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平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題9解説

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平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題9解説

問1 日本語や教科の指導

選択肢1

 生活言語能力(BICS)は日常生活で最も必要とされる言語能力のことです。もともとこの言語能力が少しでも備わっていれば、日常生活の中で使うにつれ自然に習得する児童生徒もいるでしょうが、もともと日常生活の言語能力もあまり身についていない、あるいは会話などのコミュニケーションが苦手な児童生徒は自然に身に付きにくいです。人によって異なりますので、学校での指導を行う必要はないと言い切ることはできません。

選択肢2

 学習言語能力(CALP)は教科学習などで用いられる抽象的な思考や高度な思考能力のことです。年齢相応のレベルに到達するまで5~7年かかると言われており、しっかり計画的に指導していく必要があります。

選択肢3

 入り込み指導は授業中に日本語指導教員が入って、対象の児童生徒の日本語を支援することです。家庭にまではさすがに入り込みません。それはもう家庭教師。

選択肢4

 取り出し授業とは日本語のレベルが不十分な児童生徒だけを取り出して、別のクラスで個別に行う指導のことです。休み時間や放課後などの授業外ではなく、授業中に取り出して別の授業を行います。

 したがって答えは2です。

問2 連携

 1 特定の児童生徒への日本語指導が必要かどうかはいちいち文部科学省に確認の連絡ってやばい。
 2 適当です。事故とか事件とかないようにね。
 3 お互いの理解のためにもいいと思う。
 4 情報交換いいと思います。

 答えは1です。

問3 アイデンティティの形成や維持・喪失

選択肢1

 エリクソン(Erikson, E.H.)は人生の発達段階を8つに分けました。アイデンティティの確立(「同一性 対 同一性拡散」)がテーマとなるのはそのうち5つ目の青年期(12~20歳ころ)とし、アイデンティティの確立によって青年期が終了すると考えました。この選択肢にある「思春期」は「青年期」と同義ですが、思春期ごろにアイデンティティが確立するのではなく、アイデンティティの確立を持って思春期が終了する、というのが正しい記述です。この選択肢は間違い。

 《参考文献》
 井戸ゆかり(2019)「児童期・青年期の発達」『保育の心理学 実践につなげる、子どもの発達理解』165-166頁.萌文書林
 田中正人(2020)『図解 心理学用語大全』170頁.誠文堂新光社

選択肢2

 日本人と同様のアイデンティティを形成させる必要はありません。中国の文化のアイデンティティを保持しながら、日本にも適応できるような配慮をしたほうがいい。

選択肢3

 積極的に使うのではなく、母語で補助しながら指導を進めていくのが好ましいです。

選択肢4

 その通り。本当は母語も母文化も違うのに外見が周囲と同じだと、周囲が自分と同じと思って話しかけてきたり扱ったりします。これが周囲からの同化への過剰期待。

 答えは4です。

問4 同化

 ベリーの文化変容ストラテジーについてここでは簡単に説明します。詳しくはリンク先をご覧ください。
 ベリーは、異文化に滞在することになった人は<自分の文化を維持するか捨てるか><異文化を受け入れるか受け入れないか>の対処で次の4つのストラテジーをとると提唱しました。

 この問題は4つのストラテジーのうち、「同化」に関するものを選びます。

選択肢1

 正しいです。まず行動面が同化して、次に感情面が同化します。
 例えば私は中国でバスに乗るとき、いちいち列に並んでると最後に乗ることになっちゃうので、気乗りしませんが無理やり横入りして乗り込む作戦をとってました。その後は慣れてきて感情面も同化してきて、抵抗がなくなりました。

選択肢2

 正しいです。滞在国の文化に馴染んだ結果、見た目を滞在国の人々に近づけることも同化の一種です。

選択肢3

 アニメが好きなどの理由で日本に憧れがある人は確かに同化は早そう。

選択肢4

 同化とは滞在国に馴染んでいて、自文化を喪失してる状態です。自文化を喪失してる状態で自文化に帰国したら、また自文化に適応し直さないといけません。再適応しやすいということはありません。

 答えは4です。

問5 統合

 上記の表の「統合」に関する問題です。

選択肢1

 「統合」は両文化を身につけた状態です。良い点も悪い点もちゃんと消化して内在化した最も理想的な状態。この選択肢は間違い。

選択肢2

 異なる2つの文化を保持(バイカルチュラル)していると、両文化を組み合わせた新しい考え方を生み出せます。これが新しい文化の創造です。

選択肢3

 「統合」は自国と他国の文化を同時に保持しているので、母国の人に対しては母国の文化で接することができます。この選択肢は間違い。

選択肢4

 4つの分類の線引きは明確ではなく、当該文化を保持または喪失しているかどうかがはっきりしない場合は、複数の状態が共存しているとみなす場合もあります。

 答えは2です。

 




コメント

コメント一覧 (6件)

    • >Albertさん
      完全に真逆の解説になっていました。正しい解説に変えました。
      本当にいつもありがとうございます。

      • 老师,您好。

        こちらこそいつもありがとうございます。
        無料でここまで詳しく解説してくださっているので、助かっています。

        JEESサイトによるとH27試験Ⅲの最高点は71/80でしたので、
        簡単ではない回だったようです。

  • 問4の1の解説について、行動面の同化に比べ喜怒哀楽など感情面の同化には時間がかかる ので、先に同化するのは行動面なのでは?

    • >とうもろこしさん
      確認しました。確かに間違っていました…
      内容はどうにか修正しておきます。私の理解が間違っていました。

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