令和2年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題1(14)解説
(14)ト格の意味
「と」は「~と一緒に」という意味だよ、って教えることが多いんですが、実は「~と一緒に」に言い換えられない「と」もあるんです。それが次のようなやつ。
・彼女と結婚したい。
・法廷でA氏と争うことにした。
「結婚する」「争う」などは、その動きをするにあたって相手が絶対必要です。相手がいなければ結婚もできないし、争うこともできません。その絶対必要な相手を「と」で表します。この「と」は「~と一緒に」に置き換えられません。
試しに「一緒に」で各選択肢を言い換えてみましょう。
1 ジョンとポールが一緒にテレビを見た。 (必須ではない相手)
2 ジョンとポールが一緒に楽器を弾いた。 (必須ではない相手)
3 ジョンとポールが一緒に歌を歌った。 (必須ではない相手)
4 ジョンとポールが一緒に酒を飲んだ。 (必須ではない相手)
5 ジョンとポールが一緒にけんかをした。 (?)
選択肢5の「喧嘩する」は「~と一緒に」に言い換えられませんでした。
主格のみでその動作が実現できる場合、その動作を共にする人物は「と」で表されますが、この「と」は「~と一緒に」に置き換えられます。例えば「見る」「弾く」「歌う」「飲む」などは1人でできます。もし一緒にその動作をする人を表したい場合は「~と」を使ってもう一人追加します。この「と」は共同動作の相手なんて言われます。
主格のみでその動作ができない場合も、その動作を共にする人物も「と」で表されますが、この「と」は「~と一緒に」に置き換えられません。例えば上述したように「結婚する」「争う」「喧嘩する」などです。この「と」は相互動作の相手と呼ばれます。
したがって答えは5です。
参考:格助詞「と」の用法一覧
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