるなんてことはない。

選択肢4

 学習者が「ネイティブと話すのが一番の近道だ」というビリーフを持っていても、近くにネイティブスピーカーがいないと実現はできません。ビリーフと行動はやむをえず一致しないこともあります。

 したがって答えは3です。

問4 言語適性

 言語適性とは、外国語を学ぶために必要とされる能力のこと。曖昧で抽象的ではありますが、一応言語適性を測るMLAT(Modern Language Aptitude Test)というテストがありまして、このテストでは言語適性は「音韻符号化能力」「文法的感受性」「帰納的言語学習能力」「記憶力」の4つからなるとされています。

選択肢1

 最終的な到達点は外向的とか内向的とか、それは関係ないのでは。結局は習得量、意味交渉の量、勉強時間などによると思います。
 これは不適当。

選択肢2

 上述のMLATでいう音韻符号化能力のことを言っている気がします。学生に「ありがとうございました」を繰り返し練習させると、一発で上手に言える人もいるし、そうでない人もいます。聞こえてきた音をそのまま言えるのはどう形容すればいいか、耳が良いっていう感じだと思いますけど、これは音韻に関する言語適性があると見れそうです。

選択肢3

 状況に合わせた言葉選びは語用論的な言語能力がないとできません。この場面ではこう言うという知識は実際の場面に遭遇して覚えたり、学習したりして覚えます。センスがあれば状況に合わせた言葉選びができるなんてことはありませんからこの選択肢は間違い。

選択肢4

 学習者の特性に合った指導ができれば効果は上がるし、合ってなければ下がります。これは間違い。

 よって答えは2です。

問5 学習者オートノミー

 自律学習(学習者オートノミー)とは、学習者が自分の学習を自ら管理して進めていく学習方法のことです。必要な場面で教師や教材、教育機関などの周囲のリソースを利用して学習を進めていき、学習の主体を学習者自身に置きます。教師は学習者の学習に積極的に介入することなく、ファシリテーター、カウンセラーとして振る舞います。

選択肢1

 これが自律学習。
 教師は支えるだけ。学習者自身に考えさせます。

選択肢2

 教師の考え方が存分に影響しているやり方なので、これは完全に「指導」です。
 自律学習じゃない。

選択肢3

 教師がテキストを決めるってのが自律学習の考え方に反します。
 何を勉強するかは、学習者のニーズにもとづき教師と相談したりして学習者自身が決めます。

選択肢4

 教師が授業をするのは自律学習ではありません。自律学習は教師はあくまで支えるだけ。

 したがって答えは1です。

 




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