平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題5解説
問1 日本語教室の活動
選択肢1
日本語を書いたり話したりするのは教室内のリソースを使えば実現できますが、学校からのプリントを読んだり、日本語の新聞や雑誌を読んだり、スマホや雑誌から就職情報を得たりしたいというニーズがあるので、このニーズを満たすには教室外のリソースを活用する必要があります。選択肢1は適当。
選択肢2
学習者4名は滞在歴がばらばら。また学習者Yはアルバイトで勉強する時間がとれないし、学習者Zは夜遅くまで仕事があるので、決められた時間に出席できるかどうかは分かりません。在住期間の長短に関わらない活動を採用したり、出欠が大きな影響を及ぼさないような活動を採用することは適当です。
選択肢3
学習者の中には滞在歴20年や5年の人もいるので、いまさら基礎的な日本語を学ぶ活動は合いません。この選択肢が答え。
選択肢4
学習者Wは学校とのやり取りを行う必要があり、学習者ZはEメールを使えるようになりたいと言ってたり… 各ニーズに応じた実践的な活動を行うことはいいこと。
答えは3です。
問2 グループ全員にとって有意義な活動
各学習者の共通するニーズをまとめると…
【学習者W】連絡でEメールを用いることが多い。
【学習者X】日本語をもっと読めるようになりたい。
【学習者Y】日本語をもっと読めるようになりたい。
【学習者Z】Eメールを書いて送れるようになりたい。
このような場合はEメールを書く練習が適切。
答えは2です。
問3 グループ全員にとって有意義な活動
問2以外にも、次のように「読む」に関するニーズは共通しています。
【学習者W】学校からのプリントを読む。
【学習者X】日本語の新聞や雑誌を読めるようになりたい。
【学習者Y】日本語をもっと読めるようになって、就職情報を得たい。
【学習者Z】地域のグルメスポット情報が職場に生かされる。
選択肢1は最後に書く練習をする点が不満。選択肢2は暗誦するのがニーズを無視してる。選択肢3は「読む」ではなく「聞く」で得た情報を「話す」で説明する活動だからだめ。選択肢4は「読む」だけに焦点を当てた練習が行えてます。これなら各学習者の「読む」のニーズを満たせそう。
答えは4です。
問4 個別の対応
1 これからの就職活動を見越して、敬語は必要
2 これからの就職活動を見越して、Eメールを書く練習は必要
3 求人情報を得たいと言っているので求人情報誌の用語は必要
4 接客時の日本語を学びたいというニーズはありません
答えは4です。
問5 個別の対応
1 漢字を学びたいというニーズはありません
2 夜遅くまで仕事があるので、日記を書く時間はありません
3 書くのが苦手なので、書き留める練習は適当です
4 滞在歴20年で日常会話はできるので、初級の文法は要らない
答えは3です。
コメント
コメント一覧 (2件)
問3 のグルメスポット情報が職場に生かされるとは全く思わないのですが。
問題作成者の方と意見が合わなすぎて、試験に受かる気がしません。
>ぽんちゃんさん
どのような授業をするかは実際教師本人が決めることですから、試験問題を見て自分ならどうするかと考えるのは自由ですね。私ならこうするのになーと思うことは多々あります。しかし問題を作っておられる方はきっと現場で長く勤めている、勤めていた方です。グルメスポット情報が答えになるだけの意図は確かにあります。
ここでは学習者4名いて、その4名全員のニーズを満たそうとする教案を考えています。たった4人、簡単そうに見えるかもしれませんが、これほど器用なことを思いつき、やり遂げるのは案外難しいことです。